infinite love

谷山佳与

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第2章 学園祭編。

☆ ちょっとまって!

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興奮の渦

日曜日の朝、まだ空が白んできたばかりの時間、東京の郊外にある古びた野球場に少年たちの姿があった。ユニフォームに身を包み、目を輝かせる彼らは、今日という日を待ちわびていた。

「今日は絶対に勝とうぜ!」

キャプテンの翔太が声を張り上げ、チームの仲間たちに気合いを入れる。小学校最後の試合。地元のライバルチームとの決戦だ。翔太はバットをしっかりと握りしめ、心の中で何度も自分に言い聞かせた。勝つんだ、絶対に。

ベンチに腰掛け、スパイクの紐を結び直す翔太に、親友の陽介が近づいてきた。彼の顔にも緊張と興奮が入り混じった表情が浮かんでいる。

「翔太、なんかドキドキしてきたな…負けたら終わりなんだよな、今日で。」

翔太は大きく息を吸い込み、陽介の肩をポンと叩いた。「そうだな。でも、俺たち今まで練習してきたじゃん。絶対にやれるさ!」

その言葉に、陽介も力強く頷く。彼らは今までの努力を信じたかった。真冬の寒い日も、真夏の暑い日も、一緒に汗を流し、時には泣き、時には笑いながら、ここまでやってきたのだ。

試合開始のアナウンスが響き、二人はお互いに目を見合わせる。心臓が高鳴る。興奮が全身を駆け巡り、鼓動が速くなる。これまでに感じたことのない、熱いエネルギーが体の中で燃え上がっていた。

彼らの試合が始まった。先発ピッチャーの陽介がマウンドに立つ。彼の投球に合わせ、翔太が声を張り上げる。「いけ、陽介!三振を取れ!」

陽介は深呼吸をし、相手バッターの動きをじっと見つめた。力強く振りかぶり、思い切り腕を振る。白球は鋭い弧を描き、キャッチャーミットに収まる。「ストライク!」審判の声が響き、観客から大きな歓声が上がった。

一球一球が、まるで心臓を鷲掴みにするように感じられた。陽介の腕は緊張でこわばり、汗が滲む。だが、仲間たちの声援が彼の背中を押す。相手バッターも一筋縄ではいかない。フルカウント、全身の力を振り絞って投げた最後の球は、わずかに外れた。

「フォアボール!」

観客席からため息が漏れ、陽介は悔しそうに拳を握りしめた。しかし、翔太はすぐに駆け寄り、彼の肩を叩く。「気にするな、陽介!まだまだこれからだ!」

試合は進み、互いに一歩も譲らない接戦が続いた。翔太の打席、バットを構えながら、心臓が高鳴るのを感じていた。目の前には相手チームのエースピッチャー、剛腕の持ち主だ。

「負けられない…」

その思いが彼の胸を熱くする。全神経を集中させ、目の前の投手を見据えた。剛速球が唸りを上げて翔太のもとに迫る。瞬間、彼は渾身の力でバットを振り抜いた。

カキーン!

快音が響き、ボールは一直線にセンター方向へ飛び去る。スタンドから歓声が上がり、翔太は全力でベースを駆け抜けた。相手チームが必死に追いかけるが、ボールはフェンスを越えた。

「ホームラン!」

翔太は歓声に包まれながら、全力でダイヤモンドを回った。仲間たちが迎えに来て、飛び跳ねながら彼を抱きしめる。「やった、やったぞ、翔太!」

興奮は最高潮に達し、彼らの心を一つにした。その瞬間、疲れも緊張もどこかへ消え去り、ただただ嬉しさと喜びで満たされた。

しかし、試合はまだ終わっていなかった。9回表、相手チームの反撃が始まった。連打で一点を返され、点差はわずかに一つ。満塁のピンチ、陽介の腕は疲労で限界を迎えていた。

「ここで抑えれば、勝てる…」

翔太の声が聞こえる。彼のためにも、チームのためにも、ここで諦めるわけにはいかない。陽介は震える手で最後のボールを握りしめた。

「いけ、陽介!」

仲間たちの声援が背中を押す。彼は全身の力を振り絞り、最後の球を投げた。鋭い直球がバッターのバットをすり抜け、キャッチャーミットに突き刺さる。

「ストライク!ゲームセット!」

その瞬間、球場は大歓声に包まれた。陽介はマウンドに崩れ落ち、涙を流した。翔太は駆け寄り、彼を力強く抱きしめる。

「やった、やったぞ、陽介!俺たち、勝ったんだ!」

涙と汗にまみれながら、彼らは歓喜の渦に巻き込まれた。全力で戦い抜いた喜びと、仲間と共に掴んだ勝利の味。それはこれまでに感じたことのない、心の底から湧き上がる興奮だった。

試合後、彼らは抱き合い、笑い合い、何度も勝利の余韻を噛みしめた。少年たちにとって、この試合は忘れられないものとなった。興奮の渦の中で、彼らは一つのチームとして成長し、絆を深めた。

翔太と陽介は、ベンチに並んで座りながら、夜空を見上げた。星が瞬き、彼らの笑顔を優しく照らしている。今日のこの興奮は、いつまでも彼らの心に刻まれ、これからの人生の大きな力となるだろう。

「俺たち、やったな、翔太。」

「ああ、最高の試合だったよ、陽介。」

二人は静かに頷き合いながら、ゆっくりと目を閉じた。心に残る興奮の余韻を抱きしめながら、これからの未来を夢見ていた。






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