君が届かなくなる前に。

谷山佳与

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第3章 勇気を持って一歩踏み出せば

凛々しくありたいとどこかで願ってる5。

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本日は、王太子殿下の婚約者の発表という括りで王城前の広場を解放している。
その、広場には朝早くから多くの人々で埋め尽くされ、今か今かと発表を待っているらしい。
ラズ様人気者!
と、内心思いつつ広場に面して突き出されたバルコニーに、国王陛下夫妻が並ぶ。
バルコニーがある室内には私を初め、お姉様達も一緒にいる。

「やっぱり刺繍を追加して、正解だったわね」

と、私のドレスの裾を見ながら満足気にヴィー姉様が言う。

「レティの色彩をより、魅力的に見せてくれるわね。」

と、リリー姉様も言う。

「もしかして、姉様達が刺繍してくれましたの?」

と聞けば、メアリー様とアナスタシア様もよ。
と言う返事が返ってきた。
花嫁衣裳並のこだわりに、クラりとめまいがする。
この調子だと私の婚礼衣装はすごい事になりそうだと思った。

「レティ、体調は落ち着いた?」
「えぇ、おかげさまで。ただ、色んなものが見えるようになりましたが。」

と付け加えておく。
本当に、魔力が馴染むにつれて、妖精や精霊といった目に見えない者達が見えるようになったのだ。
付き合い方は全く分からないので、その辺はルイ兄様やリリー姉様に聞く気でいる。
ただでさえ、魔力に関しては分からないことだらけなのに、精霊や妖精となるとさらにお手上げの状態なのだ。

「ルイ兄様、お願いがあるのですが。」
「私で分かることならば。」
「最近精霊や妖精を良く目にする機会が増えまして、どう接したらいいのか分からないのです。」
「分かった。リリーも似たような事に困っていたから、一緒に教えるよ。」
「ありがとうございます。」

にっこり笑を浮かべれば、グイッと腰を引き寄せられる。

「魔力、魔法に関しては私が教えるからね?」
「もちろん。頼りにしてますわ。」

一瞬驚いた表情をするものの、見上げて笑えば少し拗ねたような顔も緩む。
陛下の話には全く耳を傾けていなかった面々だが、侍従に呼ばれたのでバルコニー入口に待機をする。

「侯爵家の令嬢、リリーシア、ヴィクトリア、レティーシアの中から婚約者を発表する。」

先程までざわついていた広場がシンと静まり返る。

「王太子、ラザルートの妃は、エレノアール侯爵令嬢、レティーシア・フォン・エレノアールとする。」

陛下がそう宣言し、広場がザワつく中私はラズ様にエスコートされつつバルコニーに立った。
姿を見せた私達に対して大きなざわめきが起きた。
陽に当りプラチナブロンドがきらきらと煌く。
そして婚約の儀式として王家の華である薔薇を中心に編み込まれた花冠をラズ様から被せて貰う形となる。
ゆっくりと身を屈め、侍従が持ってきたピンク色の花冠を頭に被せてもらう。
そして、再びラズ様の隣に並んで立てば幸せそうな笑みを浮かべられた。
瞳の色に関しては、まださほど変化はしていない。
だけど髪色だけでこれだけのざわめきで、瞳の色まで完全に変わり新聞などで姿を伝えられたらすごいことになるだろうなと、思った。


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