君が届かなくなる前に。

谷山佳与

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第2章 憧れた夢の途中

女神の祝福2。

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状況確認をした後、両親達と共に退出し控えの部屋へ向かおうとしたのだが、それは叶わず私はラズ様に捕まった。
レオ兄様はヴィー姉さまと一緒だし、ルイ様はリリー姉さまと一緒だ。
カップル同士で控え室に行くのだろうか?

「ラズ様、あのパーティの準備をしたいのですが。」
「レティが必要なものは私の所で全部準備しているから大丈夫。エレノアール候レティを連れていってもよろしいでしょうか?」

腰を引き寄せ、父様に伺うと案外あっさりと許可はおりた。
そのままラズさまの控え室まで連れて行かれると、じゃあ後はよろしく。と、部屋に控えていた侍女たちへポイっと放り出された。
心得た様に、彼女たちの手によって着ていたドレスは全て脱がされ湯殿で綺麗に洗い清められ、丁寧に体全体をマッサージされながら、ジャスミンの香りのするオイルを塗り込まれた。
ドレスはラズ様が準備してくださったのであろう、明らかに自身で決めていたドレスとは違い、ラズ様の髪色であるライトブルーに近い淡いブルーのドレスを着せられ、そして生花を使って丁寧に髪を編みこまれていった。
すべての準備が終わると、ラズ様が待っている部屋に通された。
ラズ様自身も着替えており、コバルトブルーに近い濃い青の燕尾服に白のタイを付けており、胸元には私が髪の毛に編み込まれている同じ生花が飾られていた。

「よく似合っているよ、レティ。」

嬉しそうな笑を浮かべながら、ラズ様がやって来て当然の様にエスコートをしながらソファーへ案内された。

「ドレスありがとうございます。」
「ヴィーとリリーと相談して決めたんだ。正確にはレオやアル達も参加していたけれどね。最終的にレティ自慢大会に発展したから、途中までだけど。気に入ってくれた?」
「はい。この色ラズ様の色と同じですよね?」
「私は意外に独占欲が強いから、私の色を纏ったレティが見たかったんだ。私はレティの瞳の色だけれど、色が変わってしまったらもう着れなくなってしまうね。」

そう言い目元や頬にキスをしてくる、ラズ様は二人きりでいる時以上にニコニコと笑を浮かべている。
いつも以上のスキンシップに顔が赤くなるのを感じながら、嫌だとは全く感じないし、むしろ幸せだと思えるのでつられて笑う。

式典前のネガティブな考えを笑えるくらい気持ちはずっと楽だ。
あとは、婚約者には決まったけれども、女神フレイアと同じ色彩持ちだからとか侯爵家の娘だからとか理由にされたくない。
だって陛下は、ラズ様が私以外とは婚約しないと言ってきたと仰られた。という事は私の事をちゃんと見てくれて好きだといってくれているのだ。
だから、その気持ちにちゃんと応えたい。

「ラズ様、あの、私・・・・。」
「婚約したくないなんて言葉は聞きたくないよ?」
「え?!」
「俺と婚約決まらなかったら、叔父上かライと結婚してたでしょう?しかも、叔父上なら結婚していいって前言っていたし。」

少しすねた感じで、目がいつ以上に冷ややかだ。
こ、怖い・・・。

「ち、違います!私も、ラズ様の事大好きなんです!!ずっと、初めて出会った誕生パーティの時からお慕いしてました。」

ラズ様の手を握りなが、今まで以上に顔が真っ赤であろう状態で自分の気持ちを伝える。
リリー姉さまとラズ様が一緒に立っている姿を想像して、勝手に落ち込んでいたのは事実だし、それに気がついたのはライでしたけど、思いを伝えず後悔はしたくないと婚約発表直前に思ったので、ラズ様の婚約者にならなくても、私はラズ様が好きでした。というのはちゃんと伝えようと思っていた。

“愛をもらったら愛を返す。”

母様がずっと言っていた。どんなに小さな愛でもちゃんとお礼を。そして、好きな人へは等身大の大きな愛をと。
だから、私の気持ちはちゃんと伝わったのだろうか?
反応が無くだんだん不安に感じ始めるとうつむいていく顔を両手で挟まれ、上に向けられるとそのまま唇を塞がれた。
何ども触れるだけの優しいキスを繰り返しながら、満足した様にその熱は離れていった。

「ごめん、の勘違いで嫌な思いをさせて。俺もレティの事好きだよ。ずっと昔からね。さて、そろそろ会場に向かおうか。婚約者としてのデビューだね。」
「はい、頑張ります。」

多少の違和感を感じながらも、お化粧を少し直しそのまま会場へと向かった。
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主人公は隣国のお姫様ですがライラックのお話です。ご興味のあるかたはよろしくお願いいたします君がずっと好きでした。

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