君が届かなくなる前に。

谷山佳与

文字の大きさ
上 下
26 / 67
第2章 憧れた夢の途中

胸を張って輝け2。

しおりを挟む
アーテと叫んだ瞬間さらに、黒い矢はさらに膨れ上がった。
どうやら、当たりのようだ。
過去の文献でアーテを封印したという話は、建国の時代まで遡り、女神フレイア自身が封印したとあった。
あのアーテは本体ではなく思念体のような気がする。
となれば、光魔法でなんとかなるはずだ。
光魔法を得意とするのは、リリー姉様の一族。それとラズ様。
ラズ様が光魔法を纏わせた矢を作り出すと塊に向けて放つ。すると塊だったものが辺りに散る。それで確認した周りは、光魔法で次々に攻撃をしていく。
ある程度塊が消えたところで、そちらの黒い塊に気をとられていた私は、それを生み出した張本人、オリビア様の存在を思い出し会場を探すも見当たらない。

「レティーシア!!」
「あなたさえいなければ!!」

しまった!全然気付かなかったっ!!
とっさに体をずらし、伸ばされた手をかわす。
避けきれなかった指先が首元に少し触れた瞬間バチンっ!と大きな静電気が起きたような光が弾けた。
その衝動で体がバランスを崩し後方へ倒れる。息苦しさと意識が一瞬途切れはしたものの、触れられた場所はジンジンとし、倒れた衝撃は思ったよりも痛くはなかった。

「・・・っ、!!」
「レティーシア!」
「…っ、げほっ!・・・だ、大丈夫です、ラズ様。」

体をラズ様に支えて貰いながらなんとか、姿勢を正す。
頭がクラクラする。触れられた場所よりも、胸元がジンジンとする。
反対側に倒れ気を失っているオリビア様は、そのまま近衛隊に別室へと連れて行かれた。
あの状況を見て、彼女自身の意思ではないということは伝わるだろう。
明らかに異質なモノを発していたのだから。

「レティ!大丈夫?!」

ヴィー姉さまたちが私の周りに集まってくる。
ふと感じた違和感に視線を落とせば、見慣れないものが左胸の上に現れていた。

「あれ?なにこれ。」

胸元にあるのは、フレイアの紋章と言われているもの。その傍らには、オリーブとブルーベリーの元々あった家紋のアザがある。フレイアの紋章はチェリーピンク色でハートを模したモノで字に寄り添うように色鮮やかに現れていた。
今の一瞬で出来たアザなのだろうか?
そもそも私にこの様なアザのようなものは存在しなかった。

「レティ痛むか?」
「いえ、大丈夫です。それよりあの、ラズ様このアザ・・・。」
「アザ?」

私が触れる場所へ視線を落としたラズ様は、少し驚いた顔をした。

「痛むか?」
「いえ。どちらかというと腕の方が痛みます。」
「レティ、触れてもいいかしら?」
「えぇ。」

紋章をのアザを見たリリー姉さまがアザに触れる。
すると淡く光を発し始めた。

『私の愛子。』

先ほど頭に響いた声が頭上に聞こえた。
声がする方を見上げれば、プラチナブロンドとチェリーピンクの瞳をした女神フレイア。
その姿に呆然としていると、陛下がすぐそばまでやってきていた。

「レティーシアの魔力が無いのはこのアザのせいなんだ。」
「どういうことです?」
『私の可愛い愛子。ごめんなさい。そなたが生まれる時余りにも大きな魔力に、そなたの体が耐え切れそうになかった。だから私は王とそしてそなたのご両親に断り、貴方の魔力を封印した。そなたが成人する時魔力を、そして本来の容姿に戻るようにしたの。』

そっと、私の胸元に振れ、その紋章を綺麗に取り去るとニッコリと微笑んだ。

『もう、大丈夫。いずれ容姿も元に戻るわ。そなたの周りには沢山の愛が溢れているもの。だから大丈夫ね。そなたに女神の祝福を。』

そう言うと会場は光であふれた。
この光は強い浄化作用もあるのだろう。まだ、辺りを漂っていた闇のエネルギーが完全に消え去った。

しおりを挟む
主人公は隣国のお姫様ですがライラックのお話です。ご興味のあるかたはよろしくお願いいたします君がずっと好きでした。

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...