君が届かなくなる前に。

谷山佳与

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第1章 王太子殿下の婚約者候補

王太子殿下とお兄様

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レティ達がお茶会を開いている頃、王城の一角、王太子が住む離宮の執務室では王太子であるラザルートと彼の側近レオナルドが大量の書類と格闘をしていた。
レオナルドはハニーブロンンドの髪を一つに背でまとめ、レティと同じ色のコバルトブルーの瞳を持つ候爵家の長男で、ラザルートの幼馴染であり、次期侯爵である彼は次代の宰相になる人物である。

「・・・今日はレティが王宮に建国祭の準備で来ていますよ」
「知ってる。」

黙々と書類を読み、確認し、サインをしていくラズの横で同じく書類の整理をしながら呟く。

「私としては可愛い可愛い妹に、久しぶりに会いに行きたいのですが。」
「だから、今急いで終わらせているだろう?私だってレティに会いたいんだ。大体あれだけアピールしているのになぜ、気づかない??」
「何を今更。そこがレティの可愛いところじゃないですか。純粋で。あれでもあの子は気持ちを隠しているつもりですよ。それに、魔力なしということが、レティのコンプレックスだと言うことは十分知っています。」
「魔力なしなど、全く気にしないでいいのに。」
「当たり前です。だけど、こればかりは本人の気持ち次第です。それに魔力がなくともレティの頭脳と護身術さえあれば、王太子妃としては十分です。マナーは母上譲りで完璧ですし、そんな些細なことを気にするレティは可愛い。侯爵以下の令嬢達も見習って欲しいものです。」
「それは同意する。」

私ラザルート・ウィル・ヴィ・フレイアスは、この国の王太子だ。
私がレティと出会ったのは、彼女の五歳の誕生日のお祝いで開かれたパーティだ。
レティは私の弟ライと五日しか誕生日が変わらない。だから、それ以降毎年一緒に王城でお祝いをしている。
それに候爵家の娘だ。生まれた時に王家へ嫁ぐことが決まっていた。
私はてっきり、ライの婚約者になると思っていた。年も同じで、侯爵家。
なのに、当時既にヴィーとリリーの二人の王太子妃候補が居たにもかかわらず、レティは私の、王太子妃候補として加わった。
なぜ、レティが候補になったのかは分からない。
だけど、五歳の誕生日の後に行われた魔力測定が原因で、魔力が無いことも関わっているのだろうと幼いながらに思った。
だが、出会った時に一目惚れをした私自身としては嬉しく思ったものだ。
この国フレイアは王族でも結婚相手は候補は居ても強制的には決められない。なぜなら、愛と豊穣の女神フレイアが愛した国だからこそ、恋愛結婚が重視される。
なので、各々好きな人ができ、成就すれば候補から外れることができる。
だけど、ヴィーもリリーもレティの事を妹のように可愛がっているし、彼女の気持ちも理解をしている。
そして、私の気持ちも。
それでも彼女達が候補から外れなかったのは、レティの為だ。
同性の自分たちが傍にいる方が、不要な言葉を聞かずに済むという理由で未だ候補から外れていないのだ。
なので実質レティは私の妃で、婚約者という扱いになるのだが、レティ的に建国祭で王太子妃が決まると思っているので、それまでは我慢ということになる。
そして、今の目標は早々に仕事を終わらせるか、目処を付けてレオと共にレティに会いに行く事だ。
それまではなんとか、王宮に居て欲しいものだと思うが、その辺はヴィー達がなんとかしてくれるだろう。
昨日学院であったにも関わらず、会いたい思ってしまうのは致し方ないと思っている。
早く終わらせる為にも、急ぎの書類だけを片付ける事にした。
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主人公は隣国のお姫様ですがライラックのお話です。ご興味のあるかたはよろしくお願いいたします君がずっと好きでした。

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