君が届かなくなる前に。

谷山佳与

文字の大きさ
上 下
4 / 67
第1章 王太子殿下の婚約者候補

創立記念パーティ2。

しおりを挟む
会場の入口に着くと、扉が開きそのまま中へと入っていく。
いつもならライの挨拶があるのだがけれど、今日は国王陛下の名代でラズ様がいらっしゃってるから、ラズ様の挨拶でパーティは始まる。
ステージ直前でエスコート役がライに代わり、横に二人してずれラズ様だけがステージに登った。
会場からは、予想外の人物の登場にざわめき出していたが、ラズ様が挨拶を始めるとシンと静まり返った。
挨拶が短いのはいつもの事で、ステージを降りてきたラズ様に手をひかれ、ホールの中央に立つと、パーティの開始の合図のためお互いに一礼をして、腰を引かれるとファーストダンスを踊り始める。
くるくると会場を円を描きながら踊ると、ふわりとドレスの裾が綺麗に広がるが、スカートに邪魔をされることなく、ラズ様のリードで楽しく踊る事ができる。
正直ラズ様と踊るのは楽しいし、表情が優しくなるから、とても好きだったりする。

「レティは私と結婚するのは嫌かい?」
「嫌とかではありません。ただ、ヴィー姉さまも、リリー姉様も素敵なんですもの。それに魔力がありませんし。」
「魔力がなくても、レティは素敵なレディだよ?それに王家は魔力有る無しで王太子妃は選ばない。」
「それは分かってはおりますけど。」
 
魔力が無いことに関しては、生まれ持ったもので仕方ないと思う部分はあるが、両親も、二人の兄達も魔力はあり、私だけが唯一魔力をもたないのだ。
ただ、外見や髪色、瞳の色は両親にそっくりで、六侯爵家のそれぞれの家系ごとには違うが、アザのようなものがある。家紋の形をしたそのアザがしっかりとあるので、血が繋がっていないのでは無いかなどということにはならない。
王太子妃候補の中で最年少で、第二王子と同じ年の私がなぜ第二王子の婚約者ではなく、王太子の婚約者候補なのかがわからない。
来月の建国記念日に私は18才を迎える。
この国の成人の年齢で私が成人をする時に、正式に王太子妃が決まるのだ。
ヴィー姉様は形だけの候補だと、聞いている。好きな人がいるのだと。
それもちゃんと、ラズ様には伝えてあってラズ様の方でそのお相手の縁談が決まらぬ様にしてくれているらしい。
私の二人の兄達も、私の婚約が決まるまでは絶対に婚約はしないと宣言しているので、数多くの令嬢達に囲まれているのを見たことがあるが、ヴィー姉さまの思い人も同じ状況なのだろうと、思っている。

「レティ。」
 
ダンスを終えた直後頬にキスをされた。
ラズ様のその行動が様々な思惑のネタになるのに、満面の他の令嬢には決して見たことのない笑を浮かべるから、周りの令嬢達はざわつくのだ。

「ありがとうございました。」

と一礼をし、ホールの中心から戻ってきた私達は、飲み物を手に取る。
それが合図となり、他の生徒達が踊りだす。
一番はじめのダンスは婚約者とそれ以降は他の方と踊ることは可能だが、婚約者以外と踊る生徒は居ない。
ライと踊ろうかとライの方をチラリと見れば、まだ婚約者の居ない令嬢達に囲まれていたので、あそこに乱入する気力は無いし、避難もできないな。と思う。
会場で一番上位貴族のファーストダンスが終わればそれぞれ婚約者なり踊りたい相手の元へお願いをしに行くのが普通だ。
囲まれているライの所へ行くとを半分諦め、ラズ様はまだ踊られるのだろうか?とラズ様をの方を見れば何時の間にか令嬢に囲まれていた。さすが王太子殿下。

軽くため息を吐いた所で少し会場がざわついた。そちらの方に視線を向ければ、不機嫌そうなライが一人の女子生徒の手をとってホールへ向かっていた。
あの令嬢は・・・・・。

「オリビア・カウ・フォルスマイア伯爵令嬢だな。」
「あら、ダンスはよろしいのですか?それよりもあの方ヴィー姉さまのファンの子ですわよね。」
「レティとだけ踊れば十分だよ。ライは珍しい相手を選んだものだ。」
「確かにそうですわね。ライもラズ様同様私以外とあまり踊りませんのに。」

ラズ様とダンスの輪に交ざり踊っている、ライを見ながらじっと見めていた。
ライを見つめている私を、複雑そうな表情で見つめていたラズ様に気付くことはなかった。
しおりを挟む
主人公は隣国のお姫様ですがライラックのお話です。ご興味のあるかたはよろしくお願いいたします君がずっと好きでした。

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...