君が届かなくなる前に。

プロローグ

女神の伝説

昔、地上へ一人の美しい女神が舞い降りた。
彼女の目的は、小国の王子を一目近くで見るためだった。
初めはただ近くで見ていれば良かったのだ。
天帝は頻繁に地上へ降りる女神を咎めなかった。
王子に恋をした事が女神存在そのものだったのだ。
愛と豊穣を司る女神、フレイア。
プラチナブロンドの髪に、チェリーピンクの瞳の美しい女神は、周辺諸国との戦争で大きな怪我をした王子が国へ戻ってきたときに、王子を救うため姿を現したのだ。
フレイアと出会った王子は、彼女に心奪われた。
フレイアの涙が王子の傷を癒やし、戦争への終止符をうつ切掛となった。
命の恩人であるフレイアを王子は妃に迎え入れ、その後争う周辺諸国との戦争に勝利した。
そして、再び争いが起こらぬよう、それぞれ人々をまとめていった。
王族に近い一族を各領地の長に任命をし、侯爵の地位を与えた。
そして争いが絶えなかった地域の国々は、ひとつの大国となり、名もない小国から大国の王となった王子は、命を救ってくれた女神の名を取り、”フレイアス”と名づけた。
その後一切争いは起こらず、問題が起きる度、王となった王子が出向いて解決をしたという。
その傍らには常に、女神の姿があったという。

いつしか王は創国の王と呼ばれるようになる。
今までの争いが嘘のようになくなり、平和な時世が訪れた事に人々は喜んだ。
そして、王が死ぬまで傍に寄り添った女神は、愛すべき国へ自身の祝福を与え、王の御霊と共に天上界へと戻っていった。
そして彼女の色彩を色濃く受け継いだ次代の王も、賢王として国を治めた。
そして、度々現れる彼女と全く同じ色彩を持つ王も、それぞれ国をより豊かに、繁栄させていった。

人々は語る。

ーフレイアの色彩を持つものは彼女の祝福を持つ者。
　あまねく光と愛で、祝福を与えるだろう。

そして、もう一つ語られる言葉がある。
王の傍でフレイアがつぶやいた言葉。

ーあなたが私に永遠とわの魔法をかけてくれたの。
　永遠に解けない魔法を。
　もう二度と離れる事はないわ。あなたが愛するものを私も愛しましょう。
　私の愛しい人。

女の子が憧れる、ロマンスとなり同じく語り継がれる事となる。