君が届かなくなる前に。

谷山佳与

文字の大きさ
上 下
64 / 67
第4章 愛は光に眠る宝石のよう

はだしで駆け出せ2。

しおりを挟む
夜の王城をバタバタと走るのは、レティーシアを抱えたラザルートと彼の父親である国王、そして彼の弟であり、魔術師団長でもあるルイの三人である。
そして、先導するように、白いドレスを身にまとった光の精霊王スヴィエートがいるのだが、適正を持たぬモノからすると、国のトップ三人が、走っているという状況にしかならない。

三人が目指すのはロイヤルガーデンの最奥にあるバラ園。
ここは、王族と六候爵家に縁のあるものしか入れぬ場所である。
バラ園の入口についた、ラズは、スヴィエートが立ち止まったフレイアの銅像の前で同じように立ち止まった。

「ここの鍵は、直系王族の正式な継承権を持つものしか開けぬ。そして、まだ王子には継承権は移っておらぬ。」
「継承権というのは?」
「王位を継いでおるかおらぬかだ。・・・はぁ。年寄りを走らせるものではない。」
「父上。叔父上も。」

肩で、息をし、うっすら額に汗をかき姿を現したのは、先ほど部屋を出た時姿を見た、国王だった。
ある程度息が整った所で、フレイアの銅像へ向けて、親指にはめていたリングをかざす。
すると、フレイアがっ持っていたバラへとリングから光が伸び、バラがピンク色に変わったところで銅像の前に、人一人通れるくらいの通路が現れた。

「私は、入口で待っているから、兄さんと一緒に行って来なさい。」
「はい。」

国王が階段入口へ入り、ラズが来るのを待っている。
スヴィエートは先に入ったらしく、早く来るように急かされた。
長い螺旋階段は壁に沿ってあり、階段毎に小さな灯りが灯っており、ゆっくり降りる分には問題無い明るさだった。
一番下まで降りてくると、大きな椅子にもたれ掛かるように眠る、長髪の男性がいた。
その男性の額に、スヴィエート様がキスをする。

「父上・・・。」
「あの方は、闇の精霊王”フォンセ”殿。スヴィエート様の夫君で、フォンセ殿を目覚めさせれる可能性を秘めているのが、レティーシア嬢となる。ルイの見解だが、レティーシア嬢が気を失っているのも、彼が目覚めるのが近いからであろう。ということだ。」
「さすがね。今回は、王子がレティーシアをからかったのがいけないのよ。まぁ、それでも状況は変わらなかったでしょうけれど。」

宙から、地に降りてきたスヴィエート様は、レティの顔をのぞき込む。
異常がないのを確認したのち、光の紋章がある方の手を取り、ラザルートに付いてくるように促す。
闇の精霊王が眠る場所まで来ると、握っていた方の手をフォンセの額にかざした。
すると、レティの手の甲から光がでて、フォンセの身体をつつみ、スヴィエートの体も包み、そしてレティとラズの体までも包む。

光の球体がくるくると四人の中を循環し、フォンセの額に集まると、光は収まった。


「・・・・んっ。」

先にまぶたが動いたのはレティで、うっすらと目を開けると、光の調節をするように目をしばたかせた。

「・・・・スヴィエートさま?と、ラズ様?ここ。」

目が覚めたので、床に立つと、目の前にいる人物へ視線を移した。
濡れ羽色の髪は長く、黒いロングコートの様な上着を身に付けており、左脇には短剣を装着している。

「気分はどう?レティーシア。」
「え?あぁ、大丈夫です。ちょっと驚いただけで。」

ラズから手を離し、手を祈るように組んでいる部分に両手を重ね、額をくっつっけた。


「・・・・チェムノター・・・兄さま・・・」

レティがそう、つぶやくと額をくっつけていた部分から淡い光が溢れ出した。
しおりを挟む
主人公は隣国のお姫様ですがライラックのお話です。ご興味のあるかたはよろしくお願いいたします君がずっと好きでした。

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...