君が届かなくなる前に。

谷山佳与

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第1章 王太子殿下の婚約者候補

乙女の罪3。 〜オリビアside〜 ✩

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バキンっ!!

寮の机の上に置いていた、魔力を入れた石が大きな音を立てて割れた。

「・・・今回も上手くいかなかったのね。」

割れた石を眺めながら、証拠が残らぬよう、完全に石を燃やし尽くす。
鮮やかな赤い髪をかきあげながら、新たに書いた手紙に読み終わると同時に燃え上がるように魔法をかける。
彼女付きの侍女が魔法に強いことから、魔法を返されたとしても自身にもどらないように身代わりの石に行くように設定をしている。
今の所準備して置いた石は全てヒビ割れ壊れている。
さすが、魔法騎士団団長”アルベルト様”の幼馴染殿というべきか。

フレイアス王国の王太子殿下の婚約者候補に侯爵家より三人の令嬢が上がっている。
聖のアトラス家のリリーシア様、美のエスティル家のヴィクトリア様。そして、知のエレノアール家のレティーシア様。
私の持っている情報から、リリーシア様は王弟殿下へ好意を持っているらしく、滅多に公に姿を表さない王弟殿下もリリーシア様へ好意を持っていて、相思相愛であることから王太子妃候補からは辞退予定だろうと憶測だ。
問題は、エレノアール家のレティーシア様。
知識としてはさすが知のエレノアール家の令嬢と言えるほど、常に学年トップをキープしている。
だけど、王太子様の婚約者は、ビクトリア様こそがふさわしいと思っている。
美しく、聡明で、魔力量も多い。
魔力が全くないレティーシア様なんて、王族に嫁ぐのに相応しくない。
平民ですら少なからず魔力を持っているのに。
お飾りの王太子妃なんて必要ない。
だから、彼女が自ら事態をすれば、ビクトリア様が王太子妃として内定するに決まている。

早く、辞退するようにしなくては。
彼女は相応しくない。

『ふふふ、そう、彼女は王太子妃には相応しくない。王族へ嫁ぐなんてありえないよね。』

頭上よりどこか楽しそうに笑う声が聞こえる。
この声が聞こえるようになったのはいつからだろうか?
そう考えると頭は痛くなるが、今は気にしないでおこう。

彼女が候補から外れるよう背けるため準備を行う。
リミットは建国祭のパーティまで。
早く、早く、早くヴィクトリア様が王太子妃として安定の場所を準備をするの。
そうすれば、ヴィクトリア様だって喜んでくれる。
候補の三人が仲が良いなんて外面的なものでしょう?
きっと疎ましく思っている。
だって、いつも困ったような表情で見ているから。
だから、待っていてください。
ヴィクトリア様に喜んでいただけるように致しますから。
もう少しでよいご報告が出来ますわ。
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