君が届かなくなる前に。

谷山佳与

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第1章 王太子殿下の婚約者候補

創立記念パーティ4 〜ライラックside〜 ✩

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令嬢たちに断ってレティの元へ向かおうすれば、不意に耳障りな声が聞こえた。

「エレノアール様より、王太子妃にはエステル様のがふさわしいですわ。何より、エレノアール様のダンスは殿下方のリードがお上手だからでしょう?」

周囲には聞こえないように、小声で呟いたつもりでも、レティや侯爵家の姉さんたちに関する事については、聞き逃すつもりはない。
声の方へ視線を向ければ、真っ赤な髪に、ガーネットの瞳を持ちはっきりとした顔立ちの令嬢が立っていた。
確か、上位伯爵家フォルスマイア家の令嬢で名前は、オリビア?だったか?まぁ、家名は間違いないだろうから、名前を絶対に呼ばなければ大丈夫だろう。
顔から表情を無くし、問題の令嬢の前に立つ。

「レティがなんだって?」

少し怒気を孕んだ言葉に酷く驚いた表情をし、青くなっているがそんなの自分が吐き出した言葉のせいだろう?と内心呟く。

「私はなにもっ・・・。」
「何も?まぁいいです。私と踊りましょうか、フォルスマイア伯爵令嬢。」

有無を言わせぬ言葉に手を差し出せば、俺の周りに居た令嬢達の視線が一気に彼女に集まる。
王族からの誘いを断れるのは同じ地位に居る者。他国の王族位だ。レティですら誘えば、断ることなく踊るし姉さんたちに誘われれば、俺自身も断らない。
なのでこの令嬢が俺の誘いを断ることはできない。
令嬢たちからの視線が凄いがレティをバカにした報いだと、鼻で笑いながらあまり強引に見えないようにフロアへ連れていく。

「私たちのリードがうまいからレティがダンス上手いって言ってましたね?では、レティと踊っている時と同様に踊りますので、付いてきてくださいね?」

フロアに出て踊りだす直前彼女に伝えれば、顔色は悪く体が強ばるのが分かったが、知ったことでは無い。
音楽に合せ踊り出せば視線の端に、レティと兄上の姿が映った。
二人の表情は珍しいもの見る様な表情をしていたが、俺が機嫌が悪いのはすぐに分かったのだろう、若干呆れている。
踊っている間、正直楽しくなかった。
人並みには踊れるのだろうが、俺と兄上の相手としては技量が足りない。
スピードにも付いてこれていない。
まぁ、これでレティのダンスがリード云々では無いことは身を持って理解したはずだと、最後のリフトはせずにダンスを終了し、彼女を元いた場所へ連れていけば、その足でレティの元へと向い仕切り直しと言わんばかりに、ダンスへ誘った。

「レティ、踊ろう!兄上、レティを借りていきますね。」
「え?」
「あぁ、行っておいで。」

と驚いた表情をしたレティは可愛いく、先程までのイライラが嘘のように吹き飛んだ。
リズムに乗りながらくるくると回り、レティを抱き寄せたりしながら踊りフロアを回る。会場の端にあるソファで休んでいるフォルスマイア伯爵令嬢の姿が映ったが、興味が無いとばかりに視線をレティに戻した。

「機嫌は良くなったのかしら?」
「そんなに、顔に出ていたか?」
「幼馴染だから分かるわよ。それに分かったのって、私とラズ様とか身内だけだと思うわよ?」

クスクス笑うレティに、それは仕方が無いと釣られて笑えば、会場がざわつくのがわかった。
最後にリフトをすると、嬉しそうにレティが笑い、そのまま踊り終えた。

このリフト、兄上やレオ兄様等候爵家の男性陣も必ずやる。
理由としてはレティが楽しそうに笑うのと、レティがリフトされるのが好きだと知っているからだ。
兄上の元へ戻ってくれば、上機嫌のレティが兄上に抱きつき、俺に対しての小言を言われる事はなかった。
本当レティ様様である。
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主人公は隣国のお姫様ですがライラックのお話です。ご興味のあるかたはよろしくお願いいたします君がずっと好きでした。

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