君が届かなくなる前に。

谷山佳与

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第1章 王太子殿下の婚約者候補

創立記念パーティ3 〜ライラックside〜 ✩

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俺が通っている王立ヴァーニル学院。
今日は創立記念日のパーティが学院内で行われる。
パーティには、両親である国王夫妻も参列の予定だった。
そう、だった・・・
そのつもりで俺も、幼馴染のレティも準備をしていた。のだが、直前で届いた父親からのテレパシーで、両親ではなく、兄である”王太子”が名代で来るというものだった。
理由を聞いたらレティの一番上の兄が、会わせていた方がいいと判断したというもので、何となく状況を察した俺はそれ以上は突っ込まなかった。

学院へは兄が単身で来るらしく、側近であるレティの兄は、王太子にバレないよう会場入をし、会場の隅っこにいるのを確認した。

開会の挨拶をし、ファーストダンスを踊るためレティと一緒にフロアへ出た兄の顔はとても嬉しそうで愛しそうだった。
周りからはさほど変化は無いように見えるけれど、あの表情は明らかにご機嫌だ。
身内にしか分からない様なわずかな変化ではあるが、わかる人間が見れば分かりやすい。

「・・・俺も一緒に踊りたかったのにな。って顔をしていますよ、ライラック殿下。」

と、心の内が聞こえたと思い声のする方を見れば何時の間にか隣に立っていた、レティの兄、レオナルド・フォン・エレノアールが立っていた。

「レオ兄さん、ご無沙汰しております。」
「お久しぶりですね。レティと踊りたいのであれば、後から一緒に踊ればいいじゃないですか。レティも基本的に両殿下か、私たち六公爵家の者しか踊らないのですから。」
「それも、そうなんですけどね。」

と苦笑を漏らす。

「本来なら一番最初に踊れたのにってことですか。」

図星を刺され、顔を背けたが事実なので仕方が無い。

「レティは多方面からモテますしね。あぁ、そろそろダンスが終わりそうですね。私は警備を再度確認して城へ帰りますよ。アークが指揮しているのであれば問題なさそうですが。それじゃあ、またお城で。」

言いたいことを一方的に行って会場を後にする、レオ兄さんに苦笑をしながらもあれ以上からかわれることも無く、フロアで踊る二人に視線を戻した。
丁度ダンスを終えた二人は、挨拶をし頬にキスをされたレティは固まっていた。
あれ位普通のことだが、周りにいるのが身内以外ということもあり、固まったのだろう。
レオ兄さんの助言通り、次は自身と踊ってもらおうとレティの方へ向かおうとすれば、婚約者の居ない令嬢たちに囲まれてしまった。
油断していたと、内心ため息を吐いた。

「ライラック殿下、私と踊っていただけませんか?」
「ずるい、わたくしとも踊ってっくださいませ。」

など、声をかけられるが、立場上簡単に踊れるものではない。
妃は自身で選ぶとは宣言していないが、好きな相手以外と結婚するつもりはないと、幼い頃より思っていたし、何より恋愛結婚をした両親を見れば、好きな相手と結婚する。というのが、自分の中で決めている事だ。
なので、正直興味の無いその他の令嬢に関して、一緒に踊ろうなどと思わないのである。

「悪いが、この後はレティーシア嬢と一緒に踊る約束をしている。それに私はレティーシア嬢以外と踊る気は今の所ない。」

と、告げればある程度の令嬢達は諦めてくれる。
レティは兄の婚約者候補が最優先の立場だが、次いで俺の婚約者候補筆頭でもある。
本人はその辺自覚は無いが、学院内での仲の良さを見れば周りは勝手に憶測で勘違いをしてくれるから非常に助かるし、暗黙の了解となっている。
この国では、政治的な結婚よりも恋愛結婚を優先しているからで、レティが兄では無く、俺自身を好きだと、告げれば兄の婚約者候補から外れ、俺の婚約者に収まる事も可能ではあるが、レティ自身からそのような対象で見られていないことは、幼い頃より自覚をしている。
万が一があるかも知れないと、諦めきれず絶賛片思い中である。
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主人公は隣国のお姫様ですがライラックのお話です。ご興味のあるかたはよろしくお願いいたします君がずっと好きでした。

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