5 / 67
第1章 王太子殿下の婚約者候補
創立記念パーティ3 〜ライラックside〜 ✩
しおりを挟む
俺が通っている王立ヴァーニル学院。
今日は創立記念日のパーティが学院内で行われる。
パーティには、両親である国王夫妻も参列の予定だった。
そう、だった。
そのつもりで俺も、幼馴染のレティも準備をしていた。のだが、直前で届いた父親からのテレパシーで、両親ではなく、兄である”王太子”が名代で来るというものだった。
理由を聞いたらレティの一番上の兄が、会わせていた方がいいと判断したというもので、何となく状況を察した俺はそれ以上は突っ込まなかった。
学院へは兄が単身で来るらしく、側近であるレティの兄は、王太子にバレないよう会場入をし、会場の隅っこにいるのを確認した。
開会の挨拶をし、ファーストダンスを踊るためレティと一緒にフロアへ出た兄の顔はとても嬉しそうで愛しそうだった。
周りからはさほど変化は無いように見えるけれど、あの表情は明らかにご機嫌だ。
身内にしか分からない様なわずかな変化ではあるが、わかる人間が見れば分かりやすい。
「・・・俺も一緒に踊りたかったのにな。って顔をしていますよ、ライラック殿下。」
と、心の内が聞こえたと思い声のする方を見れば何時の間にか隣に立っていた、レティの兄、レオナルド・フォン・エレノアールが立っていた。
「レオ兄さん、ご無沙汰しております。」
「お久しぶりですね。レティと踊りたいのであれば、後から一緒に踊ればいいじゃないですか。レティも基本的に両殿下か、私たち六公爵家の者しか踊らないのですから。」
「それも、そうなんですけどね。」
と苦笑を漏らす。
「本来なら一番最初に踊れたのにってことですか。」
図星を刺され、顔を背けたが事実なので仕方が無い。
「レティは多方面からモテますしね。あぁ、そろそろダンスが終わりそうですね。私は警備を再度確認して城へ帰りますよ。アークが指揮しているのであれば問題なさそうですが。それじゃあ、またお城で。」
言いたいことを一方的に行って会場を後にする、レオ兄さんに苦笑をしながらもあれ以上からかわれることも無く、フロアで踊る二人に視線を戻した。
丁度ダンスを終えた二人は、挨拶をし頬にキスをされたレティは固まっていた。
あれ位普通のことだが、周りにいるのが身内以外ということもあり、固まったのだろう。
レオ兄さんの助言通り、次は自身と踊ってもらおうとレティの方へ向かおうとすれば、婚約者の居ない令嬢たちに囲まれてしまった。
油断していたと、内心ため息を吐いた。
「ライラック殿下、私と踊っていただけませんか?」
「ずるい、わたくしとも踊ってっくださいませ。」
など、声をかけられるが、立場上簡単に踊れるものではない。
妃は自身で選ぶとは宣言していないが、好きな相手以外と結婚するつもりはないと、幼い頃より思っていたし、何より恋愛結婚をした両親を見れば、好きな相手と結婚する。というのが、自分の中で決めている事だ。
なので、正直興味の無いその他の令嬢に関して、一緒に踊ろうなどと思わないのである。
「悪いが、この後はレティーシア嬢と一緒に踊る約束をしている。それに私はレティーシア嬢以外と踊る気は今の所ない。」
と、告げればある程度の令嬢達は諦めてくれる。
レティは兄の婚約者候補が最優先の立場だが、次いで俺の婚約者候補筆頭でもある。
本人はその辺自覚は無いが、学院内での仲の良さを見れば周りは勝手に憶測で勘違いをしてくれるから非常に助かるし、暗黙の了解となっている。
この国では、政治的な結婚よりも恋愛結婚を優先しているからで、レティが兄では無く、俺自身を好きだと、告げれば兄の婚約者候補から外れ、俺の婚約者に収まる事も可能ではあるが、レティ自身からそのような対象で見られていないことは、幼い頃より自覚をしている。
万が一があるかも知れないと、諦めきれず絶賛片思い中である。
今日は創立記念日のパーティが学院内で行われる。
パーティには、両親である国王夫妻も参列の予定だった。
そう、だった。
そのつもりで俺も、幼馴染のレティも準備をしていた。のだが、直前で届いた父親からのテレパシーで、両親ではなく、兄である”王太子”が名代で来るというものだった。
理由を聞いたらレティの一番上の兄が、会わせていた方がいいと判断したというもので、何となく状況を察した俺はそれ以上は突っ込まなかった。
学院へは兄が単身で来るらしく、側近であるレティの兄は、王太子にバレないよう会場入をし、会場の隅っこにいるのを確認した。
開会の挨拶をし、ファーストダンスを踊るためレティと一緒にフロアへ出た兄の顔はとても嬉しそうで愛しそうだった。
周りからはさほど変化は無いように見えるけれど、あの表情は明らかにご機嫌だ。
身内にしか分からない様なわずかな変化ではあるが、わかる人間が見れば分かりやすい。
「・・・俺も一緒に踊りたかったのにな。って顔をしていますよ、ライラック殿下。」
と、心の内が聞こえたと思い声のする方を見れば何時の間にか隣に立っていた、レティの兄、レオナルド・フォン・エレノアールが立っていた。
「レオ兄さん、ご無沙汰しております。」
「お久しぶりですね。レティと踊りたいのであれば、後から一緒に踊ればいいじゃないですか。レティも基本的に両殿下か、私たち六公爵家の者しか踊らないのですから。」
「それも、そうなんですけどね。」
と苦笑を漏らす。
「本来なら一番最初に踊れたのにってことですか。」
図星を刺され、顔を背けたが事実なので仕方が無い。
「レティは多方面からモテますしね。あぁ、そろそろダンスが終わりそうですね。私は警備を再度確認して城へ帰りますよ。アークが指揮しているのであれば問題なさそうですが。それじゃあ、またお城で。」
言いたいことを一方的に行って会場を後にする、レオ兄さんに苦笑をしながらもあれ以上からかわれることも無く、フロアで踊る二人に視線を戻した。
丁度ダンスを終えた二人は、挨拶をし頬にキスをされたレティは固まっていた。
あれ位普通のことだが、周りにいるのが身内以外ということもあり、固まったのだろう。
レオ兄さんの助言通り、次は自身と踊ってもらおうとレティの方へ向かおうとすれば、婚約者の居ない令嬢たちに囲まれてしまった。
油断していたと、内心ため息を吐いた。
「ライラック殿下、私と踊っていただけませんか?」
「ずるい、わたくしとも踊ってっくださいませ。」
など、声をかけられるが、立場上簡単に踊れるものではない。
妃は自身で選ぶとは宣言していないが、好きな相手以外と結婚するつもりはないと、幼い頃より思っていたし、何より恋愛結婚をした両親を見れば、好きな相手と結婚する。というのが、自分の中で決めている事だ。
なので、正直興味の無いその他の令嬢に関して、一緒に踊ろうなどと思わないのである。
「悪いが、この後はレティーシア嬢と一緒に踊る約束をしている。それに私はレティーシア嬢以外と踊る気は今の所ない。」
と、告げればある程度の令嬢達は諦めてくれる。
レティは兄の婚約者候補が最優先の立場だが、次いで俺の婚約者候補筆頭でもある。
本人はその辺自覚は無いが、学院内での仲の良さを見れば周りは勝手に憶測で勘違いをしてくれるから非常に助かるし、暗黙の了解となっている。
この国では、政治的な結婚よりも恋愛結婚を優先しているからで、レティが兄では無く、俺自身を好きだと、告げれば兄の婚約者候補から外れ、俺の婚約者に収まる事も可能ではあるが、レティ自身からそのような対象で見られていないことは、幼い頃より自覚をしている。
万が一があるかも知れないと、諦めきれず絶賛片思い中である。
0
主人公は隣国のお姫様ですがライラックのお話です。ご興味のあるかたはよろしくお願いいたします君がずっと好きでした。
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」――冷徹公爵の執着愛から逃げられません」
21時完結
恋愛
「君との婚約はなかったことにしよう」
そう言い放ったのは、幼い頃から婚約者だった第一王子アレクシス。
理由は簡単――新たな愛を見つけたから。
(まあ、よくある話よね)
私は王子の愛を信じていたわけでもないし、泣き喚くつもりもない。
むしろ、自由になれてラッキー! これで平穏な人生を――
そう思っていたのに。
「お前が王子との婚約を解消したと聞いた時、心が震えたよ」
「これで、ようやく君を手に入れられる」
王都一の冷徹貴族と恐れられる公爵・レオンハルトが、なぜか私に異常な執着を見せ始めた。
それどころか、王子が私に未練がましく接しようとすると――
「君を奪う者は、例外なく排除する」
と、不穏な笑みを浮かべながら告げてきて――!?
(ちょっと待って、これって普通の求愛じゃない!)
冷酷無慈悲と噂される公爵様は、どうやら私のためなら何でもするらしい。
……って、私の周りから次々と邪魔者が消えていくのは気のせいですか!?
自由を手に入れるはずが、今度は公爵様の異常な愛から逃げられなくなってしまいました――。

僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる