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第4章 終わりと始まり編
誰かの声が紡いで語る。
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『妃捺。』
『春仁様・・・?』
『もうすぐ会えるから。』
にこやかに微笑んだ春仁様は、私を抱きしめた。
「・・はる・・と、さま」
うっすらと目を開ければ、琥珀と朱桜の顔が目に入った。
「お、気づいたな。俺、藤香に知らせてくる。」
部屋を出ていったのは朱桜で、琥珀が身体を起こすのを手伝ってくれた。
「はい、お水。とりあえず飲んで。」
差し出されたコップに入った水を一気に飲み干す。
足りずにお代わりをすれば、やっと落ち着いた。
「どれくらい?」
「んー、軽く一週間?疲れが溜まってたんだろうね。向こうじゃ気を常に張っていたし、力の開放を何度かしたしね。」
「とりあえず、今いつ?」
「それが俺達も帰ってきて驚いたんだけどさ、あまり日付進んでないの。」
「は?」
「だからあまり時間が進んでいなくて、俺たちが帰ってきた日が妃捺の16の誕生日から一箇月後。季節は秋に移っていたわけ。親父の話だと、妃捺の時間も止まっていたらしくて、月のモノも一回も来なかっただろう?」
「確かに・・・。」
妙に納得してしまった私は、部屋にはいってきた母様からお粥を貰った。
「気がついて良かったわ。お父様なんて目の前で娘が意識無くすものだから慌てちゃって、あの後大変だったわ。」
クスクス笑いながら、おっとりと答える。
母様は、私の姿を確認したあと、緊張の糸が切れたらしくその場に座り込んだものの、私が倒れたと聞いて、すぐさま家人に指示を出したらしい。
「母様、天皇陛下に頼んだら、999年の春宮様に付いて知っていることを教えてくれるかしら?」
「そうね、お兄様にお伺いしてみたら?今度顔合わせもかねて婚約者に会いに行くでしょう?その前にお父様にも一緒に聞いてみたらいいわ。だって収集グセと次代に残したがる安倍一族でしょう?」
母様の話を聞いて、顔を上げる。
そうだ。
我が家の倉庫には歴代当主の手記が綺麗に残っている。
初代様の所を探せば何かわかるかも知れない。
「婚約者に会いに行く?」
「あら?お父様から聞いてない?」
「何も。あの日は帰りましたの挨拶しかしてないから。」
「当初の予定通り、顔合わせはするみたい。そこで妃捺ちゃんが気に入らなければ、その人と婚約はしないって言っていたわ。まぁ、でもお兄様のところは男児が四人もいるから。できればその中から選んでは欲しいみたいよ?」
「そういうこと。わかった。」
「・・・心に決めた人でもいるの?」
母様の言葉に、一瞬思考が停止はしたが、理解すると同時に一気に耳まで赤くなる。
なんで、バレた?!
「だって妃捺ちゃん、帰ってきたときも思ったけれど綺麗になったもの。それに私は妃捺ちゃんのお母様ですからね。」
ふふっと、自信満々に答えた母様に笑ってしまった。
『春仁様・・・?』
『もうすぐ会えるから。』
にこやかに微笑んだ春仁様は、私を抱きしめた。
「・・はる・・と、さま」
うっすらと目を開ければ、琥珀と朱桜の顔が目に入った。
「お、気づいたな。俺、藤香に知らせてくる。」
部屋を出ていったのは朱桜で、琥珀が身体を起こすのを手伝ってくれた。
「はい、お水。とりあえず飲んで。」
差し出されたコップに入った水を一気に飲み干す。
足りずにお代わりをすれば、やっと落ち着いた。
「どれくらい?」
「んー、軽く一週間?疲れが溜まってたんだろうね。向こうじゃ気を常に張っていたし、力の開放を何度かしたしね。」
「とりあえず、今いつ?」
「それが俺達も帰ってきて驚いたんだけどさ、あまり日付進んでないの。」
「は?」
「だからあまり時間が進んでいなくて、俺たちが帰ってきた日が妃捺の16の誕生日から一箇月後。季節は秋に移っていたわけ。親父の話だと、妃捺の時間も止まっていたらしくて、月のモノも一回も来なかっただろう?」
「確かに・・・。」
妙に納得してしまった私は、部屋にはいってきた母様からお粥を貰った。
「気がついて良かったわ。お父様なんて目の前で娘が意識無くすものだから慌てちゃって、あの後大変だったわ。」
クスクス笑いながら、おっとりと答える。
母様は、私の姿を確認したあと、緊張の糸が切れたらしくその場に座り込んだものの、私が倒れたと聞いて、すぐさま家人に指示を出したらしい。
「母様、天皇陛下に頼んだら、999年の春宮様に付いて知っていることを教えてくれるかしら?」
「そうね、お兄様にお伺いしてみたら?今度顔合わせもかねて婚約者に会いに行くでしょう?その前にお父様にも一緒に聞いてみたらいいわ。だって収集グセと次代に残したがる安倍一族でしょう?」
母様の話を聞いて、顔を上げる。
そうだ。
我が家の倉庫には歴代当主の手記が綺麗に残っている。
初代様の所を探せば何かわかるかも知れない。
「婚約者に会いに行く?」
「あら?お父様から聞いてない?」
「何も。あの日は帰りましたの挨拶しかしてないから。」
「当初の予定通り、顔合わせはするみたい。そこで妃捺ちゃんが気に入らなければ、その人と婚約はしないって言っていたわ。まぁ、でもお兄様のところは男児が四人もいるから。できればその中から選んでは欲しいみたいよ?」
「そういうこと。わかった。」
「・・・心に決めた人でもいるの?」
母様の言葉に、一瞬思考が停止はしたが、理解すると同時に一気に耳まで赤くなる。
なんで、バレた?!
「だって妃捺ちゃん、帰ってきたときも思ったけれど綺麗になったもの。それに私は妃捺ちゃんのお母様ですからね。」
ふふっと、自信満々に答えた母様に笑ってしまった。
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