Deity

谷山佳与

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第3章 絡まった糸をたぐり寄せれば編

心は儚い、コワレモノ2。

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演奏を開始してまずは一箇所。
弘徽殿のすぐ近くだ。
軽いものであれば、演奏が終わる頃には浄化されていると思う。
念のため夜見回りには行くつもりではいるけれど。

和琴の演奏を終え、琵琶に持ち帰ると雪華が今度は和琴を演奏始めた。
驚きはしたものの、先程の気配を感じれば参加はするだろう。ここに蒼月が参加してこなくてよかったと思う。
大騒ぎになるから。

ここから少しずつではあるけれどテンポが早くなる。

2・・・3箇所。
なんだか嫌な感じがする。思わず眉間にシワが寄りそうになるのをかろうじで抑えて、演奏に集中する、次いで箏。
4箇所・・・・。
先日から実に嫌な形になりそうなモノを見つけている気がする。
これで後、二箇所あれば、狙いは帝と言いたいところだが、中心がずれている。
最後に横笛なのだけれど、基本的に男性が演奏する楽器になる。
雪華も箏に楽器を変え、異変に気がついているようだ。
姿は見せないが、蒼月、朱桜、琥珀達でさえも弘徽殿に集まってきている。
一気に旋律のテンポを上げ、細かい音を奏る。

5・・・・数が足りない。
もしかしてと思い、範囲を大内裏全体に霊力を広げると、10・・・・11。
二重に仕掛けてある。
演奏を終えると、弘徽殿を中心に、強い結界を張る。
他のお二人も正直弘徽殿へ居てくれる方が助かる。
もちろん主上も。

「素晴らしい演奏であった。春宮妃はどの楽器でも演奏が出来るのですね?」
「っ、えぇ。基本的になんでもできる様にと幼い頃より稽古を付けていただきましたので。」
「お義姉様すごいです!」
「ニの君様、ありがとうございます。」

と、皇后様、二の君様に返事をするものの、この異常事態、時平で動いた方がいい。
どう、伝えるべきか・・・。
すると、足音がいくつか聞こえてくると、御簾の向こうより敦平様の声が響いた。

「春宮様が、妃殿下をお迎えにいらしております。」
「おや。」
「母上失礼してもよろしいでしょうか。」
「えぇ構いませんよ。」

皆が御簾の中、更に扇を広げたのを確認して、返事をする。
私は夫なので時に気にしない。

「おかえりなさいませ。宮様。本日はもう終わられたのですか?」
「あぁ。だから、母上には申し訳ないのですが、妃を連れて帰ってもよろしいでしょうか?」
「素敵な演奏も聞かせていただきましたし、宮自ら迎えに来たのですから、構いませんよ。春宮妃今日は素敵な演奏ありがとう。」
「とんでもございません。それでは、本日は失礼させていただきます。姫君達に置かれましては、またの機会にお話させて頂けましたら嬉しく思います。」

一言断り、宮様に手をひかれ弘徽殿を退出する。
弘徽殿より梨壺へ向かう渡殿へ差し掛かった辺りで、少し歩く速度を早める。

「春仁様、助かりました。」
「事情が分からないが、何かあったのか?」
「えぇ。すぐに主上と、晴明様、章平様に連絡をせねばなりません。」
「・・・・それは、緊急を要するということだな?」
「えぇ。詳しくはまだわかりませが、標的はこの内裏に住まうものもしくは、参内していて参内中は動かぬ者が対象です。ひとまず一度梨壷に戻ります。」
「わかった。」

人目がつかぬ場所は小走りに、それ以外は仲睦まじくお淑やかに通り過ぎ、梨壷に戻ってくると、蒼月、朱桜、琥珀の三人が姿を現した。

「三人とも、さっきの楽で見つけた11箇所調べてきて頂戴。後、だるまの妖から最近、見慣れぬ文使いがいるらしいわ。見つけたら報告とあとを調べて。玄武、陰陽寮へ行くわ。時平の準備を。」

それぞれに指示を出し、着ていた小袿を脱ぎながら、几帳の裏へと入ってゆく。
「春仁様は動かないでまっててください。
と声をかける。
衣冠に着替え、几帳から出てくると、髪を一つにまとめる。
この際、烏帽子は邪魔だから要らない、と言いたいところだが、念のため被る。

「春仁様、私今から陰陽寮に行って章平様を呼んできます。主上の所に晴明様がいらっしゃられる気がするので、内密に会えるように取り計らってもらえませんか?」
「わかった。」
「ありがとうございます。途中まで一緒に行きましょう。と、」

ちゅっっとリップ音を立て、朝かけておいた結界を更に強化する。
うん、これで大丈夫でしょう。
満足気に頷き、梨壺より、外回りで清涼殿へと向かい、私はそこで宮様達と別れ、その際一筆書いた文を預り陰陽寮へと急いだ。
雪ねぇは、姿を消し私に付いて来てくれている。
内裏から陰陽寮まで少し距離はあるが、そこまで遠くは無い。
建物が見えてきて、室外に見慣れた人が立ってる事に気がついた。
というより、一室に人が集まっている様な気がする。

「章平殿!」

外からその人物を呼べば、視線が合う。

「ひっ・・ぶっ!!」

”姫さん”と普通に呼びそうだったので、空気を固めたモノをぶつけてみたら見事に顔面にヒットし、後ろへ後ずさった。
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