Day Dream

谷山佳与

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第5章 その後のお話編。

ささやかな日常。

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奏空そらくん、奏海みなとくん。あっちで一緒に遊びましょ?」

たくさんの遊具がある園庭で、焦げ茶色髪を、ふわふわとゆらしながら、一緒に居た兄妹はクラスメイトの女の子達数人に声をかけられた。

「うん。いいよ。遊ぼう?」

弟の奏海と仲良く手をつないでいた二人は、声をかけてきた女の子達の手を取ると一緒に遊具の方へと歩いていく。
いつもより、ちょっとオシャレをしている女の子達が多いのは今日が、親子参観の日だからだろうと、幼いながらに思っていた。
自分たちの両親が、こうした参観日や行事に来れることは余りなく、入園式からずっと父方の祖父母が忙しい両親に代わり表立って参加をしてっくれている。

そして、自分たちの両親や叔父、祖父母達がこっそり見に来ているのも本当は知っている。
だから、寂しいとは思わないし、ちゃんと家で何があったか話すときは両親も知っているし、何より聞いてくれることが嬉しかった。
ところが、今日の親子参観に関しては、祖父が腰を痛めその看病で来れなくなったと聞いた。
なので、母のおじさんが代わりに来てくれる予定になっている。

「智春!」

声をかけてきたのは、最初に誘ってくれた女の子のお母さんだ。
一緒に、他の子のお母さんたちもいる。

「智春ちゃんのお母さん、こんにちわ。」
「こんにちわ。奏空くん、奏海くん。今日もおばあちゃんたちが来るの?」
「大おじさんがくるって言ってたけど、大おじさんも忙しいから、僕たちは別に無理してこなくてもいいよっていったけど、どうだろう?」
「そう。みんな忙しいのね。さみしくない?」

そう聞かれ、二人で顔を見合わせた。
そして、寂しくないと否定するようにふるふると首をふる。
僕たちの家族は、忙しいけれどいつもキラキラ輝いている。だからそれが誇らしい。
ちゃんと僕らが長期休暇に入ると、傍にいてれるし、職場に必ず連れていってくれるし、長期休暇をもぎ取ってくれるので、ちゃんと旅行にだっていける。
普段も夜祖父母に両親が迎えに来てくれるのだ。
それに、本人たちが寂しいと思っていないので、なんとも思わない。

「そーちゃん、みーちゃん」

考え事をしている時に声をてきたのは、僕と奏海の二つ離れた妹の千佳さよといとこの琉愛るあ隣のクラスで琉愛の兄桜樹おうじゅだ。

そのタイミングで自分の両親が来た子達は離れていった。

「あのね、るーちゃんと話してたんだけど、今日パパ達くるって言ってたらしいよ」
「え?それはるーのパパ達が?」
「そーちゃん達のパパ達も」
「僕はひーくんがくるって聞いたよ?」
「さーちゃんはママがくるって聞いた」

話をまとめると、珍しく両親達が揃ってくるようだ。しかも僕は大おじさんが来ると聞いている。
素直に喜ぶ弟妹達を眺めながら、大丈夫なのだろうかと考えてしまった。


園全体で行われる親子参観は、各園児の母親がメインだが、夫婦揃って参加するところもある。なにより、今日のメインは親子でお遊戯をするのだ。
必ずペアで。学年毎、クラスごとに並んだ僕たちは、朝の体操をして、それぞれ両親のところへと向かう。
しかし、僕たち五人はまだ両親は来ていなく、先生達の元へと集められた。
ひとまず両親達がくるまでは、先生達が一緒にしてくれるらしい。
と、そこへ聞きなれた声が響いた。

「すみません!おそくなりました!」

先生達の元へやってきたのは、色素の薄い茶髪の髪を高い位置で一つ結びにした、ラフな格好をした女性で、その後ろには同じ色彩の短髪の男性三人がなにやら言い合いをしながら歩いてきていた。

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