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【番外編】媚薬騒動

4.ずっと見ていたくなる★

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「ふふっ、だけどすごい商品名だよね。『気絶寸前・昇天媚薬』って」
「俺も買う時に連呼されて逃げたくなった。一人三錠ずつだそうだ」
「わかった。……まだ分からないね。効き目が出るまで三十分くらいかかるのかな?」
「そうだろうな。……シリルもほら、服を脱いでくれ」

 獣毛に覆われた長い指が、着ていたベストのボタンを外してくれる。そのまま、ズボンや下穿きまで、まるで召使いのように傅き脱がせてくれた。

「グレン……」

 俯くと視線が合って、そのまま抱き留められ口づけられた。あっ、と思う間に抱き上げられる。

「僕、重くなってない? 体重増えてるんだけど」
「このくらい許容範囲内だ」

 獣人だけあって、筋力は人間よりも遙かに上回るのだろう。数歩歩いたのち寝台に降ろされるときも、覆い被さるように長い口付けが与えられた。水色の瞳がじっとシリルの姿を写す。

「好きだ、シリル。小さい頃から一緒だが、母になったお前は茶目っ気があって以前よりずっと明るくて……飽きることがない。ずっと見ていたくなる」
「子供といると楽しいから、引っ張られるのかもね。グレンもルイスの良いお父さんだよ、いつもありがとう」
「ルイスは俺達の宝ものだからな。ルイスにとってのお前もそうだ。……だけど今だけ、独り占めさせてほしい。俺だけのシリルになってくれ」

 きゅっ、と性器を握られ、優しく擦られる。いつものように声を出さないように、と思ったが、今日は心配しなくていいんだった、と思い直した。

「ふぁっ……。そんなの、当たり前だよ。この宿に来たときから……ううん、結婚したときから僕はグレンのものだから。だから、思い切り愛して」
「シリル、愛している」

 グレンのもう片手が、今度は胸に触れた。感じやすい右側の乳首を摘ままれ、コロコロと指の腹で転がされる。

「んっ、ふ……っ」

 ドキドキしてしょうがない。薬が効き始めたのかもしれないし、家ではこんなに甘い言葉の応酬はほぼなかったのだ。すべて子供ルイスに見つからないように、という配慮からだが、睦言くらい交わしてもよかったかな、と今頃気付く。

「最近こっちは指でしかさわってなかったな」と言って、グレンが左の乳首をペロリと舐めた。そのまま、乳暈に円を描くように舐められる。一番敏感な真ん中の乳首には刺激をくれない。

「や、やだ。もっと……。真ん中もして」

 しばらく我慢していたが、堪えようがなくなって哀願すると、待ってましたといわんばかりに乳首を吸い上げられた。目が眩むほどに気持ちが良い。すでにシリルの小ぶりな性器は音を立てるほどに濡れていて、尻からも誘うような甘い香りの愛液が溢れている。その匂いに鼻をヒクヒクと動かしたグレンが「後ろも慣らしておくか」と言った。

「但し、一度前でイッてからな。シリルがイクところを、明るい部屋で見てみたい」
「もうっ、バカ!」

 ズボンの前立てを寛げたグレンが、自分の大きな性器とシリルのものを合わせ、片手で包む。肉球と、裸の性器が擦れ合わさって、目裏まなうらがチカチカする。そんなシリルを見て、グレンが目を細める。

「いいのか、シリル」
「気持ちいい、もっと、もっと強くして……っ」

 雁首や裏筋のあたりが感じると熟知しているからか、そのあたりを入念に擦られた。それが終わると竿を再び強く、最後に性器の割れ目は優しく撫でるようにされて、シリルは絶頂を極めてしまった。

「あ、ふぁっ」

 余韻で体を震わせていると、グレンが尻を撫でる延長線で後孔に指を忍ばせた。すでにそこは充分すぎるくらい潤っている。

「指三本くらい余裕で飲み込めそうだな」と言われ、耳まで赤くなってしまう。
「まずは二本からな」

 グレンの言う通り、シリルの後ろは拍子抜けするほどあっさり太い指を飲み込んだ。しばらく入り口周りをやわやわと広げていた指が、少し奥にあるポイントを探り出す。

「あ、あぁっ……、やぁ」

 ポイントはここだと訴えているような甘えた声に、われながら赤面する。

「ここか……」

 この声に満足したのか、グルル……と機嫌のいい喉音が聞こえてくる。それから指を三本に増やされ、前立腺ばかり責め立てられた。

「や、あんっ! グレン、もうだめぇ……っ」

 気持ちがよすぎて苦しいほどだと訴えると、やっと責めるのをやめてくれた。中でイッてしまったことには気付いていないようだ。

「俺ももう我慢できん」

 尻に長大な性器が充てられる。先端が濡れているから、グレンも興奮しているんだろう。

「挿れるぞ」

 言葉が終わる前に、グッと先端の傘の部分が入り込む。はじめはいつでも他人のモノが入っているという違和感がある。だけど、中ほどまで進み体温が馴染むと、もう異物感がなくなるから不思議だ。物足りない。もっと奥をかき乱して欲しいという欲求が膨らんでいく。

「動いて、グレンっ。激しくしていいから……」
「ああ」

 そう言うと、大きく腰を打ち付けてきた。何度も奥へと穿たれるうち、腸壁と性器がこすれ悦楽が高まってゆく。まるで性器を擦り上げているような快感を体の中でも味わえるなんて、オメガに生まれてよかったと思う。グレンが動くたび、グチュン、ピチュッといういやらしい水音が響きはじめた。奥から愛液がどんどん分泌されているせいだろう。

「キスして、グレン……」

 両手を広げると、豹頭の男が覆い被さって望むものを与えてくれる。唇を合わせたあと、深いキスに移行する。

「ん……」

 そのあいだも腰は休めないから、気持ちいい波が襲ってきて、快楽ゆえの涙が滲んでしまった。体の奥から耐えきれない快楽に流されそうになってくる。

「グレン。も、もう僕っ……」

 フワフワの毛が密集する首に抱きつくと、フッと鼻を鳴らされた。

「ああ、俺もイキそうだ」

 次の瞬間、波濤のような高まりに襲われる。感じ入ってるあいだに温かい種を最奥に掛けられた。

「薬の効き目はすごいな。恥を忍んで買ってよかった」

 せっかく部屋に風呂が付いているので、一緒に猫脚のバスタブに浸かる。

「僕もそうだけど、グレンも効いてたみたいだね。なんで後輩さんが媚薬なんか持ってたの?」
「訳あってそういうバイトをしているそうだ。隠したいだろうから、内緒にしてやってくれ」

 ふうん、とそれ以上詮索しないことにする。

「でも、今日は思い切り愉しんじゃった。いつもは気を遣ってるけど、たまには家以外でこういうことしてもいいよね」
「そうだな。解放感が段違いだ。俺は起きたらルイスを迎えに行くが、シリルは……」
「ごめん、もうダメ。眠さが勝って、すぐにベッドに潜り込みたい。ルイスのこと気になるけど」
「きっとルイスも寝惚けているだろうから、気にするな」

 部屋にあった寝間着を着て寝台に入る。思い切りセックスしたせいか、体がだるくて仕方がない。

「おやすみ、グレン。今日はありがとね」
「俺のほうこそ。また来よう」

 その夜は夢もみないほどぐっすり眠れ、翌朝フレンチトーストを目の前にして飛び上がりそうなほど喜ぶルイスとグレンと三人で、ホテルの朝食を堪能したのだった。

【了】
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