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しおりを挟む固く熱を持った花坂のものに貫かれ息が止まった。無意識に身体へ力が入るが、それを宥める様に優しいキスを繰り返される。詰めていた息をそっと吐き出すと、より一層自分の中へ入り込んだそれの大きさを感じ取る事になる。
苦しい。
だけど想像していたほどの痛みは感じなかった。花坂によって丁寧に解されたおかげだろう。
全てを挿入した後も花坂は俺がその形に慣れるまでじっと待っていてくれた。すぐに動きたいだろうに、痛みを感じさせないように細心の注意を払っている事が伝わってくる。
静かな室内では、暫くお互いの呼吸音だけが聞こえた。
向かい合って花坂の首に縋り付いている為、普段身長差で距離を感じる顔が驚くほど近い場所にある。
額に汗を滲ませ、堪えるように僅かに寄った眉根がどこか野生的だ。普段真面目で硬派な印象の花坂との差に心臓がより早鐘を打つ。ごくりと唾液を飲み込んだ時、不意に獲物を狙うような視線に射抜かれた。
無意識に花坂のものを締め付けると、耳元で息を呑む声が聞こえた。
花坂も俺の中で感じてくれていると言う事実に嬉しくなる。
「ゆ、柚木さん」
「花坂もう・・・大丈夫だがら動いて」
十分に馴染んだ。
これ以上動かないのは寧ろ生殺しだろう。既に形に慣れた奥は、じわじわと半端に煙る熱に侵食されつつある。
花坂の腰に足を絡めれば、一層繋がりが深くなった。それを皮切りに花坂は俺の腰を両手で支えると、ゆっくりと抽挿を始めた。
「はっ、ん、っく」
「ッはぁ、っ」
優しい動きではあるが、先ほど指で責められた場所を刺激され無意識に腰が逃げそうになる。しかし花坂は分かっていてその場所を狙っているのだろう。荒々しさは持たずとも決して逃げる事を許さなかった。
「っひ、ぅう、んッ」
「く、はぁっ」
緩やかに性感を高められながら、互いの呼吸が徐々に荒くなっていく。
一際強く絶頂の波が押し寄せた瞬間、触れられていなかった自身から精を吐き出した。優しくも強い快感に背筋を振わせながら、無意識に中のものを締め付ける。花坂が小さく声をこぼした後、吐き出された熱をじわりと中に感じる。
花坂も達したのだろう。俺は溶けた思考で満ち足りた気持ちに浸る。しかしぼんやりとしたその思考は、ぎゅっと抱きしめて来る花坂の腕によって遮られた。
「わっ」
「柚木さん、はは、嬉しいです。俺たち本当に一つになってる」
より強く抱きしめられ苦しくなるが、どこか泣きそうな声にぎゅっと心が締め付けられる。表情は見えなくても花坂が今どんな顔をしているか想像は出来た。
「柚木さん、好きです。あなたとこうして今抱き合っている事が夢みたいだ」
「・・・夢な訳あるか」
俺は力の込められた腕をやんわりとずらし花坂の頬へ手を伸ばす。キスをしようとしたが僅かに悩み、止めた。
肉付きの薄い花坂の頬を指で摘みみょんと伸ばす。痛みは感じない程度なので花坂の表情には困惑ばかりが浮かんでいる。
「ゆ、ゆひひゃ」
「好きだ」
「ふぇっ」
「不安にして悪かった。もっとちゃんと言葉で好きだって伝えるからーーー花坂の事、好きだよ」
指先に触れる頬の柔らかさも、まだ中に入ったままの熱も、背中に回されている腕の感触も全て本物だ。夢なんかじゃ無い。それでも信じられないなら、信じられるまで何度だって伝えよう。
俺は花坂の顔を支えると、今度こそ噛み付くようなキスをした。
こうして俺は床にちんこが生えていない、穏やかだった自分の部屋を取り戻したのだった。
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