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本編
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家に入るとあまりにも早い帰りに、使用人たちが驚ろきながら出迎えに来た。
他の家族たちはまだ帰っていないようだ。俺たちが真っ先に挨拶を済ませて出てきたのでそれもそのはずだが。
俺は自分の部屋へ戻り、明日持って行く荷物を確かめた。もともと物は多くないので一目チェックすれば、全て詰め込まれていることがわかる。
そして、俺は最後にと引き出しから手紙を取り出した。カインと両親、それからスラムの方を任せきりにしているルイスに別れの手紙を書くためだ。
ルイスにはすでに移住の話はしてあるし、カインにはヘンリーとその話をしてるのを聞かれてバレてしまった。
カインには最初こそ強く止められたが、俺の幸せがこの国にないならと最後は納得してくれた。移住後に必ず居場所を知らせるよう約束させられてしまったが…
両親には何も言っていないのでこの手紙が正真正銘別れを告げる最後の連絡となる。
彼らも曲がりなりに俺のことを愛してくれていることはここ数年で分かったが、やはりここの家族として俺は馴染めないと思った。
彼らも俺を家のために使おうという気はもう無いようだし、自分の意思で家を出ていく分には構わないだろう。
そして手紙書き終えた俺はルイスへの1通をメイドに任せ、他は机の引き出しにしまった。
いつもカインかヘンリーがいた部屋は1人でいるとひどく静かだ。
何もすることがなくなった俺は、明日は朝が早いかもしれないのでさっさと寝ようとベッドに入った。
すると窓からコツっという音がした。気のせいかと思って再び寝ようとすると、また同じ音がする。
窓を開けて外を見渡すと、下の庭にザックがいた。
「テイト!」
「ザック!まさかもう迎えにきたのか?」
「いえ、流石に寝ずに連れ出したりしませんよ。今日ははテイトが約束を忘れていないか確かめに来ただけです」
「忘れるはずないだろう?」
「ええ、安心しました」
そう言って嬉しそうに笑ったザックに、先ほど会ったばかりだというのに嬉しさが込み上げる。
するとザックが壁を伝って窓のところまで登ってきた。
「おい!ここ2階だぞ!?」
「これくらい大丈夫ですよ。」
目の前までやってきたザックにデコピンしてやりたい気持ちをぐっと抑える。そんなことをしてここから転落でもされたら冗談では済まない。
「全く、危ないことを…!」
「すいません、でもこれだけはどうしても明日まで我慢できなくて」
ザックはそう言うと俺を抱きしめて唇に触れるようなキスをした。
わざわざ登ってきた理由が俺とキスしたいからだなんて…そう思うと先ほどの怒りは吹っ飛び、恥ずかしいやらで顔を背けた。
「こ、こんなの…明日になればいつでも…」
「いつでも?」
「あっ、いや…」
こんなことのために馬鹿げたことをするなと言いたくて口を開いたのに、失言をしてしまった。
だが、弁明をする間もなく目を細めたザックは俺を抱きしめる腕に力を入れた。
「いつでもこうしていいんですね?人目があってもテイトが恥ずかしがっても」
「それ、は…」
ダメだ、と言おうとしてまたしても口を塞がれてしまった。今度は触れるようなキスではなく貪るような深いキスで。
まるで食べられているようだと錯覚を起こしそうなそれに次第に体の力が抜けて行く。
頭がぼーっとしてきた頃、ザックが唇を離した。
「今日はここまでにしておきます。でないと明日迎えに来るどころではなくなってしまいそうだ」
そしてニヤッと笑ったザックは俺の下半身へと手を伸ばし、少し硬さを持ち始めていたそこを優しく撫でた。
「あッ!」
俺は慌ててその手を引き剥がしザックを睨む。
「そんなに煽らないでください。明日になれば最後まで満足させてあげますから」
「そ、そんなことで怒ってるんじゃない!急に触ったりするからっ…」
「ふふっ、だって可愛がって欲しそうに主張してたからつい」
「そんなんじゃないっ!」
つい声を荒げてしまった俺にザックが「しーっ」と指を当てる。
「明日午前5時に迎えにきます。伯爵邸を出て大通りに向かう路地で会いましょう」
「ぐっ、わかった…」
ザックに勝ち逃げされたようで腹が立ちつつも明日の段取りについて頷いた。
「この状態じゃ辛いでしょうけど、今日はしっかり休んでくださいね?」
いつ間にか俺の手を振り解いたザックが再びそこを触ってくる。
「やっ、だから、やめろって…!」
言葉とは裏腹に快感を与えてこようとするザックから身を捩って逃げる。
「ああ、でもくれぐれも私以外の前で慰めたりしないように」
「そんなこと出来るわけないだろ!」
「そうですか?なら良かった。明日までそのままだったら私が慰めてあげますから」
ザックはいい笑顔で笑うと最後に額にキスをして窓からそっと降りて行った。
俺はというと手を振りながら裏口から出て行くザックを睨みつけるように見送った。
他の家族たちはまだ帰っていないようだ。俺たちが真っ先に挨拶を済ませて出てきたのでそれもそのはずだが。
俺は自分の部屋へ戻り、明日持って行く荷物を確かめた。もともと物は多くないので一目チェックすれば、全て詰め込まれていることがわかる。
そして、俺は最後にと引き出しから手紙を取り出した。カインと両親、それからスラムの方を任せきりにしているルイスに別れの手紙を書くためだ。
ルイスにはすでに移住の話はしてあるし、カインにはヘンリーとその話をしてるのを聞かれてバレてしまった。
カインには最初こそ強く止められたが、俺の幸せがこの国にないならと最後は納得してくれた。移住後に必ず居場所を知らせるよう約束させられてしまったが…
両親には何も言っていないのでこの手紙が正真正銘別れを告げる最後の連絡となる。
彼らも曲がりなりに俺のことを愛してくれていることはここ数年で分かったが、やはりここの家族として俺は馴染めないと思った。
彼らも俺を家のために使おうという気はもう無いようだし、自分の意思で家を出ていく分には構わないだろう。
そして手紙書き終えた俺はルイスへの1通をメイドに任せ、他は机の引き出しにしまった。
いつもカインかヘンリーがいた部屋は1人でいるとひどく静かだ。
何もすることがなくなった俺は、明日は朝が早いかもしれないのでさっさと寝ようとベッドに入った。
すると窓からコツっという音がした。気のせいかと思って再び寝ようとすると、また同じ音がする。
窓を開けて外を見渡すと、下の庭にザックがいた。
「テイト!」
「ザック!まさかもう迎えにきたのか?」
「いえ、流石に寝ずに連れ出したりしませんよ。今日ははテイトが約束を忘れていないか確かめに来ただけです」
「忘れるはずないだろう?」
「ええ、安心しました」
そう言って嬉しそうに笑ったザックに、先ほど会ったばかりだというのに嬉しさが込み上げる。
するとザックが壁を伝って窓のところまで登ってきた。
「おい!ここ2階だぞ!?」
「これくらい大丈夫ですよ。」
目の前までやってきたザックにデコピンしてやりたい気持ちをぐっと抑える。そんなことをしてここから転落でもされたら冗談では済まない。
「全く、危ないことを…!」
「すいません、でもこれだけはどうしても明日まで我慢できなくて」
ザックはそう言うと俺を抱きしめて唇に触れるようなキスをした。
わざわざ登ってきた理由が俺とキスしたいからだなんて…そう思うと先ほどの怒りは吹っ飛び、恥ずかしいやらで顔を背けた。
「こ、こんなの…明日になればいつでも…」
「いつでも?」
「あっ、いや…」
こんなことのために馬鹿げたことをするなと言いたくて口を開いたのに、失言をしてしまった。
だが、弁明をする間もなく目を細めたザックは俺を抱きしめる腕に力を入れた。
「いつでもこうしていいんですね?人目があってもテイトが恥ずかしがっても」
「それ、は…」
ダメだ、と言おうとしてまたしても口を塞がれてしまった。今度は触れるようなキスではなく貪るような深いキスで。
まるで食べられているようだと錯覚を起こしそうなそれに次第に体の力が抜けて行く。
頭がぼーっとしてきた頃、ザックが唇を離した。
「今日はここまでにしておきます。でないと明日迎えに来るどころではなくなってしまいそうだ」
そしてニヤッと笑ったザックは俺の下半身へと手を伸ばし、少し硬さを持ち始めていたそこを優しく撫でた。
「あッ!」
俺は慌ててその手を引き剥がしザックを睨む。
「そんなに煽らないでください。明日になれば最後まで満足させてあげますから」
「そ、そんなことで怒ってるんじゃない!急に触ったりするからっ…」
「ふふっ、だって可愛がって欲しそうに主張してたからつい」
「そんなんじゃないっ!」
つい声を荒げてしまった俺にザックが「しーっ」と指を当てる。
「明日午前5時に迎えにきます。伯爵邸を出て大通りに向かう路地で会いましょう」
「ぐっ、わかった…」
ザックに勝ち逃げされたようで腹が立ちつつも明日の段取りについて頷いた。
「この状態じゃ辛いでしょうけど、今日はしっかり休んでくださいね?」
いつ間にか俺の手を振り解いたザックが再びそこを触ってくる。
「やっ、だから、やめろって…!」
言葉とは裏腹に快感を与えてこようとするザックから身を捩って逃げる。
「ああ、でもくれぐれも私以外の前で慰めたりしないように」
「そんなこと出来るわけないだろ!」
「そうですか?なら良かった。明日までそのままだったら私が慰めてあげますから」
ザックはいい笑顔で笑うと最後に額にキスをして窓からそっと降りて行った。
俺はというと手を振りながら裏口から出て行くザックを睨みつけるように見送った。
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