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本編

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パーティー当日、俺は既に荷造りも終え、翌日にはここを発つことができる状態にした。

カインは一緒に行ってくれる令嬢を見つけたらしく、その子を迎えに早めに出て行ったらしい。
さすがだと感心しながら俺はヘンリーと揃いの服を着て家を出る。

一方ザックは今回1人で参加すると言っていた。
ヘンリーと一緒に参加する自分が言えたことではないが、彼が誰かを伴わなくてホッとしたものだ。

「テイト、もう着くみたいだ」

その声に顔を上げるとヘンリーが窓の外を指差した。王城が目の前に見える。

「ああ、本当だな」

パーティーへの参加は気が重いが、これさえ終わればザックと一緒になれると思えば気持ちは軽くなった。


「では行きましょうか?」

馬車が到着すると、ヘンリーが颯爽と降りてわざとらしく俺に手を差し出した。

「ああ、それじゃエスコートをよろしくお願いします」

俺も同じような態度で返して馬車を降りる。

会場の中に入れば早速注目の的となった。

「あれってアーデン家の…」
「一緒にいるのは誰?」
「もう次の恋人がいるなんてなかなか手が早いな」

ヒソヒソ話がヘンリーの話に向かったところでチラッと彼を見る。彼は飄々としていて特に気にした様子はない。そのことにホッとして俺も前を向いた。

今日はまともなパートナーを伴っているせいか、話しかけてくる人間はおらず遠巻きに噂話をされるのみだ。

「な?言った通り1人で参加した方がマシだっただろ」
「そうでもないさ。私は注目を浴びるのも嫌いじゃない」
「こんな形でも?」
「ああ」

彼は笑って答えた。その不遜さに呆れよりも尊敬が混じる。

すると別の到着客がやってきた。そちらを見れば、ザックが堂々と階段を降りてくるのが見えた。

軽く視線を合わせれば驚いた表情が目に入る。すると少し怒ったような顔をしてズカズカとこちらに歩いてきた。

わざわざ別々に来たというのにこちらに向かってくる彼に戸惑ってしまう。

「えっと、ヘンダーソン公爵?お会いできて光栄で…」
「その服は何ですか」

他所向きの挨拶で誤魔化そうとしたが、ザックに遮られてしまった。

「見ればわかるだろう?パートナーだから揃えたんだ」

俺が口を開く前にヘンリーが答える。

「婚約者でもないのに揃えたんですか?あなたがそんなマメなことをする人間だとは思いませんでした」
「これくらいいいだろう?彼を守るのにも役立っているじゃないか」
「守る?あなたが新しい恋人だと噂されていることがですか?」

ザックの反応を見たいと思ってヘンリーの誘いに乗ったのは自分だが、思った以上の怒りように驚いてしまう。

「実際誰も声をかけてこないのは俺とこの服のおかげだと思うが?」

ヘンリーは相変わらず楽しそうだが、それが火に油を注いでいるようでヒヤヒヤする。

「それはそうかもしれませんが…」

ふとザックを盗み見れば先日プレゼントしたブローチを付けていて、こんな状況でも嬉しく感じているのだから我ながら自分勝手だと思う。

「後少しなのだろう?こんなところで邪魔が入ったら面倒なんだからもう少し我慢してろ」
「わかりました…今日のところはテイトのことを頼みます」

ザックが折れて引き下がろうとする。だが、このままでは良くないと思い俺は慌てて引き止めた。

「ザック!その…こんなことしてごめん。あと、ブローチを付けてきてくれてありがとう」

あくまで小声で他の人たちには聞こえないよう礼を言う。すると、ザックは目を細めたかと思うと再び近づいてきて俺の耳元で囁いた。

「あまり試すようなことをしないでください。私はテイトを自分のものにしたくていっぱいいっぱいなんですから。今日のことは覚悟してくださいね?」

そして耳に息を吹きかけたかと思うと再び人混みへと戻って行った。

「おい、大丈夫か?顔が真っ赤だぞ」
「だ、大丈夫です」

こうして想像以上にザックに火をつけてしまった俺はしばらく戦々恐々とすることとなった。
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