【完結】欠陥品と呼ばれていた伯爵令息だけど、なぜか年下の公爵様に溺愛される

本編

80

翌日。

「テイト！起きてる？」

カインが明るい声で俺たちの部屋へとやってきた。

「起きてるが…今はヘンリーも居るんだぞ？」
「あっ、すいません。騒いでしまって…」
「いや、私も起きているから大丈夫だ」

その言葉にホッとしたようにカインが俺を見る。

「面白いニュースがあるんだ。これを見て」

そう言ってカインが見せたものは新聞だ。

新聞にいい思い出がない俺は少し警戒しながら記事に目を通す。

そこには、ホイットリー侯爵のことが書かれていた。あの夜の一件で評判を落とした彼だが、そのことの他にも余罪が色々と明らかになったらしい。

彼は平民や爵位の低い子息相手にも性犯罪まがいの事をしでかしており、それが次々と明らかになったという。

結果貴族の品位を落としたとして彼には重たい罰が課された。被害者への高額な賠償と爵位の降格だ。まあ侯爵だからこの程度で済んだとも言えるが。

だが一番驚いたのは、その上で彼は新しい妻を娶るのだという。前妻は今回の騒ぎで離婚となり実家へ戻ったらしいが、まさかこの状況で再婚するなど正気とは思えない。

新聞には「これ以上被害者が出ないよう、元侯爵には新しい奥方で我慢してもらいたいものだ」と締めくくられていた。

「ね、面白いでしょう？あの人かなり自滅したみたい。いい気味だよ」

カインが不穏な言葉を吐くがこればっかりは俺も同意するしかない。

「まあ面白いかは別として、しっかり制裁されたようでよかった。やつの新しい奥方というのは気の毒だが…」
「まあ、こんなやつに嫁ぐなんてよほど訳ありなんでしょ」

その言葉に曖昧に頷く。一歩間違えれば自分がこの奥方になっていたのではと思うと笑う気にはなれなかった。

「きっと一生借金に追われる生活だろうね。本当にテイトがこんなやつに嫁がずに済んでよかった…」

そう言ってカインは俺に抱きついてくる。


「嫁がずに済んでよかった？テイトはこの男と婚約していたのか？」

すると今まで我関せずと茶を飲んでいたヘンリーが話に入ってきた。

「いえ、婚約する手前だった、と言いますか…」
「何故だ？お前はアイザックと恋仲だろう？」
「ええ、ですが俺とザックは婚約が認められなかったので…そこでホイットリー侯爵の後妻として嫁ぐ話が出たんです」
「ああ、なるほど。そんなことが…」

そしれ彼は憐れむような視線を俺に向けた。確かにこんな男と婚約しそうだったなど同情に値するのだろうが、居た堪れないからやめてほしい。

それにしても俺の代わりと言っては何だが、こんなやつに嫁ぐ事になった不運なやつは一体誰なのだろう。つい他人事とは思えずそんなことを考える。


これが、先日ザックが報告したいと言っていたことだったと知るのはそのしばらく後のことだった。