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本編

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それから2日、俺は家に引きこもっていた。

ザックから離れたお陰で貴族たちの俺への関心も薄れ、パーティーなどの招待も届かなくなっていた。
そのことにホッとして家でのんびりと過ごす。久々に平穏な日々だ。

ザックがいないことに寂しさを感じるが、あの一件からあいつのことは心から信じられるようになった。それについてはあの騒動で唯一良かったことと言えるだろう。

ちょうどそんなことを考えていた時、ザックから手紙が届いた。

ーーー親愛なる テイトへ
元気にしていますか?ちゃんとご飯を食べていますか?私は2日会わないだけでも恋しくて気が狂いそうです。
一緒に暮らせる日が待ち遠しいです。だから、それまでよそ見せず私のことを待っていてくださいね?それから………

俺を心配する内容と愛の囁きが恥ずかしげもなく綴られた手紙に思わず赤面する。文章とはいえ、あいつはよくこんなものが書けたものだ。

だが内容はそれだけでなく、不可解なお願いも綴ってあった。
なんでも留学時代のザックの友人がお忍びでこの国にやってくるので、俺に面倒を見て欲しいらしい。

ザックの友人なのだからザックがもてなせば良いだろうにと思うが、相手が俺を希望しているというのだ。

俺では満足に面倒を見られるかも不安なのだが、一体ザックはその相手にどんな話をしたというのだろうか…
俺はひとまず自信がない事を含め、ザックがそう望むならも承諾する旨の返事を書いた。

すると、数日後に承諾を感謝する内容の手紙が届いた。ついでに、その友人とやらは少し傲慢であること、だが恐らくは俺にとっても悪い話ではないことも書かれていた。

一体友人とは誰なのだろうか。ひとまずは両親にそのことを伝えて伯爵家でもてなす準備を進めるが、社交の経験が少ない俺が外国の貴族をもてなすなどかなり不安だ。

来週にはこちらに到着するらしく、俺はカインにアドバイスを貰いながら準備を行なった。


ーー


そして、次の週の終わりにその客がやってきた。

「今日から世話になるヘンリー・ブレアムだ。よろしく頼む。」

なんでも彼は南にある大国の伯爵家の人間なのだという。赤い髪にエメラルドグリーンの瞳が力強い印象を与える。

お忍びの格好でありながらかなりキラキラした印象の彼に、てっきりもっと爵位の高い人間かと思っていたので同程度でホッとした。

「よろしくお願いします。この度ヘンダーソン公爵からの依頼で案内役を務めさせていただきます。テイト・アーデンです。」
「ふむ…なるほどそなたが…」

ヘンリーは俺のことをじっと見つめてそう呟いた。

「あの、何か?」
「いや、何でもない。それよりそんなに畏まらなくても良い。もっと気楽に話してくれ。」
「は、はぁ…わかりました。」

同じ伯爵家なんだよな?と思いつつ彼の言葉に頷いて見せる。ザックが少し傲慢なところがあると言っていたのはこういうことだろうか。

まあ実際彼の国の方が大国なので立場は向こうが上ではあるのだが。

「今日は疲れた。早速で悪いが休ませてくれ。」
「畏まりました。それでは部屋に案内いたします。」 

俺はそう言ってヘンリーのために用意した部屋へと案内しようとする。

「いや、用意してもらったところ悪いが、私は君と同じ部屋にしてくれないか?」
「え?俺と同じ部屋、ですか?」
「ああ、その方が色々とわかるのでな。」

彼の言葉を理解できずに疑問符を浮かべていると、カインが助け舟を出してくれた。

「それならヘンリー様とテイトは僕たちの部屋でお休みになられては?」
「2つベッドがあるのはあの部屋ぐらいだからな。そうさせてもらうか…それじゃあカインが代わりに来賓室を使ってくれ。」
「いや…僕はもう一つのテイトの部屋を使わせてもらうよ。なかなかない機会だし。」

あえて居心地が悪い部屋を選ぶなんてと思ったが、今は客人の前だ。俺は頷いて改めてヘンリーを自室に案内した。

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