【完結】欠陥品と呼ばれていた伯爵令息だけど、なぜか年下の公爵様に溺愛される

ゆう

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そのまま眠ってしまった俺は翌日の早朝に目を覚ました。体もだいぶ楽になっている。

俺はザックを起こさないようベッドから出て着替えを済まし、荷物をまとめ始めた。

「テイト…?何をしているんですか?」

目を覚ましたザックが俺の行動を見咎める。

「ザック、起きたか。俺…伯爵家に戻ろうと思う。」

するとザックは眠気が吹っ飛んだようにガバッと身を起こした。

「な、なぜ!?昨日私が何か?」
「いや、そんなんじゃないって。婚約が認められてないのにここに居続けたら余計なトラブルが起きるだろ。」

以前ジョフリー王子に言われた事を思い出す。彼の言葉を鵜呑みにするわけではないが、確かに俺が公爵家に居座り続けるのは他の貴族たちから悪意を向けられる原因になる。

だから一度ここを離れようと思ったのだ。

「そんなの私がなんとか…!」
「ザック。お前にばかり負担をかけたくない。それに、後少しの辛抱なんだろ?」
「そうですけど…」
「俺は、お前のことを信じてるから。」

苦い表情で唇を噛み締めたザックだったが、そう言ってやれば瞳に光が戻る。

「わかり、ました…できる限り早く準備を整えて迎えにいきます。」
「ああ、待ってるよ。あと、離れたからって浮気するなよ?」
「そんなの当たり前です!テイトこそ、また変な考えに囚われないでくださいよ?」
「ああ、もう大丈夫だ。」

俺は安心しろと言ってザックの頭をくしゃくしゃに撫でる。そうすればザックもいくらか落ち着いて、別れを惜しむように抱擁をしてきた。


そうして俺は後ろ髪を引かれる思いで公爵邸を後にした。


ーーー

「テイト!」

伯爵家に帰るなりカインが抱きついてきた。

「ホイットリー侯爵のこと聞いたよ。大丈夫だった?」
「ああ、そのことか…」

彼がしようとした事はもう噂になっているんだったか。あいつの評判など知ったことではないが、その被害を被った相手が俺だと知られてしまっているのはなんとも居心地が悪い。

「まあなんだ…未遂だから大丈夫だよ。」

本当は精神的に全く大丈夫ではなかったが、あいつのせいで傷ついたなどと思われたくない。

「そっか…良かった、本当に…」

カインはそう言って泣き出しそうな勢いで俺を抱きしめた。


「テイト。」

すると、今度は頭上から別の声がした。それに反応するように顔を上げると、そこには青褪めた顔のお父様とお母様がいた。

「あんなやつとの婚約を勧めて悪かった…大丈夫か?」
「あなたが無事に帰ってくれて本当に良かったわ…ヘンダーソン公爵には何て感謝すれば良いか…」

2人の言葉は本当に俺のことを心配してのもののようだった。

「あー…えっと、ご心配をおかけしました?」

あの婚約話を勧めてきた時はやはり俺より家のことが大事なのだと思ったのに、心から心配しているような態度に反応に困ってしまう。

なんでも2人はホイットリー侯爵も少なからず俺のことを大切にしてくれると思っていたのだという。それがあんなことになって俺に婚約を勧めたことを後悔したというのだ。

「それで、今回はなぜ戻ってきたんだ?公爵はどうした?」

お父様に矢継ぎ早に質問され、俺は無用なトラブルを避けるため一度戻ってきたとだけ伝えた。

「そうか…それならことが落ち着くまでゆっくりすると良い。もうお前に何かを強要したりしない。」
「テイト。必要なものがあったら何でも言ってね。」

両親はそう言って戻って行った。その2人の背を何とも言えない気持ちで見送る。

ザックが俺を迎えに来るだろう事は伝えていないので、両親はきっと俺を結婚させることを諦めたのだろう。

「ほら、じゃあ部屋でゆっくり休もう?僕としては、また帰ってきてくれて嬉しいよ。」

唯一カインだけが心から嬉しそうな声でそう言い、俺はカインと2人かつての2人部屋へと向かった。

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