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本編
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朝食を済ませた後、俺は洗いざらいあんな行動に至った経緯を話させられた。
「私がいない間にそんなことが…守ることができずすいません…」
「いや、お前だって俺とずっと一緒に居られるわけじゃないんだから。あいつらの言葉を信じた俺が悪いんだ。」
「テイト…」
それらしい言葉に惑わされて逃げ出したのは俺だ。自分は強くなったつもりでいたのに、こんなにも弱かったなんて。
肩を落とせば、ザックは辛そうな顔をして俺の手を握る。
「それにしても、スコット伯爵子息といい、ジョフリー王子といい、私のテイトになんてことを…」
「私のって…でもあいつらが言ってるのことの方が一般論だから…」
「一般論なんて知ったことではありません。私たちの気持ちが全てです。」
そしてザックは「そのところちゃんと理解してくださいね?」と有無を言わさない笑顔を浮かべた。
「ホイットリー侯爵は先日の一件が社交界で噂になって評判も地に落ちたでしょうし、もうご家族が婚約を勧めてくることもないでしょう。」
「ああ…俺もあの人は流石に無理だ。」
「当然です。本気で検討しないでください。」
ザックは子供のようにむくれてそう言い放つ。
「それより今後も心配なのはスコット伯爵子息と王子ですね…子息に関してはテイトがせっかく刺繍してくれたハンカチをよくも…」
そう言ってポケットからハンカチを取り出す。一度洗ったようで汚れはかなり落ちていたが、それでも少しくすんだような染みが残っていた。
「それ、持っててくれてたのか。」
改めて見ると、いっそ捨ててくれていればと思うほど下手な刺繍だ。
その上に汚れまでついてしまったというのに、ザックはそのハンカチを宝物のように握りしめる。
「当然でしょう?初めてテイトから貰ったプレゼントですよ。」
そう言われて俺は彼に何も贈り物をしたことがなかったことに気づく。ザックには色々してもらっていたのに悪い事をしただろうか。
「あっ。」
そういえば、もうすぐザックの誕生日ではないか。これは、今まで貰った分を返すチャンスだ。
ずっと果たせなかった約束を今度こそ果たそう。
「テイト?」
「悪い、何でもない。」
気が逸れたところでザックに意識を戻される。誕生日については驚かせたいから、なるべく密かに準備をしよう。
「そうですか?あ、あとスコット子息については任せてください。私に考えがあります。」
「何をするつもりなんだ…」
「そのうちわかりますよ。テイトを傷つけておいてのうのうと元の生活に戻るなんて許せませんから。」
楽しそうに悪い笑みを浮かべたザックに、少し恐怖を覚える。昔は弱々しい少年だったのに随分貴族らしくなったものだ。
「あとは王子か…」
「おい、別に仕返しなんてしなくても…」
「いいえ、私の気持ちが収まりません。移住の準備が整うまでにもう少し時間があります。その間に一泡吹かせてやりましょう。」
やる気たっぷりにそう言ったザックに、俺は早々に制止を諦めた。まあ、王太子相手にそんな大層なことはしでかさないだろう。
「勝手にしろ。でも…危ないことはするなよ。」
「心配してくれるんですか?やっぱり、王家の承認なんか無視して婚約だけでも…」
目を輝かせたザックの額を軽くデコピンしてやる。「痛っ」と目を瞑る様は子供の頃と変わらなくて少し可笑しい。
「まだ半年経ってない。」
「それまだ有効なんですね…今ならいけると思ったのに…」
額をさすりながら小さく呟いたザックは、肩を落として俺の隣に座った。
「仕方ないですね…後少し辛抱します。移住すれば堂々と婚約出来ますし。まあ…テイトにもしばらく辛い想いをさせてしまいますが。」
「そんなことは良い。それに、お前が国も爵位も捨てて俺と生きたいと言ってくれたことは、嬉しかったし…」
だんだん尻すぼみになりながら俺がそう口にすれば、ザックは目をぱちくりさせた後吹き出すように笑った。
「ふふっ、テイトがデレた。」
「なっ、デレてない!」
少し素直に感謝してみればザックはからかいながら抱きついてくる。俺はムカついてもう一度デコピンをしてやろうと手を伸ばしたが、その手はザックに掴まれてしまった。
「そう何度も食らいませんよ。」
「ちっ、可愛くないな。」
「酷いですね。僕はこんなこにテイトのことを可愛いと思ってるのに。」
そう言ってキスをしてきたザックはそのまま俺を道連れに倒れ込むようにベッドに横になった。
「おいっ!今日はやらないからな?」
「分かってますよ。少しこうさせてください。」
そして、ザックは俺を抱え込むように抱き直した。
「はぁ…こうしてると、テイトを取り戻したんだって実感する。」
俺は返す言葉が見つからず、同意するようにザックの胸に頭を押し付けた。頭上でザックの笑った声がして頭を撫でられる。
これではどちらが歳上かわからない。そう感じて釈然としない気持ちのまま横になっていると、彼からすやすやと寝息が聞こえてきた。
そっと顔を上げてザックの寝顔を見る。こうしているとまるででかい子供みたいだ。俺はザックを起こさないようそっと髪を指で鋤き、同じ様にに目を閉じた。
「私がいない間にそんなことが…守ることができずすいません…」
「いや、お前だって俺とずっと一緒に居られるわけじゃないんだから。あいつらの言葉を信じた俺が悪いんだ。」
「テイト…」
それらしい言葉に惑わされて逃げ出したのは俺だ。自分は強くなったつもりでいたのに、こんなにも弱かったなんて。
肩を落とせば、ザックは辛そうな顔をして俺の手を握る。
「それにしても、スコット伯爵子息といい、ジョフリー王子といい、私のテイトになんてことを…」
「私のって…でもあいつらが言ってるのことの方が一般論だから…」
「一般論なんて知ったことではありません。私たちの気持ちが全てです。」
そしてザックは「そのところちゃんと理解してくださいね?」と有無を言わさない笑顔を浮かべた。
「ホイットリー侯爵は先日の一件が社交界で噂になって評判も地に落ちたでしょうし、もうご家族が婚約を勧めてくることもないでしょう。」
「ああ…俺もあの人は流石に無理だ。」
「当然です。本気で検討しないでください。」
ザックは子供のようにむくれてそう言い放つ。
「それより今後も心配なのはスコット伯爵子息と王子ですね…子息に関してはテイトがせっかく刺繍してくれたハンカチをよくも…」
そう言ってポケットからハンカチを取り出す。一度洗ったようで汚れはかなり落ちていたが、それでも少しくすんだような染みが残っていた。
「それ、持っててくれてたのか。」
改めて見ると、いっそ捨ててくれていればと思うほど下手な刺繍だ。
その上に汚れまでついてしまったというのに、ザックはそのハンカチを宝物のように握りしめる。
「当然でしょう?初めてテイトから貰ったプレゼントですよ。」
そう言われて俺は彼に何も贈り物をしたことがなかったことに気づく。ザックには色々してもらっていたのに悪い事をしただろうか。
「あっ。」
そういえば、もうすぐザックの誕生日ではないか。これは、今まで貰った分を返すチャンスだ。
ずっと果たせなかった約束を今度こそ果たそう。
「テイト?」
「悪い、何でもない。」
気が逸れたところでザックに意識を戻される。誕生日については驚かせたいから、なるべく密かに準備をしよう。
「そうですか?あ、あとスコット子息については任せてください。私に考えがあります。」
「何をするつもりなんだ…」
「そのうちわかりますよ。テイトを傷つけておいてのうのうと元の生活に戻るなんて許せませんから。」
楽しそうに悪い笑みを浮かべたザックに、少し恐怖を覚える。昔は弱々しい少年だったのに随分貴族らしくなったものだ。
「あとは王子か…」
「おい、別に仕返しなんてしなくても…」
「いいえ、私の気持ちが収まりません。移住の準備が整うまでにもう少し時間があります。その間に一泡吹かせてやりましょう。」
やる気たっぷりにそう言ったザックに、俺は早々に制止を諦めた。まあ、王太子相手にそんな大層なことはしでかさないだろう。
「勝手にしろ。でも…危ないことはするなよ。」
「心配してくれるんですか?やっぱり、王家の承認なんか無視して婚約だけでも…」
目を輝かせたザックの額を軽くデコピンしてやる。「痛っ」と目を瞑る様は子供の頃と変わらなくて少し可笑しい。
「まだ半年経ってない。」
「それまだ有効なんですね…今ならいけると思ったのに…」
額をさすりながら小さく呟いたザックは、肩を落として俺の隣に座った。
「仕方ないですね…後少し辛抱します。移住すれば堂々と婚約出来ますし。まあ…テイトにもしばらく辛い想いをさせてしまいますが。」
「そんなことは良い。それに、お前が国も爵位も捨てて俺と生きたいと言ってくれたことは、嬉しかったし…」
だんだん尻すぼみになりながら俺がそう口にすれば、ザックは目をぱちくりさせた後吹き出すように笑った。
「ふふっ、テイトがデレた。」
「なっ、デレてない!」
少し素直に感謝してみればザックはからかいながら抱きついてくる。俺はムカついてもう一度デコピンをしてやろうと手を伸ばしたが、その手はザックに掴まれてしまった。
「そう何度も食らいませんよ。」
「ちっ、可愛くないな。」
「酷いですね。僕はこんなこにテイトのことを可愛いと思ってるのに。」
そう言ってキスをしてきたザックはそのまま俺を道連れに倒れ込むようにベッドに横になった。
「おいっ!今日はやらないからな?」
「分かってますよ。少しこうさせてください。」
そして、ザックは俺を抱え込むように抱き直した。
「はぁ…こうしてると、テイトを取り戻したんだって実感する。」
俺は返す言葉が見つからず、同意するようにザックの胸に頭を押し付けた。頭上でザックの笑った声がして頭を撫でられる。
これではどちらが歳上かわからない。そう感じて釈然としない気持ちのまま横になっていると、彼からすやすやと寝息が聞こえてきた。
そっと顔を上げてザックの寝顔を見る。こうしているとまるででかい子供みたいだ。俺はザックを起こさないようそっと髪を指で鋤き、同じ様にに目を閉じた。
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