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本編
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「おはようございますテイト。」
「おはよ…」
「昨日は最高に可愛かったですね。」
目が覚めると、目の前にニヤついたザックの顔があった。ザックのことは大好きだがこの顔は腹立たしい。
「…覚えてない。」
「ええ、意識が飛んでしまうくらい抱き潰してしまいましたからね。でも、最後の方はテイトからもっと欲しいって強請ってくれて嬉しかったなぁ。」
「なっ!俺はそんなこと言ってないだろ!」
最後の方は息も絶え絶えだったのだ。多少…善がっていたかもしれないがそんな恥ずかしいことは言っていない。
「あれ、覚えてないんじゃないんですか?」
意地の悪い笑みを浮かべたザックに、嵌められたことを理解する。
「うぅ…頼むから、昨日のことは忘れろ…」
結果的にザックが自分を手放すつもりがないのだと知れたことはよかったが、昨日の行為を思い出すと顔から火が出そうになる。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、ザックは楽しそうに俺の頬を撫でてきた。
「そんなこと出来るわけないでしょう?目に焼き付けました。」
「最悪だ…」
「最高の間違いでしょう?僕も初めてのことで上手く出来るか不安でしたが、あんなに善がってくれるなんて…」
「それ以上言うな!」
俺は聞きたくないとばかりにザックの口を左手で塞ぐ。するとザックは俺の手首を掴んで手のひらにキスをしてきた。
「ふふっ、これ以上はテイトが拗ねてしまいそうなのでやめておきます。でもこれで私がどれだけあなたを愛しているか分かったでしょう?」
「うっ、それは…」
耳元で囁かれた言葉に体が熱くなるのを感じて目を逸らす。抱かれている間ずっと愛を囁かれていたのだ。それこそ一生分の言葉ではないかと思えるくらいに…
あれを聞けば、ザックが同情で俺を助けようとしているなどとは思えなくなった。
「まだ足りなかったですか?それなら今日も…」
「い、いや!十分わかった!」
「それなら良かった。では、二度と勝手に私から離れたりしないという約束は絶対ですから。破ったら怖いですよ?」
「それは…俺が悪かったよ。もう勝手にいなくなったりしないから安心しろ。」
そう言うとザックは子供の頃のような無邪気な笑顔で笑った。
「分かってもらえて安心しました。もし次同じことをされたら、鎖で繋いでても私から離れられないようにしてしまいそうですから。」
「怖いこと言うなよ…」
「怖いと思うならそんなことをさせないよう気をつけて下さいね?」
そう悪戯っぽく笑ったザックは、俺を抱き起こして服を渡してくれた。
俺はしおらしく頷いてみせ、その服に着替えようとしたのだが…
立ち上ろうとしてよろけてしまった。
「おっと。大丈夫ですか?」
「立てない…」
腰が痛くてとても立っていられない。
「あー…昨日やりすぎちゃいましたかね?」
「あんなの、やりすぎに決まってるだろ…!どうしてくれるんだ。」
こんなの今日は寝たきりで過ごすほかなさそうだ。そう思って恨みがましくザックを見れば、彼は何を思ったのか嬉しそうに顔を上げた。
「分かりました!今日は責任を持って私がテイトの世話をします。」
「は?そういうことを言ってんるじゃ…」
「ほら、まずは着替えましょう。」
俺の言葉を聞かずザックは俺の服を脱がしにかかる。
「着替えくらいはなんとか出来る。」
「無理しないでください。元はといえば私のせいですから。」
早口でそう言ったザックにあっという間に服を脱がされてしまう。俺は腰の痛みも相まって、渋々ザックにされるがままベッドに腰掛ける。
「はぁ…やっぱり今日もしたい…」
だがザックはなかなか服を着せてくれず、そんなことを呟いた。
「き、今日は絶対無理だからな!」
不穏な言葉に俺は慌ててザックを引き剥がした。こんな状態で再びあんなことをすれば腰が死んでしまう。
「今日じゃなかったら良いんですか?」
揚げ足を取るようなザックの返しに俺は言葉に詰まった。
正直相手がザックならまたあんなことになっても良い。だがそれを口で言うのはあまりにも恥ずかしかった。
「それは…」
「嫌ですか?」
「ぐっ…次は、もっと優しくしてくれ…」
辛うじてそう言ってやるとザックは顔をパァッと輝かせた。
「頑張ります!」
そのイエスに満たない返事に不安を覚えるが、ザックが自分を求めてくれることを嬉しいと思ってしまう。
「はぁ…分かったから早く服を着せてくれよ。」
「あっ、そうだった。すいません。」
すっかり俺の服の事を忘れていたザックが思い出したように着替えを手伝ってくれる。
「ふふ、テイトの世話が出来るなんて幸せです。」
「お前は本当に変なやつだな。」
「これが私にとっての幸せなんです。そのことを少しずつで良いので自覚していって下さいね?」
優しく微笑んだザックだが、その言葉には有無を言わさない強さがあった。
「わかったよ…」
俺は恥ずかしくなって咄嗟にフードを掴もうとした。今はローブを着ていないというのに、すっかり癖になっているようだ。
ザックはその行動に苦笑して俺の手を取った。
「移住したら堂々と皆に僕の可愛い婚約者を見せびらかせるので、楽しみです。」
「可愛いって…お前にしか言われた事ないぞ。どんなフィルターがかかってるんだ。」
「この国の人間の見る目がないだけで僕は至って普通です。」
そして、今度は打って変わって真剣な表情になる。
「それから…テイトが僕から離れようとした理由はわかりました。でもそうしようと思ったきっかけがあるのですよね?そのことも話してください。」
「それは…」
「でも、まずは朝食にしましょうか。もう昼近いですからね。話はその後ゆっくり聞かせてもらいます。」
有無を言わさずそう言ったザックは、俺を抱え上げて食堂へと連れて行った。
「おはよ…」
「昨日は最高に可愛かったですね。」
目が覚めると、目の前にニヤついたザックの顔があった。ザックのことは大好きだがこの顔は腹立たしい。
「…覚えてない。」
「ええ、意識が飛んでしまうくらい抱き潰してしまいましたからね。でも、最後の方はテイトからもっと欲しいって強請ってくれて嬉しかったなぁ。」
「なっ!俺はそんなこと言ってないだろ!」
最後の方は息も絶え絶えだったのだ。多少…善がっていたかもしれないがそんな恥ずかしいことは言っていない。
「あれ、覚えてないんじゃないんですか?」
意地の悪い笑みを浮かべたザックに、嵌められたことを理解する。
「うぅ…頼むから、昨日のことは忘れろ…」
結果的にザックが自分を手放すつもりがないのだと知れたことはよかったが、昨日の行為を思い出すと顔から火が出そうになる。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、ザックは楽しそうに俺の頬を撫でてきた。
「そんなこと出来るわけないでしょう?目に焼き付けました。」
「最悪だ…」
「最高の間違いでしょう?僕も初めてのことで上手く出来るか不安でしたが、あんなに善がってくれるなんて…」
「それ以上言うな!」
俺は聞きたくないとばかりにザックの口を左手で塞ぐ。するとザックは俺の手首を掴んで手のひらにキスをしてきた。
「ふふっ、これ以上はテイトが拗ねてしまいそうなのでやめておきます。でもこれで私がどれだけあなたを愛しているか分かったでしょう?」
「うっ、それは…」
耳元で囁かれた言葉に体が熱くなるのを感じて目を逸らす。抱かれている間ずっと愛を囁かれていたのだ。それこそ一生分の言葉ではないかと思えるくらいに…
あれを聞けば、ザックが同情で俺を助けようとしているなどとは思えなくなった。
「まだ足りなかったですか?それなら今日も…」
「い、いや!十分わかった!」
「それなら良かった。では、二度と勝手に私から離れたりしないという約束は絶対ですから。破ったら怖いですよ?」
「それは…俺が悪かったよ。もう勝手にいなくなったりしないから安心しろ。」
そう言うとザックは子供の頃のような無邪気な笑顔で笑った。
「分かってもらえて安心しました。もし次同じことをされたら、鎖で繋いでても私から離れられないようにしてしまいそうですから。」
「怖いこと言うなよ…」
「怖いと思うならそんなことをさせないよう気をつけて下さいね?」
そう悪戯っぽく笑ったザックは、俺を抱き起こして服を渡してくれた。
俺はしおらしく頷いてみせ、その服に着替えようとしたのだが…
立ち上ろうとしてよろけてしまった。
「おっと。大丈夫ですか?」
「立てない…」
腰が痛くてとても立っていられない。
「あー…昨日やりすぎちゃいましたかね?」
「あんなの、やりすぎに決まってるだろ…!どうしてくれるんだ。」
こんなの今日は寝たきりで過ごすほかなさそうだ。そう思って恨みがましくザックを見れば、彼は何を思ったのか嬉しそうに顔を上げた。
「分かりました!今日は責任を持って私がテイトの世話をします。」
「は?そういうことを言ってんるじゃ…」
「ほら、まずは着替えましょう。」
俺の言葉を聞かずザックは俺の服を脱がしにかかる。
「着替えくらいはなんとか出来る。」
「無理しないでください。元はといえば私のせいですから。」
早口でそう言ったザックにあっという間に服を脱がされてしまう。俺は腰の痛みも相まって、渋々ザックにされるがままベッドに腰掛ける。
「はぁ…やっぱり今日もしたい…」
だがザックはなかなか服を着せてくれず、そんなことを呟いた。
「き、今日は絶対無理だからな!」
不穏な言葉に俺は慌ててザックを引き剥がした。こんな状態で再びあんなことをすれば腰が死んでしまう。
「今日じゃなかったら良いんですか?」
揚げ足を取るようなザックの返しに俺は言葉に詰まった。
正直相手がザックならまたあんなことになっても良い。だがそれを口で言うのはあまりにも恥ずかしかった。
「それは…」
「嫌ですか?」
「ぐっ…次は、もっと優しくしてくれ…」
辛うじてそう言ってやるとザックは顔をパァッと輝かせた。
「頑張ります!」
そのイエスに満たない返事に不安を覚えるが、ザックが自分を求めてくれることを嬉しいと思ってしまう。
「はぁ…分かったから早く服を着せてくれよ。」
「あっ、そうだった。すいません。」
すっかり俺の服の事を忘れていたザックが思い出したように着替えを手伝ってくれる。
「ふふ、テイトの世話が出来るなんて幸せです。」
「お前は本当に変なやつだな。」
「これが私にとっての幸せなんです。そのことを少しずつで良いので自覚していって下さいね?」
優しく微笑んだザックだが、その言葉には有無を言わさない強さがあった。
「わかったよ…」
俺は恥ずかしくなって咄嗟にフードを掴もうとした。今はローブを着ていないというのに、すっかり癖になっているようだ。
ザックはその行動に苦笑して俺の手を取った。
「移住したら堂々と皆に僕の可愛い婚約者を見せびらかせるので、楽しみです。」
「可愛いって…お前にしか言われた事ないぞ。どんなフィルターがかかってるんだ。」
「この国の人間の見る目がないだけで僕は至って普通です。」
そして、今度は打って変わって真剣な表情になる。
「それから…テイトが僕から離れようとした理由はわかりました。でもそうしようと思ったきっかけがあるのですよね?そのことも話してください。」
「それは…」
「でも、まずは朝食にしましょうか。もう昼近いですからね。話はその後ゆっくり聞かせてもらいます。」
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