【完結】欠陥品と呼ばれていた伯爵令息だけど、なぜか年下の公爵様に溺愛される

ゆう

文字の大きさ
上 下
71 / 101
本編

71

しおりを挟む
「おはようございますテイト。」
「おはよ…」
「昨日は最高に可愛かったですね。」

目が覚めると、目の前にニヤついたザックの顔があった。ザックのことは大好きだがこの顔は腹立たしい。

「…覚えてない。」
「ええ、意識が飛んでしまうくらい抱き潰してしまいましたからね。でも、最後の方はテイトからもっと欲しいって強請ってくれて嬉しかったなぁ。」
「なっ!俺はそんなこと言ってないだろ!」

最後の方は息も絶え絶えだったのだ。多少…善がっていたかもしれないがそんな恥ずかしいことは言っていない。

「あれ、覚えてないんじゃないんですか?」

意地の悪い笑みを浮かべたザックに、嵌められたことを理解する。

「うぅ…頼むから、昨日のことは忘れろ…」

結果的にザックが自分を手放すつもりがないのだと知れたことはよかったが、昨日の行為を思い出すと顔から火が出そうになる。

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、ザックは楽しそうに俺の頬を撫でてきた。

「そんなこと出来るわけないでしょう?目に焼き付けました。」
「最悪だ…」
「最高の間違いでしょう?僕も初めてのことで上手く出来るか不安でしたが、あんなに善がってくれるなんて…」
「それ以上言うな!」

俺は聞きたくないとばかりにザックの口を左手で塞ぐ。するとザックは俺の手首を掴んで手のひらにキスをしてきた。

「ふふっ、これ以上はテイトが拗ねてしまいそうなのでやめておきます。でもこれで私がどれだけあなたを愛しているか分かったでしょう?」
「うっ、それは…」

耳元で囁かれた言葉に体が熱くなるのを感じて目を逸らす。抱かれている間ずっと愛を囁かれていたのだ。それこそ一生分の言葉ではないかと思えるくらいに…

あれを聞けば、ザックが同情で俺を助けようとしているなどとは思えなくなった。

「まだ足りなかったですか?それなら今日も…」
「い、いや!十分わかった!」
「それなら良かった。では、二度と勝手に私から離れたりしないという約束は絶対ですから。破ったら怖いですよ?」
「それは…俺が悪かったよ。もう勝手にいなくなったりしないから安心しろ。」

そう言うとザックは子供の頃のような無邪気な笑顔で笑った。

「分かってもらえて安心しました。もし次同じことをされたら、鎖で繋いでても私から離れられないようにしてしまいそうですから。」
「怖いこと言うなよ…」
「怖いと思うならそんなことをさせないよう気をつけて下さいね?」

そう悪戯っぽく笑ったザックは、俺を抱き起こして服を渡してくれた。

俺はしおらしく頷いてみせ、その服に着替えようとしたのだが…

立ち上ろうとしてよろけてしまった。

「おっと。大丈夫ですか?」
「立てない…」

腰が痛くてとても立っていられない。

「あー…昨日やりすぎちゃいましたかね?」
「あんなの、やりすぎに決まってるだろ…!どうしてくれるんだ。」

こんなの今日は寝たきりで過ごすほかなさそうだ。そう思って恨みがましくザックを見れば、彼は何を思ったのか嬉しそうに顔を上げた。

「分かりました!今日は責任を持って私がテイトの世話をします。」
「は?そういうことを言ってんるじゃ…」
「ほら、まずは着替えましょう。」

俺の言葉を聞かずザックは俺の服を脱がしにかかる。

「着替えくらいはなんとか出来る。」
「無理しないでください。元はといえば私のせいですから。」

早口でそう言ったザックにあっという間に服を脱がされてしまう。俺は腰の痛みも相まって、渋々ザックにされるがままベッドに腰掛ける。

「はぁ…やっぱり今日もしたい…」

だがザックはなかなか服を着せてくれず、そんなことを呟いた。

「き、今日は絶対無理だからな!」

不穏な言葉に俺は慌ててザックを引き剥がした。こんな状態で再びあんなことをすれば腰が死んでしまう。

「今日じゃなかったら良いんですか?」

揚げ足を取るようなザックの返しに俺は言葉に詰まった。
正直相手がザックならまたあんなことになっても良い。だがそれを口で言うのはあまりにも恥ずかしかった。

「それは…」
「嫌ですか?」
「ぐっ…次は、もっと優しくしてくれ…」

辛うじてそう言ってやるとザックは顔をパァッと輝かせた。

「頑張ります!」

そのイエスに満たない返事に不安を覚えるが、ザックが自分を求めてくれることを嬉しいと思ってしまう。

「はぁ…分かったから早く服を着せてくれよ。」
「あっ、そうだった。すいません。」

すっかり俺の服の事を忘れていたザックが思い出したように着替えを手伝ってくれる。

「ふふ、テイトの世話が出来るなんて幸せです。」
「お前は本当に変なやつだな。」
「これが私にとっての幸せなんです。そのことを少しずつで良いので自覚していって下さいね?」

優しく微笑んだザックだが、その言葉には有無を言わさない強さがあった。

「わかったよ…」

俺は恥ずかしくなって咄嗟にフードを掴もうとした。今はローブを着ていないというのに、すっかり癖になっているようだ。

ザックはその行動に苦笑して俺の手を取った。

「移住したら堂々と皆に僕の可愛い婚約者を見せびらかせるので、楽しみです。」
「可愛いって…お前にしか言われた事ないぞ。どんなフィルターがかかってるんだ。」
「この国の人間の見る目がないだけで僕は至って普通です。」

そして、今度は打って変わって真剣な表情になる。

「それから…テイトが僕から離れようとした理由はわかりました。でもそうしようと思ったきっかけがあるのですよね?そのことも話してください。」
「それは…」
「でも、まずは朝食にしましょうか。もう昼近いですからね。話はその後ゆっくり聞かせてもらいます。」

有無を言わさずそう言ったザックは、俺を抱え上げて食堂へと連れて行った。
しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

拾われた後は

なか
BL
気づいたら森の中にいました。 そして拾われました。 僕と狼の人のこと。 ※完結しました その後の番外編をアップ中です

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

処理中です...