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本編
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そうして翌朝。
「テイト、戻ってきたなら挨拶くらいしに来んか。」
「すいません、疲れていたもので。」
使用人の誰かがお父様に俺のことを報告したらしく、呼び出しを食らっていた。流石にこっそり滞在することはできなかったか、と心の中でため息をつく。
「まあ、いい。ちょうど話したいこともあったしな。」
「話したいこと?」
「お前は公爵との婚約の許可が出なかった、そうだろう?」
「それは・・・はい・・・」
当然アーデン家にもその知らせは届いていたらしい。お父様が何を言い出す気なのか緊張して次の言葉を待つ。
「そのことは非常に残念だったな・・・だが喜ばしい知らせがある。代わりにホイットリー侯爵から婚約の打診があったのだ。」
「ホイットリー侯爵?」
あの人は家にまで連絡をしていたのか。てっきり揶揄われたのかと思っていたが・・・
「そうだ。侯爵は既に結婚しているのでお前は妾の立場になるが・・・それであれば王家からの許可も出るし、社交などの役割を負う必要もない。」
「でも侯爵はかなり年上で・・・」
「まあ、それはそうだが、公爵と結婚できないとなったらお前は一生カインに頼って生きていく事になるのだぞ?以前はそれで仕方がないかと考えていたが今は侯爵家に嫁ぐという選択肢がある。」
俺はお父様が何を言わんとしているのかを理解した。ザックと結婚できないなら俺はお荷物に逆戻り。それならいっそ、妾でもなんでも俺を欲しいと言ってくれる人に嫁いだ方がいいということだろう。
「お父様は・・・俺に侯爵に嫁いで欲しいのですか?」
「確かに彼は年上だし好ましい人間とは言えないかもしれないが・・・カイン、そして家のためには嫁いでくれた方がありがたい。それに、これはお前のためにもなると思っている。」
「そう、ですか・・・」
確かに家のためカインのためと言われると納得せざるを得ない。ザックとの婚約の話があったから俺はまだアーデン家の一員であるのであって、その話がなければ家族と縁を切って平民になっていたはずだ。
今でもその選択肢はなくはないが、反対に侯爵と結婚するという選択肢が生まれた。再びアーデン家の欠陥品に戻った俺を欲しいと言ってくれる物好きがいたのだ。その話を受けた方がアーデン家にとっては利のある話だろう。
俺が承諾さえすれば、全て綺麗に収まる。ザックもアーデン家も幸せだ。
「俺は・・・」
それでもすんなりと承諾の言葉を口に出すことができなかった。頭ではそれが最善だと理解しているのに、心が拒絶している様だ。
「まあ、今すぐに答えなくても良い。侯爵のこともよく知らないだろう?夜会への誘いが来ているのだ。まずはそこに一緒に行ってお互いを知ったらどうだ?」
そうだ、俺は侯爵をよく知らない。パーティーでの印象はあまりよくはないが、もう一度話してみればそこまで悪い人ではないかも・・・それに妾なら結婚しても常に一緒にいるわけではない。嫌な人間だったとしても我慢できるレベルならなんとかなるはずだ。
「わかりました。」
そうして俺は侯爵の誘いを受ける事にした。
「よかった。既に侯爵からお前宛に服が届いているのだ。夜会は明日だからそれを着ていくといい。」
そうしてお父様はもう話すことはないからと俺に退出を促した。昨日の今日で別の人間との婚約の話になるなど正直戸惑いはあるが、ザックのことを忘れようとするなら悪い話ではないかもしれない。
俺はその届いている服というのを確認するため部屋へと戻った。
ーーー
その後、執務室にて・・・。
「あなた、本当に公爵様からの手紙を渡さなくてよかったの?」
妻が引き出しに仕舞われた手紙を見つめながらそんなことを呟く。今朝朝一で届いた公爵からの手紙にはテイトを心配する言葉と面会の希望、それから愛を囁く言葉が綴られていた。
「今はまだ渡すべきではないだろう。あれを見たらテイトは侯爵との婚約の話を考えないかもしれない。現実的な選択肢としては侯爵との婚約の話を受けるのが最も良いからな。」
「それはそうでしょうけど・・・公爵様は婚約が許されなくてもテイトを深く愛してくださってる。そちらの方がテイトも・・・」
「アイリス。貴族の結婚に愛は必ずしも必要なものではない。」
公爵は婚約を許可されなかったというのにテイトとどうなろうと言うのだろう。確かに今は愛があるかもしれないがそれがずっと続くかはわからない。ましてや結婚という制約もない状態では・・・それにテイトは公爵邸を出て家へ帰ってきた。
つまりは何か二人を引き離すものがあったということだ。
「とにかく、まずはテイトと侯爵を会わせてみよう。わざわざ婚約を申し込んできたのだ。大切にしてくれるだろう。」
「・・・そう、よね。侯爵もテイトのことが好きなのだろうし、きっと大事にしてくれるわよね。」
そうして私たちはその話を終えた。
「テイト、戻ってきたなら挨拶くらいしに来んか。」
「すいません、疲れていたもので。」
使用人の誰かがお父様に俺のことを報告したらしく、呼び出しを食らっていた。流石にこっそり滞在することはできなかったか、と心の中でため息をつく。
「まあ、いい。ちょうど話したいこともあったしな。」
「話したいこと?」
「お前は公爵との婚約の許可が出なかった、そうだろう?」
「それは・・・はい・・・」
当然アーデン家にもその知らせは届いていたらしい。お父様が何を言い出す気なのか緊張して次の言葉を待つ。
「そのことは非常に残念だったな・・・だが喜ばしい知らせがある。代わりにホイットリー侯爵から婚約の打診があったのだ。」
「ホイットリー侯爵?」
あの人は家にまで連絡をしていたのか。てっきり揶揄われたのかと思っていたが・・・
「そうだ。侯爵は既に結婚しているのでお前は妾の立場になるが・・・それであれば王家からの許可も出るし、社交などの役割を負う必要もない。」
「でも侯爵はかなり年上で・・・」
「まあ、それはそうだが、公爵と結婚できないとなったらお前は一生カインに頼って生きていく事になるのだぞ?以前はそれで仕方がないかと考えていたが今は侯爵家に嫁ぐという選択肢がある。」
俺はお父様が何を言わんとしているのかを理解した。ザックと結婚できないなら俺はお荷物に逆戻り。それならいっそ、妾でもなんでも俺を欲しいと言ってくれる人に嫁いだ方がいいということだろう。
「お父様は・・・俺に侯爵に嫁いで欲しいのですか?」
「確かに彼は年上だし好ましい人間とは言えないかもしれないが・・・カイン、そして家のためには嫁いでくれた方がありがたい。それに、これはお前のためにもなると思っている。」
「そう、ですか・・・」
確かに家のためカインのためと言われると納得せざるを得ない。ザックとの婚約の話があったから俺はまだアーデン家の一員であるのであって、その話がなければ家族と縁を切って平民になっていたはずだ。
今でもその選択肢はなくはないが、反対に侯爵と結婚するという選択肢が生まれた。再びアーデン家の欠陥品に戻った俺を欲しいと言ってくれる物好きがいたのだ。その話を受けた方がアーデン家にとっては利のある話だろう。
俺が承諾さえすれば、全て綺麗に収まる。ザックもアーデン家も幸せだ。
「俺は・・・」
それでもすんなりと承諾の言葉を口に出すことができなかった。頭ではそれが最善だと理解しているのに、心が拒絶している様だ。
「まあ、今すぐに答えなくても良い。侯爵のこともよく知らないだろう?夜会への誘いが来ているのだ。まずはそこに一緒に行ってお互いを知ったらどうだ?」
そうだ、俺は侯爵をよく知らない。パーティーでの印象はあまりよくはないが、もう一度話してみればそこまで悪い人ではないかも・・・それに妾なら結婚しても常に一緒にいるわけではない。嫌な人間だったとしても我慢できるレベルならなんとかなるはずだ。
「わかりました。」
そうして俺は侯爵の誘いを受ける事にした。
「よかった。既に侯爵からお前宛に服が届いているのだ。夜会は明日だからそれを着ていくといい。」
そうしてお父様はもう話すことはないからと俺に退出を促した。昨日の今日で別の人間との婚約の話になるなど正直戸惑いはあるが、ザックのことを忘れようとするなら悪い話ではないかもしれない。
俺はその届いている服というのを確認するため部屋へと戻った。
ーーー
その後、執務室にて・・・。
「あなた、本当に公爵様からの手紙を渡さなくてよかったの?」
妻が引き出しに仕舞われた手紙を見つめながらそんなことを呟く。今朝朝一で届いた公爵からの手紙にはテイトを心配する言葉と面会の希望、それから愛を囁く言葉が綴られていた。
「今はまだ渡すべきではないだろう。あれを見たらテイトは侯爵との婚約の話を考えないかもしれない。現実的な選択肢としては侯爵との婚約の話を受けるのが最も良いからな。」
「それはそうでしょうけど・・・公爵様は婚約が許されなくてもテイトを深く愛してくださってる。そちらの方がテイトも・・・」
「アイリス。貴族の結婚に愛は必ずしも必要なものではない。」
公爵は婚約を許可されなかったというのにテイトとどうなろうと言うのだろう。確かに今は愛があるかもしれないがそれがずっと続くかはわからない。ましてや結婚という制約もない状態では・・・それにテイトは公爵邸を出て家へ帰ってきた。
つまりは何か二人を引き離すものがあったということだ。
「とにかく、まずはテイトと侯爵を会わせてみよう。わざわざ婚約を申し込んできたのだ。大切にしてくれるだろう。」
「・・・そう、よね。侯爵もテイトのことが好きなのだろうし、きっと大事にしてくれるわよね。」
そうして私たちはその話を終えた。
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