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本編
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人混みが目に入らないところまでやってきて息をつく。いつのまにか額に滲んだ嫌な汗を拭って顔を上げた。
「ふん、公爵様に庇ってもらえるなんてね。」
「っ!なんでここに・・・」
すると、目の前にはレイがいた。どうやらあの後からずっとついてきていたらしい。その顔は憎しみで歪んでいる。
レイには昔から嫌われていると思っていたが、ここまで憎まれるようなことをしただろうか。
「さっきから何なんだよ。レイは俺に恨みでもあるのか?」
「恨み?あるに決まってるでしょ。お前さえいなければ僕はずっとカインの親友で、婚約者にだってなれたはずなのに・・・」
「カインとの仲と俺になんの関係があるんだよ。」
言いがかりも甚だしい。そう思ってレイを睨みつければ向こうも憎悪を帯びた瞳を向けてきた。
「白々しい。お前と口論した日から僕はカインの親友じゃなくなっちゃったんだ。口では許してくれたけど避けられてるし・・・」
「それはカインがそうすると決めたことだ。俺は関係ない。」
「関係なくない!お前がカインに僕の悪口を吹き込んだんだろ!」
「そんなことして何になる。俺はそんなことしてない。」
「どうだか、お前を気にかけてくれるカインを独り占めしたかったんじゃないの?」
そうして見下したように顔を歪めたレイに、何を言っても聞き入れられそうにないと苦い気持ちになる。このまま口論するのも不毛だと、弁明は諦めようと思ったその時、レイがつぶやいた。
「そもそもお前なんか生まれて来なければ良かったのに。」
その言葉には力がこもっていて、心の底からの言葉だとわかった。
「お前がいなければ僕はずっとカインと親友で、お前の両親もゴシップを抱えることもなくて、公爵だって王女と婚約して円満だったのに。全部お前がぶち壊してるんだ。」
「そんなこと・・・」
「ないって言えるのか?お前が皆を不幸にしてるんじゃないって。」
「っ!」
ずっと薄々感じていたことだ。むしろザックと出会う前は自分はそういう存在だと思っていた。それを他人に突きつけられて言葉に詰まった。
「公爵と王女を見てみなよ。皆に祝福されて幸せそうだ。王女は今でこそ幼いけど美しくて聡明だと評判だし、公爵の婚約者にはぴったりじゃない?」
「それでも・・・俺はザックのことが・・・ザックだって・・・」
「はぁ、なんで気づかないかな?公爵はお前に同情してるだけだ。小さい頃関係があったみたいだけど、そんなちょっとした恩があるお前が可哀想なやつだったから、助けてやろうっていう親切心だよ。」
「違う!ザックはそんなんじゃ・・・」
「ふふっ、お前本当に公爵がお前を愛してると思ってるの?そんな不気味な体のお前を?」
「ザックは・・・ザックは愛してくれてる。絶対にそうだと言い切れる。」
「へぇ・・・あれを見ても本当にそう言い切れる?」
そう言って引きずられるようにやってきたのはザックたちが見える少し小高い場所だった。
そこから見えるザックは王女と共に笑っていた。周りの貴族たちも先程の悪意ある表情はしておらず、この二人なら認められると言った風に祝福している。
「あれが正しい形なんだよ。それをお前がぶち壊してる。」
「・・・・・・・・・」
「公爵の表情を見てみなよ。お前と一緒の時はいつも気を張ってるみたいだけど、今は心から楽しそうだ。」
「でも、そんな・・・」
「まだわからない?公爵は優しいから、お前を守ると言った手前最後までそれを守ろうとしてるんだ。お前はそれを好意だと勘違いして、図々しくも公爵に寄り掛かり続けてる。」
「ち、違う!」
ザックは本当に自分を愛している。それは分かっているのに、この光景を見ていると「自分は邪魔者なのではないだろうか?」という想いが嫌でも浮かんでくる。
そもそもザックはこの国での爵位を捨ててまで他国に移住するメリットなどないのだ。それは単に俺への扱いに憤ってくれたからだった。
(俺は、ザックの優しさに甘えているんだろうか・・・?)
刺繍も満足にできなくて、人前に出てはザックに庇われてばかりの自分は、ザックの横に並ぶのに相応しいのだろうか。
その答えは否だ。そう考えると頭がガンガンし始めた。今すぐザックに駆け寄って自分を愛してくれているのだと、同情心などではないのだと確かめたい。
そうすればザックは愛を囁いてくれるはずだ。
でも、それがザックの優しさだったら?
体が冷えていくのを感じる。そこに追い討ちをかけるようにレイの言葉が刺さった。
「公爵の幸せを本当に願ってるなら自分から身を引くべきだと思うけどね。」
「ふん、公爵様に庇ってもらえるなんてね。」
「っ!なんでここに・・・」
すると、目の前にはレイがいた。どうやらあの後からずっとついてきていたらしい。その顔は憎しみで歪んでいる。
レイには昔から嫌われていると思っていたが、ここまで憎まれるようなことをしただろうか。
「さっきから何なんだよ。レイは俺に恨みでもあるのか?」
「恨み?あるに決まってるでしょ。お前さえいなければ僕はずっとカインの親友で、婚約者にだってなれたはずなのに・・・」
「カインとの仲と俺になんの関係があるんだよ。」
言いがかりも甚だしい。そう思ってレイを睨みつければ向こうも憎悪を帯びた瞳を向けてきた。
「白々しい。お前と口論した日から僕はカインの親友じゃなくなっちゃったんだ。口では許してくれたけど避けられてるし・・・」
「それはカインがそうすると決めたことだ。俺は関係ない。」
「関係なくない!お前がカインに僕の悪口を吹き込んだんだろ!」
「そんなことして何になる。俺はそんなことしてない。」
「どうだか、お前を気にかけてくれるカインを独り占めしたかったんじゃないの?」
そうして見下したように顔を歪めたレイに、何を言っても聞き入れられそうにないと苦い気持ちになる。このまま口論するのも不毛だと、弁明は諦めようと思ったその時、レイがつぶやいた。
「そもそもお前なんか生まれて来なければ良かったのに。」
その言葉には力がこもっていて、心の底からの言葉だとわかった。
「お前がいなければ僕はずっとカインと親友で、お前の両親もゴシップを抱えることもなくて、公爵だって王女と婚約して円満だったのに。全部お前がぶち壊してるんだ。」
「そんなこと・・・」
「ないって言えるのか?お前が皆を不幸にしてるんじゃないって。」
「っ!」
ずっと薄々感じていたことだ。むしろザックと出会う前は自分はそういう存在だと思っていた。それを他人に突きつけられて言葉に詰まった。
「公爵と王女を見てみなよ。皆に祝福されて幸せそうだ。王女は今でこそ幼いけど美しくて聡明だと評判だし、公爵の婚約者にはぴったりじゃない?」
「それでも・・・俺はザックのことが・・・ザックだって・・・」
「はぁ、なんで気づかないかな?公爵はお前に同情してるだけだ。小さい頃関係があったみたいだけど、そんなちょっとした恩があるお前が可哀想なやつだったから、助けてやろうっていう親切心だよ。」
「違う!ザックはそんなんじゃ・・・」
「ふふっ、お前本当に公爵がお前を愛してると思ってるの?そんな不気味な体のお前を?」
「ザックは・・・ザックは愛してくれてる。絶対にそうだと言い切れる。」
「へぇ・・・あれを見ても本当にそう言い切れる?」
そう言って引きずられるようにやってきたのはザックたちが見える少し小高い場所だった。
そこから見えるザックは王女と共に笑っていた。周りの貴族たちも先程の悪意ある表情はしておらず、この二人なら認められると言った風に祝福している。
「あれが正しい形なんだよ。それをお前がぶち壊してる。」
「・・・・・・・・・」
「公爵の表情を見てみなよ。お前と一緒の時はいつも気を張ってるみたいだけど、今は心から楽しそうだ。」
「でも、そんな・・・」
「まだわからない?公爵は優しいから、お前を守ると言った手前最後までそれを守ろうとしてるんだ。お前はそれを好意だと勘違いして、図々しくも公爵に寄り掛かり続けてる。」
「ち、違う!」
ザックは本当に自分を愛している。それは分かっているのに、この光景を見ていると「自分は邪魔者なのではないだろうか?」という想いが嫌でも浮かんでくる。
そもそもザックはこの国での爵位を捨ててまで他国に移住するメリットなどないのだ。それは単に俺への扱いに憤ってくれたからだった。
(俺は、ザックの優しさに甘えているんだろうか・・・?)
刺繍も満足にできなくて、人前に出てはザックに庇われてばかりの自分は、ザックの横に並ぶのに相応しいのだろうか。
その答えは否だ。そう考えると頭がガンガンし始めた。今すぐザックに駆け寄って自分を愛してくれているのだと、同情心などではないのだと確かめたい。
そうすればザックは愛を囁いてくれるはずだ。
でも、それがザックの優しさだったら?
体が冷えていくのを感じる。そこに追い討ちをかけるようにレイの言葉が刺さった。
「公爵の幸せを本当に願ってるなら自分から身を引くべきだと思うけどね。」
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