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本編
35(カインサイド)
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それから数日。ヘンダーソン公爵から正式な婚約の申し込みが届いた。
お父様とお母様は悩んだ結果、親戚の子を跡継ぎに据えるまでの間、僕が伯爵家を継げるようにすることを条件に承諾した。公爵は快諾してくれて、正直婚約に至るまでが早すぎて戸惑っているほどだ。
そして、僕たちの奇妙な交際が始まった。
公爵は会う頻度こそ多くはなかったけれど、事あるごとに僕に手紙やプレゼントを贈ってくれた。その手紙の内容はどれもテイトとの思い出を懐かしむものばかりで、僕との温度差に少なからず寂しさを抱いていることが伺えた。
それにこのプレゼントの数々。服に宝石にスイーツにと僕に惜しげもなく費やしてくれる。
(本当はテイトが受け取るはずのものだったのに・・・)
弟が貰うはずのものを騙し取ってしまった。そう思うと罪悪感が募った。
「公爵はカインのことかなり大切にしてくれてるんだな。」
また家に届いた贈り物の数々に驚きながらそう言ったテイトに申し訳ない気持ちになる。せめてもとそのプレゼントをあげようとすれば、テイトは「カインに贈られたものなんだから」と言って受け取らない。
(違うんだ・・・本当は・・・)
でも僕は何も言わずに曖昧に微笑んだ。
「まあでも評判ほど悪いやつじゃなさそうで良かったよ。」
「え、ああ。そうだね。」
テイトはまだヘンダーソン公爵は跡を継いだ長男だと思っている。実際には庶子だったアイザックが継いだのだが、そのことは話していない。ずっと隠し通せるものではないのに、分かっていてもそれを教えることができなかった。
長く嘘をつくほど言いづらくなってしまう。でも、もしかしたらバレずにこのまま済むかもしれないという希望を捨てきれなかった僕は、今日もそのことを話すことはなかった。
それにしても、公爵の方も婚約を持ちかけてきたことといい、ここまで僕を気にかけてくれることと言い、テイトのことが大好きだったのだろう。この間言われた言葉が蘇る。
「あなたが何かを隠しているのは分かっています。それでも私はあなたに救われた恩を返したい。あなたを幸せにする権利を下さいませんか?」
・・・公爵は僕が何か嘘をついているとわかった上で、それでも何か事情があるのだろうと見守ってくれている。もちろんそれは僕をテイトだと勘違いしているためだが。テイトは彼にとってかなり大きな存在だったらしい。
そんな二人の仲を割いていることに罪悪感を感じはしたが、公爵に対しては少し嫉妬のような気持ちもあった。
僕は長いことテイトと一緒にいることができなかったのに、彼は自分の知らないところでテイトと会っていたのだから。それもテイトからの話を聞くに随分楽しそうに。
(僕だって、テイトとそんな風に・・・・・・)
そう思うと素直に公爵をテイトと会わせることができなかった。
そして、今日も気疲れするデートへと出かけた。
お父様とお母様は悩んだ結果、親戚の子を跡継ぎに据えるまでの間、僕が伯爵家を継げるようにすることを条件に承諾した。公爵は快諾してくれて、正直婚約に至るまでが早すぎて戸惑っているほどだ。
そして、僕たちの奇妙な交際が始まった。
公爵は会う頻度こそ多くはなかったけれど、事あるごとに僕に手紙やプレゼントを贈ってくれた。その手紙の内容はどれもテイトとの思い出を懐かしむものばかりで、僕との温度差に少なからず寂しさを抱いていることが伺えた。
それにこのプレゼントの数々。服に宝石にスイーツにと僕に惜しげもなく費やしてくれる。
(本当はテイトが受け取るはずのものだったのに・・・)
弟が貰うはずのものを騙し取ってしまった。そう思うと罪悪感が募った。
「公爵はカインのことかなり大切にしてくれてるんだな。」
また家に届いた贈り物の数々に驚きながらそう言ったテイトに申し訳ない気持ちになる。せめてもとそのプレゼントをあげようとすれば、テイトは「カインに贈られたものなんだから」と言って受け取らない。
(違うんだ・・・本当は・・・)
でも僕は何も言わずに曖昧に微笑んだ。
「まあでも評判ほど悪いやつじゃなさそうで良かったよ。」
「え、ああ。そうだね。」
テイトはまだヘンダーソン公爵は跡を継いだ長男だと思っている。実際には庶子だったアイザックが継いだのだが、そのことは話していない。ずっと隠し通せるものではないのに、分かっていてもそれを教えることができなかった。
長く嘘をつくほど言いづらくなってしまう。でも、もしかしたらバレずにこのまま済むかもしれないという希望を捨てきれなかった僕は、今日もそのことを話すことはなかった。
それにしても、公爵の方も婚約を持ちかけてきたことといい、ここまで僕を気にかけてくれることと言い、テイトのことが大好きだったのだろう。この間言われた言葉が蘇る。
「あなたが何かを隠しているのは分かっています。それでも私はあなたに救われた恩を返したい。あなたを幸せにする権利を下さいませんか?」
・・・公爵は僕が何か嘘をついているとわかった上で、それでも何か事情があるのだろうと見守ってくれている。もちろんそれは僕をテイトだと勘違いしているためだが。テイトは彼にとってかなり大きな存在だったらしい。
そんな二人の仲を割いていることに罪悪感を感じはしたが、公爵に対しては少し嫉妬のような気持ちもあった。
僕は長いことテイトと一緒にいることができなかったのに、彼は自分の知らないところでテイトと会っていたのだから。それもテイトからの話を聞くに随分楽しそうに。
(僕だって、テイトとそんな風に・・・・・・)
そう思うと素直に公爵をテイトと会わせることができなかった。
そして、今日も気疲れするデートへと出かけた。
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