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本編
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カインと公爵が次の約束を取り付けた傍ら、俺の方も公爵と手紙のやり取りが始まった。
彼はあの屋敷の運営に寄付をしてくれるらしい。それ自体はありがたいのだが、そのためにぜひ俺に直接会いたいと言ってくる。寄付の使い道や細々した内容を契約書として交わしたいのだそうだ。その内容を詰めるために話し合いを行いたいと言う。
俺は訳あって人前には出られないと断ったが、公爵はどんな姿でも気にしないとなかなか引かない。
いっそ寄付を断ることも考えたが、あそこにとっても寄付は喉から手が出るほど欲しい。俺はなんとか内容を詰めるまでは文面で行い、最後にサインを行う際のみ直接会うことで了承を得た。それもローブを着た状態で、だ。
公爵は快諾してくれて、手紙の文面からでも人の良さが伝わってくる。
(嫌なやつだって言う評判は嘘だったのか?それとも心を入れ替えたのか・・・)
平民だということになっている俺にこんなに丁寧に接してくれるとは。人というのは実際に関わってみないと分からないものだ。
そう言えば、彼はルイスにも嫌な顔一つしなかった。障害者への偏見を持っていない稀な人なのかもしれない。
でも、こんな人がザックの死に関わっているのではと考えると複雑な気持ちになる。
(もし公爵が元凶でザックが死んだのだとすれば、俺は・・・)
そこまで考えて、物騒な考えを振り払うように頭を振った。そういえば、あれからカインの方は何か掴めたのだろうか。
俺はカインの部屋を訪ねてみることにした。
トントン。
ドアをノックすれば、「どうぞ。」と返事が返ってくる。
「カイン、俺だ。」
「テイト、どうしたの?」
なんだかんだで1週間ぶりくらいに会うカインは、明るい表情で俺を迎え入れてくれる。
「前言ってたザックの話、何か分かったか?」
「ああ、その話ね・・・」
だが、ザックの話を出した途端少し落ち込んだような雰囲気になった。
「ごめん、まだはっきりと掴めた訳じゃないけど、少なくとも公爵はザックのことを知っているよ。」
「本当か!?じゃあやっぱりザックは公爵家の縁者であることは間違いないんだな・・・」
「うん・・・そこは間違い無いと思う。」
「そっか・・・それが分かっただけでも一つ進展だよ。ありがとうな。」
「そう・・・」
「カイン?どうしたんだ?何だか疲れてるように見えるけど・・・」
本当にカインの様子がおかしい。いつだって元気そうににこにこしているやつなのに、今は疲労が滲み出ている。
「いや、何でもない。」
「そうか・・・」
何も話したくなさそうなカインに、それならば仕方ないと部屋を出て行こうとすると、不意に後ろから質問を投げられた。
「もし・・・もし、ザックが生きていたら・・・」
「っ!ザックが生きているかもしれないのか!?」
俺は勢いよく振り返ってカインを見た。カインは、「もしもの話だよ。」と肩をすくめる。
「あ、ああ・・・そう、だよな・・・」
「ザックが生きていたら、テイトはどうする?」
「どうするって言われても・・・・・・謝って、再会を喜んで、誕生日を祝ってやりたい、かな。」
「恋愛感情とかはないの?」
「え?うーん、ザックな弟みたいな存在だったからな・・・愛情はあるけど、恋人とかそんな風には考えたことは無いな。」
「そっか。」
その答えにどこかホッとしたようなカインは「呼び止めてごめん。」と言って俺を見送った。
一体あの質問は何だったのだろうか。
彼はあの屋敷の運営に寄付をしてくれるらしい。それ自体はありがたいのだが、そのためにぜひ俺に直接会いたいと言ってくる。寄付の使い道や細々した内容を契約書として交わしたいのだそうだ。その内容を詰めるために話し合いを行いたいと言う。
俺は訳あって人前には出られないと断ったが、公爵はどんな姿でも気にしないとなかなか引かない。
いっそ寄付を断ることも考えたが、あそこにとっても寄付は喉から手が出るほど欲しい。俺はなんとか内容を詰めるまでは文面で行い、最後にサインを行う際のみ直接会うことで了承を得た。それもローブを着た状態で、だ。
公爵は快諾してくれて、手紙の文面からでも人の良さが伝わってくる。
(嫌なやつだって言う評判は嘘だったのか?それとも心を入れ替えたのか・・・)
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そう言えば、彼はルイスにも嫌な顔一つしなかった。障害者への偏見を持っていない稀な人なのかもしれない。
でも、こんな人がザックの死に関わっているのではと考えると複雑な気持ちになる。
(もし公爵が元凶でザックが死んだのだとすれば、俺は・・・)
そこまで考えて、物騒な考えを振り払うように頭を振った。そういえば、あれからカインの方は何か掴めたのだろうか。
俺はカインの部屋を訪ねてみることにした。
トントン。
ドアをノックすれば、「どうぞ。」と返事が返ってくる。
「カイン、俺だ。」
「テイト、どうしたの?」
なんだかんだで1週間ぶりくらいに会うカインは、明るい表情で俺を迎え入れてくれる。
「前言ってたザックの話、何か分かったか?」
「ああ、その話ね・・・」
だが、ザックの話を出した途端少し落ち込んだような雰囲気になった。
「ごめん、まだはっきりと掴めた訳じゃないけど、少なくとも公爵はザックのことを知っているよ。」
「本当か!?じゃあやっぱりザックは公爵家の縁者であることは間違いないんだな・・・」
「うん・・・そこは間違い無いと思う。」
「そっか・・・それが分かっただけでも一つ進展だよ。ありがとうな。」
「そう・・・」
「カイン?どうしたんだ?何だか疲れてるように見えるけど・・・」
本当にカインの様子がおかしい。いつだって元気そうににこにこしているやつなのに、今は疲労が滲み出ている。
「いや、何でもない。」
「そうか・・・」
何も話したくなさそうなカインに、それならば仕方ないと部屋を出て行こうとすると、不意に後ろから質問を投げられた。
「もし・・・もし、ザックが生きていたら・・・」
「っ!ザックが生きているかもしれないのか!?」
俺は勢いよく振り返ってカインを見た。カインは、「もしもの話だよ。」と肩をすくめる。
「あ、ああ・・・そう、だよな・・・」
「ザックが生きていたら、テイトはどうする?」
「どうするって言われても・・・・・・謝って、再会を喜んで、誕生日を祝ってやりたい、かな。」
「恋愛感情とかはないの?」
「え?うーん、ザックな弟みたいな存在だったからな・・・愛情はあるけど、恋人とかそんな風には考えたことは無いな。」
「そっか。」
その答えにどこかホッとしたようなカインは「呼び止めてごめん。」と言って俺を見送った。
一体あの質問は何だったのだろうか。
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