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本編
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帰りの馬車の中。
「テイト、さっきの服屋気に入った?」
「ん?気に入ったっていうか、俺みたいなのを嫌がらない店は覚えておこうかなって。」
「そう・・・じゃあ店主にはテイトにぴったりの服を作れるように頑張ってもらわないと。」
「いや、俺は着れれば何でも・・・」
カインは俺の言葉をよそに、「もしセンスの悪いら服を作ってきたらやり直させてやる。」なんてぶつぶつ呟いている。
あの能天気そうな店主に少し負担をかけてしまっただろうか。まあ、来週出来上がった服を俺が「気に入った」と言えばそれで済む話だろう。
そうして俺たちは家へと戻った。
部屋へと戻れば豪勢な食事が用意されていた。当然俺の分もある。
それを見てカインは満足そうだ。
でも・・・やっぱり食べにくい物が多いんだよな。肉とか食材丸ごと系の料理が多い。偶然なのか、ささやかな嫌がらせなのかはよくわからないけど。
「ほら、テイト早く食べよう。」
「ああ。」
そう言って席に着いたカインに倣い、俺も向かいの席につく。とりあえず食べられるスープとパンに手をつけていると、カインはにこやかに俺を見つめてくる。
「テイト。僕にお願いしたいことない?」
「うっ・・・」
昔はカインの方から「やってあげる」と言ってきたのに、アプローチ方法を変えてきたらしい。昔は昔で苛立ったものだが、これはこれで悔しい。
「・・・料理、切ってくれるか?」
「ふふ、いいよ!」
そう言ってカインが俺の料理を切ってくれる。俺は少し気まずくて、顔を逸らしたまま「ありがとう」と料理を受け取った。
「まだ食べにくかったら食べさせてあげるからね。」
「いや、大丈夫・・・」
昔の関係に戻ろうとしているかのようなカインに戸惑いつつ、その日は久々に満腹になるまで食べた。
そして1週間が経ち、俺たちは今服を受け取りにやって来ている。にこやかに出迎えてくれた店主とは対照的に、俺は完成した服を見て絶句した。
だが、おそらくこれは店主が悪いのではなく・・・
「わあ、すごい!注文通りだ!」
そう歓声を上げたカインに頭を抱える。
できた服の1着はやたらとリボンの多い服だった。絶対に必要のないところにまでリボンがついている。とにかく着るのが大変そうだ。というか1人では無理だろうな・・・
もう1着は、もう1着でやたらボタンが多い服だ。なんとか着れなくはないだろうが、きちんと着ようとしたらかなり大変そうだ。
最後の1着だけはまともだった。かなりシンプルで、1人でも簡単に着られる作りだ。
「カイン、これはお前が頼んだ通りなのか?」
「そうだよ、気に入った?」
「・・・この1着だけはな。」
そう言って最後の1着を手に取る。
「うん、そういうのも無いとテイトが怒るかなって思ってさ。」
「こういうのだけで良かったんだが・・・」
「こっちの二つもおしゃれでしょ?着るときは僕が手伝うからさ。」
「・・・タンスの肥やしになりそうだな。」
「そんなことにはならないよ!」
なぜか力強く言ったカインに、思わずため息をついた。店主は俺の反応を見て不安そうな顔をしていたが、彼自身はちゃんと仕事をしている。
俺は礼を言って服を受け取った。
「またいつでもいらしてください。」
そうして、店主に見送られながら俺たちは帰った。
今度服を頼むときは絶対に自分で要望を伝えよう。そう思いながら。
「テイト、さっきの服屋気に入った?」
「ん?気に入ったっていうか、俺みたいなのを嫌がらない店は覚えておこうかなって。」
「そう・・・じゃあ店主にはテイトにぴったりの服を作れるように頑張ってもらわないと。」
「いや、俺は着れれば何でも・・・」
カインは俺の言葉をよそに、「もしセンスの悪いら服を作ってきたらやり直させてやる。」なんてぶつぶつ呟いている。
あの能天気そうな店主に少し負担をかけてしまっただろうか。まあ、来週出来上がった服を俺が「気に入った」と言えばそれで済む話だろう。
そうして俺たちは家へと戻った。
部屋へと戻れば豪勢な食事が用意されていた。当然俺の分もある。
それを見てカインは満足そうだ。
でも・・・やっぱり食べにくい物が多いんだよな。肉とか食材丸ごと系の料理が多い。偶然なのか、ささやかな嫌がらせなのかはよくわからないけど。
「ほら、テイト早く食べよう。」
「ああ。」
そう言って席に着いたカインに倣い、俺も向かいの席につく。とりあえず食べられるスープとパンに手をつけていると、カインはにこやかに俺を見つめてくる。
「テイト。僕にお願いしたいことない?」
「うっ・・・」
昔はカインの方から「やってあげる」と言ってきたのに、アプローチ方法を変えてきたらしい。昔は昔で苛立ったものだが、これはこれで悔しい。
「・・・料理、切ってくれるか?」
「ふふ、いいよ!」
そう言ってカインが俺の料理を切ってくれる。俺は少し気まずくて、顔を逸らしたまま「ありがとう」と料理を受け取った。
「まだ食べにくかったら食べさせてあげるからね。」
「いや、大丈夫・・・」
昔の関係に戻ろうとしているかのようなカインに戸惑いつつ、その日は久々に満腹になるまで食べた。
そして1週間が経ち、俺たちは今服を受け取りにやって来ている。にこやかに出迎えてくれた店主とは対照的に、俺は完成した服を見て絶句した。
だが、おそらくこれは店主が悪いのではなく・・・
「わあ、すごい!注文通りだ!」
そう歓声を上げたカインに頭を抱える。
できた服の1着はやたらとリボンの多い服だった。絶対に必要のないところにまでリボンがついている。とにかく着るのが大変そうだ。というか1人では無理だろうな・・・
もう1着は、もう1着でやたらボタンが多い服だ。なんとか着れなくはないだろうが、きちんと着ようとしたらかなり大変そうだ。
最後の1着だけはまともだった。かなりシンプルで、1人でも簡単に着られる作りだ。
「カイン、これはお前が頼んだ通りなのか?」
「そうだよ、気に入った?」
「・・・この1着だけはな。」
そう言って最後の1着を手に取る。
「うん、そういうのも無いとテイトが怒るかなって思ってさ。」
「こういうのだけで良かったんだが・・・」
「こっちの二つもおしゃれでしょ?着るときは僕が手伝うからさ。」
「・・・タンスの肥やしになりそうだな。」
「そんなことにはならないよ!」
なぜか力強く言ったカインに、思わずため息をついた。店主は俺の反応を見て不安そうな顔をしていたが、彼自身はちゃんと仕事をしている。
俺は礼を言って服を受け取った。
「またいつでもいらしてください。」
そうして、店主に見送られながら俺たちは帰った。
今度服を頼むときは絶対に自分で要望を伝えよう。そう思いながら。
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