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本編
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その翌日。俺は再び街へ繰り出そうとしていた。
家の進捗も気になるし、何より8ヶ月も待ってたらスラムにいるあの人たちは死んでしまうかもしれない。
それにあのザックという少年もだ。次会う時もお腹を空かせているかもしれない。何か食料を、と思ったがそう考えると金が足りない。
(本当はアルバイトみたいなものでもあればいいんだけどな・・・まあ、あっても俺じゃ無理か・・・)
そう考えて、俺は今の持ち物を売る事にした。
「お、これなんか良いな。」
昔カインがパーティー用の煌びやかな服を買って貰っているのを見て、自分も欲しいと駄々をこねて買ってもらった服だ。
パーティーなど行かないと言うのに、これでもかと駄々をこねた俺を思い出すと少し恥ずかしい。でも今はこれが金になるのだから悪いことばかりではないが・・・
そうして俺はその服を鞄に仕舞い、ローブを羽織って前回同様裏門から街へと抜け出した。服は適当な店であっさりと売り捌くことができ、おかげで少しまとまった金ができた。俺はその足でパン屋へと向かう。
(うーん・・・とりあえず質より量でいくか・・・)
そう思って大量の黒パンを購入する。そして、パンの入った袋を抱えてこの間見かけたスラムへと向かった。
前回は入り口らへんをうろついただけだが、今回は意を決して奥へと足を踏み入れる。
羽織ってきたのはボロいローブとはいえ、ここではそれなりにまともな身なりだ。道端に座る人々の視線が突き刺さる。嫌な注目を集めていることに冷や汗をかきつつ、逃げ出したくなる気持ちを抑え、障害のある人たちが集まる一角へとやってきた。
「・・・何か用か?」
どうやって切り出そうかと考えていると、足のない男性に話しかけられた。
「これを・・・」
俺はパンの入った袋を差し出した。
「・・・同情か?」
「・・・半分くらいは、そうかな。あとは自分が救われたくて・・・」
俺は意を決してローブを脱いで右腕を見せた。
「あんたもか・・・」
「ああ。」
「ここに仲間入りをしたいなら別にそんなものなくても良いんだぜ。」
「いや、俺はまだ恵まれてる方なんだ・・・それで、せめて何かできないかと思ってな。」
「そうか・・・じゃあ遠慮なく貰っとくよ。」
「ああ、そうしてくれるとこちらとしても嬉しい。」
そうして俺は彼らと少し会話をした。足のない男はルイスと言って、馬車の事故で足を無くしたらしい。
「生まれつきでなくても差別されるのか?」
「他のやつらにとったら生まれつきかどうかなんて関係ないんだろ。事実、俺だって昔はそうだったからな。」
「そうか・・・」
「あんたは生まれつきなのか?」
「ああ。でも貴族の家の生まれだったお陰でそれなりの暮らしはできてる。」
「へえ!貴族様だったのか。そりゃこんな態度で悪かったな。」
「それなりに、って言ったろ。全うな貴族としては暮らしてないから態度なんか気にするな。」
「そりゃそうか。」
そう言って2人、たわいもない話をして笑った。こんな風に同じ立場の人たちと話すのは初めてだ。それに、想像していた以上に彼らは逞しかった。家族の関心を得られないくらいでいじけていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
「それで、まだ完成もしてないのに言っても仕方ないけど、この奥に家を建ててる。」
「ああ、あんな治安の悪いところに家を建てようとする馬鹿はどこのどいつだと思ってたら、あんただったのか。」
「酷いな。」
「ふっ、本当のことだろ。」
「ふふ、たしかに。でもあそこに雨風凌げる場所があったら多少環境が良くなるかなってさ。まあ、結局食料とかはどうにかしなきゃならないけど。」
「俺たちのためだったのか。」
「俺も住む気でいるけどな。」
「そりゃいい!そん時はよろしくな兄弟。」
「ああ、こっちこそよろしく。」
そうして俺は、似た境遇の友人を作ることに成功した。最初は警戒心丸出しだった他の人たちも、別れ際にはだいぶ態度が軟化してきたようだ。俺は、想像以上の結果に満足して、彼らへ別れを告げて家へと帰った。
家の進捗も気になるし、何より8ヶ月も待ってたらスラムにいるあの人たちは死んでしまうかもしれない。
それにあのザックという少年もだ。次会う時もお腹を空かせているかもしれない。何か食料を、と思ったがそう考えると金が足りない。
(本当はアルバイトみたいなものでもあればいいんだけどな・・・まあ、あっても俺じゃ無理か・・・)
そう考えて、俺は今の持ち物を売る事にした。
「お、これなんか良いな。」
昔カインがパーティー用の煌びやかな服を買って貰っているのを見て、自分も欲しいと駄々をこねて買ってもらった服だ。
パーティーなど行かないと言うのに、これでもかと駄々をこねた俺を思い出すと少し恥ずかしい。でも今はこれが金になるのだから悪いことばかりではないが・・・
そうして俺はその服を鞄に仕舞い、ローブを羽織って前回同様裏門から街へと抜け出した。服は適当な店であっさりと売り捌くことができ、おかげで少しまとまった金ができた。俺はその足でパン屋へと向かう。
(うーん・・・とりあえず質より量でいくか・・・)
そう思って大量の黒パンを購入する。そして、パンの入った袋を抱えてこの間見かけたスラムへと向かった。
前回は入り口らへんをうろついただけだが、今回は意を決して奥へと足を踏み入れる。
羽織ってきたのはボロいローブとはいえ、ここではそれなりにまともな身なりだ。道端に座る人々の視線が突き刺さる。嫌な注目を集めていることに冷や汗をかきつつ、逃げ出したくなる気持ちを抑え、障害のある人たちが集まる一角へとやってきた。
「・・・何か用か?」
どうやって切り出そうかと考えていると、足のない男性に話しかけられた。
「これを・・・」
俺はパンの入った袋を差し出した。
「・・・同情か?」
「・・・半分くらいは、そうかな。あとは自分が救われたくて・・・」
俺は意を決してローブを脱いで右腕を見せた。
「あんたもか・・・」
「ああ。」
「ここに仲間入りをしたいなら別にそんなものなくても良いんだぜ。」
「いや、俺はまだ恵まれてる方なんだ・・・それで、せめて何かできないかと思ってな。」
「そうか・・・じゃあ遠慮なく貰っとくよ。」
「ああ、そうしてくれるとこちらとしても嬉しい。」
そうして俺は彼らと少し会話をした。足のない男はルイスと言って、馬車の事故で足を無くしたらしい。
「生まれつきでなくても差別されるのか?」
「他のやつらにとったら生まれつきかどうかなんて関係ないんだろ。事実、俺だって昔はそうだったからな。」
「そうか・・・」
「あんたは生まれつきなのか?」
「ああ。でも貴族の家の生まれだったお陰でそれなりの暮らしはできてる。」
「へえ!貴族様だったのか。そりゃこんな態度で悪かったな。」
「それなりに、って言ったろ。全うな貴族としては暮らしてないから態度なんか気にするな。」
「そりゃそうか。」
そう言って2人、たわいもない話をして笑った。こんな風に同じ立場の人たちと話すのは初めてだ。それに、想像していた以上に彼らは逞しかった。家族の関心を得られないくらいでいじけていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
「それで、まだ完成もしてないのに言っても仕方ないけど、この奥に家を建ててる。」
「ああ、あんな治安の悪いところに家を建てようとする馬鹿はどこのどいつだと思ってたら、あんただったのか。」
「酷いな。」
「ふっ、本当のことだろ。」
「ふふ、たしかに。でもあそこに雨風凌げる場所があったら多少環境が良くなるかなってさ。まあ、結局食料とかはどうにかしなきゃならないけど。」
「俺たちのためだったのか。」
「俺も住む気でいるけどな。」
「そりゃいい!そん時はよろしくな兄弟。」
「ああ、こっちこそよろしく。」
そうして俺は、似た境遇の友人を作ることに成功した。最初は警戒心丸出しだった他の人たちも、別れ際にはだいぶ態度が軟化してきたようだ。俺は、想像以上の結果に満足して、彼らへ別れを告げて家へと帰った。
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