ゴーストハウス

ゆう

文字の大きさ
上 下
7 / 12
幽霊屋敷

7

しおりを挟む
幸いなことに今日は学校が休みだ。私はこの家にある図書室へとやっていていた。

引っ越してから誰も入っていないのか、埃がずいぶん溜まっている。

今日私がここへ来たのは、アンソニーという人物のことを調べるためだ。


ついでに他にもいるというゴーストの手がかりも掴めたらと思ったけど、あまり欲張るのはやめよう。そう思って書棚にある貴族名鑑や家系図に目を通していく。

そういえば、彼の家名を聞いていなかったので、調査はかなり難航した。この家で働いていたというからあまり爵位の高い家の出ではなそうだけど・・・

彼の名前をなかなか見つけられずに本棚へと戻る。すると、下段の一角に使用人の日誌のようなものが収納されているのを見つけた。

それを数冊広げてみると、アンソニー・ダイアーという人物の署名がある日報が見つかった。これが彼だろうか。


男性とは思えない綺麗な字が並ぶ日報を読んでいく。どうやらこのアンソニーは、この家に住んでいたモーリス伯爵家に仕えていたらしい。

日報の内容は当たり障りのないもので、彼を知る手がかりにはあまりならなかった。ただ、所々に反省文のような文書が挟まっている。

(あの人、モーリス伯爵という人に何度か叱られていたみたい。)

まあ、あの不遜な態度で支えていたのだとしたらそれも当然だわ。

私は自分でも性格が悪いと思ったが、飄々としている彼が叱られながら反省文を書かされている様を想像するのは楽しかった。
 

だが書かれている内容がよく分からない。

"私は断じて旦那様が疑われているような関係は築いていないと誓います。"

そんな文章が複数の反省文に見られる。一体何をして叱られていたのかしら。


「ふぅ、今日はこの辺にしておこう。」

日誌を閉じた私はその表紙に書かれた日付に気づく。

XXXX年4月。

(・・・今より80年も前だわ。彼は80年前の人ということなの?)

そういえばモーリス伯爵家なんてものも聞いたことがない。もしかしすると、既に取り潰しになっている家なのかしら。

そんな事を考えながら、日誌だけを残し他の本を棚に戻す。

「それにしても・・・」

(この図書室、なんていうか蔵書の幅が広いわね。)

教養のための書籍も有れば、小さい女の子が好みそうな絵本、はたまた魔術書のような書籍もある。

全てモーリス伯爵が集めた物なのかしら。あるいはその後に住んだ人たちが加えていったものかもしれない。

彼も""と言っていたし、他にもゴーストはいるのだろう。

今まで目の前に現れたゴーストは彼1人だが、他は一体どんな人たちなのだろう。

(あまり怖くない人たちだと良いのだけれど。)

そう思いながら私は自室へと戻った。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

未明の駅

ゆずさくら
ホラー
Webサイトに記事をアップしている俺は、趣味の小説ばかり書いて仕事が進んでいなかった。サイト主催者から炊きつけられ、ネットで見つけたネタを記事する為、夜中の地下鉄の取材を始めるのだが、そこで思わぬトラブルが発生して、地下の闇を彷徨うことになってしまう。俺は闇の中、先に見えてきた謎のホームへと向かうのだが……

扉の向こうは黒い影

小野 夜
ホラー
古い校舎の3階、突き当たりの隅にある扉。それは「開かずの扉」と呼ばれ、生徒たちの間で恐れられていた。扉の向こう側には、かつて理科室として使われていた部屋があるはずだったが、今は誰も足を踏み入れない禁断の場所となっていた。 夏休みのある日、ユキは友達のケンジとタケシを誘って、学校に忍び込む。目的は、開かずの扉を開けること。好奇心と恐怖心が入り混じる中、3人はついに扉を開ける。

もしもし、あのね。

ナカハラ
ホラー
「もしもし、あのね。」 舌足らずな言葉で一生懸命話をしてくるのは、名前も知らない女の子。 一方的に掛かってきた電話の向こうで語られる内容は、本当かどうかも分からない話だ。 それでも不思議と、電話を切ることが出来ない。 本当は着信なんて拒否してしまいたい。 しかし、何故か、この電話を切ってはいけない……と…… ただ、そんな気がするだけだ。

郷土伝承伝奇会

阿沙🌷
ホラー
ある男は語る――自分が幼いころに体験したことを。

鬼手紙一現代編一

ぶるまど
ホラー
《当たり前の日常》は一つの手紙を受け取ったことから崩壊した あらすじ 五十嵐 秋人はどこにでもいる高校1年生の少年だ。 幼馴染みの双葉 いのりに告白するため、屋上へと呼び出した。しかし、そこでとある事件が起き、二人は離れ離れになってしまった。 それから一年…高校二年生になった秋人は赤い手紙を受け取ったことにより…日常の崩壊が、始まったのである。 *** 20180427一完結。 次回【鬼手紙一過去編一】へと続きます。 ***

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

僕が見た怪物たち1997-2018

サトウ・レン
ホラー
初めて先生と会ったのは、1997年の秋頃のことで、僕は田舎の寂れた村に住む少年だった。 怪物を探す先生と、行動を共にしてきた僕が見てきた世界はどこまでも――。 ※作品内の一部エピソードは元々「死を招く写真の話」「或るホラー作家の死」「二流には分からない」として他のサイトに載せていたものを、大幅にリライトしたものになります。 〈参考〉 「廃屋等の取り壊しに係る積極的な行政の関与」 https://www.soumu.go.jp/jitidai/image/pdf/2-160-16hann.pdf

不労の家

千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。  世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。  それは「一生働かないこと」。  世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。  初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。  経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。  望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。  彼の最後の選択を見て欲しい。

処理中です...