4 / 28
ウェス編
4
しおりを挟む
その機会は思ったよりも早くやってきた。
ある会議の日。伯爵位をもらった俺にも招集がかかり、始めてそのような場に参加した。
周りは完全に人型の高位魔族ばかりで俺の存在は浮いていた。彼らが何を話しているのかも難しくてよく分からない。
おそらくは人間たちの進軍についてのようだが…
「せっかくの機会ですし、ウェスに行かせてみては?」
自分の名前が出たことにぴくりと反応する。
「それはいい」
「そうですな、爵位に見合った働きをしてもらわなくては」
レヴォン様の提案に周りが同意しているようだ。
俺は何のことかわからなくて慌てふためく。
「…ウェスは戦いには向いてない。人間の軍隊は別のものに対処させる」
するとディニス様がため息を吐くようにそう言った。どうやら、レヴォン様たちは進軍してきた人間の軍を追い返す役目を俺にやらせようとしていたらしい。
「ですが、伯爵位ならそれくらいはやって貰わなくては。他に何をしているわけでも無いのですから」
他の高位魔族の発言に周りがどっと笑い出す。恐らくは馬鹿にされているのだろうとは思ったが、俺にはあまり分からなかった。
「あの、やった方がいいというのなら俺にやらせてください」
疲れた顔をしているディニス様の手をこれ以上煩わせたくない。そう思って発言したが、再び辺りは笑いに包まれた。
「お前は本当に馬鹿だな。お前なんかが行っても無駄死にするだけだというのに」
「そんなの…」
レヴォン様の言葉にやってみないと分からないじゃ無いか。そう返そうとしたところでディニス様の静止が入った。
「ダメだ。誰か他に我こそはという者はいないのか」
俺に一瞥もせずそう言い放った彼は、俺に何の期待もしていないのだろう。それがひどく悲しい。
彼らの肩を持つディニス様にしゅんと落ち込んでいると、ソロン様というもう1人のディニス様の側近が声を上げた。
「まあまあ、ディニス様も皆様もそう言わず、せっかくウェスがやりたいと言っているのですからやらせてやれば良いではありませんか」
「しかし…」
「ウェスだって何の役割もないまま伯爵位などに就かせられては居心地が悪いでしょう」
「………」
ソロン様は俺の気持ちが分かるらしい。
黙ったディニス様とは対照的にソロン様が俺に微笑みかける。
「危険だがそれを承知でやりたいのだよな、ウェス?」
「はい!俺はディニス様の役に立てるなら何だってやります」
「良い返事だ。ディニス様も伯爵位を与えたのですから少しは信じてみてはいかがです?」
「それは…はぁ、分かった。だが無理だと思ったらすぐに帰ってくるように」
「はい!」
ディニス様が俺に任務をくれた。それがすごく嬉しくて大きく頷いた。
絶対に失敗はできない。相手がどれほどのものか分からないが、万全の準備をしなくては。
「では、今日の会議は終了とする。レヴォン、ソロンお前らは残れ」
ディニス様はそう言って皆を解散させた。
ある会議の日。伯爵位をもらった俺にも招集がかかり、始めてそのような場に参加した。
周りは完全に人型の高位魔族ばかりで俺の存在は浮いていた。彼らが何を話しているのかも難しくてよく分からない。
おそらくは人間たちの進軍についてのようだが…
「せっかくの機会ですし、ウェスに行かせてみては?」
自分の名前が出たことにぴくりと反応する。
「それはいい」
「そうですな、爵位に見合った働きをしてもらわなくては」
レヴォン様の提案に周りが同意しているようだ。
俺は何のことかわからなくて慌てふためく。
「…ウェスは戦いには向いてない。人間の軍隊は別のものに対処させる」
するとディニス様がため息を吐くようにそう言った。どうやら、レヴォン様たちは進軍してきた人間の軍を追い返す役目を俺にやらせようとしていたらしい。
「ですが、伯爵位ならそれくらいはやって貰わなくては。他に何をしているわけでも無いのですから」
他の高位魔族の発言に周りがどっと笑い出す。恐らくは馬鹿にされているのだろうとは思ったが、俺にはあまり分からなかった。
「あの、やった方がいいというのなら俺にやらせてください」
疲れた顔をしているディニス様の手をこれ以上煩わせたくない。そう思って発言したが、再び辺りは笑いに包まれた。
「お前は本当に馬鹿だな。お前なんかが行っても無駄死にするだけだというのに」
「そんなの…」
レヴォン様の言葉にやってみないと分からないじゃ無いか。そう返そうとしたところでディニス様の静止が入った。
「ダメだ。誰か他に我こそはという者はいないのか」
俺に一瞥もせずそう言い放った彼は、俺に何の期待もしていないのだろう。それがひどく悲しい。
彼らの肩を持つディニス様にしゅんと落ち込んでいると、ソロン様というもう1人のディニス様の側近が声を上げた。
「まあまあ、ディニス様も皆様もそう言わず、せっかくウェスがやりたいと言っているのですからやらせてやれば良いではありませんか」
「しかし…」
「ウェスだって何の役割もないまま伯爵位などに就かせられては居心地が悪いでしょう」
「………」
ソロン様は俺の気持ちが分かるらしい。
黙ったディニス様とは対照的にソロン様が俺に微笑みかける。
「危険だがそれを承知でやりたいのだよな、ウェス?」
「はい!俺はディニス様の役に立てるなら何だってやります」
「良い返事だ。ディニス様も伯爵位を与えたのですから少しは信じてみてはいかがです?」
「それは…はぁ、分かった。だが無理だと思ったらすぐに帰ってくるように」
「はい!」
ディニス様が俺に任務をくれた。それがすごく嬉しくて大きく頷いた。
絶対に失敗はできない。相手がどれほどのものか分からないが、万全の準備をしなくては。
「では、今日の会議は終了とする。レヴォン、ソロンお前らは残れ」
ディニス様はそう言って皆を解散させた。
9
お気に入りに追加
1,287
あなたにおすすめの小説
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。
僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる