悪役令嬢の兄のやり直し〜侯爵家のゴーストと呼ばれた兄ですが、せめて妹だけは幸せにしたいと思います〜

ゆう

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学園生活2

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そうして時は過ぎ、学年末が近づいてきた。

ティアとテオが来てからというもの、裏で行われていた嫌がらせも無くなり、やっと学園に馴染めた気がする。

ただ、この間ハンフリー伯爵令息とすれ違ったときのこと…

「この程度の嫌がらせは気にしてませんってか？ほんと腹立たしいやつ」

と舌打ちされた。彼らとしてはまだ嫌がらせをしているが僕が気づいていないだけなのだろうか？
だが、その程度なら気にする必要もないだろうと意識の片隅に追いやる。

「ねぇ、学年末のパーティーだけど一緒に行かない？」

そんなことを考えていると、ゾーイが間もなく開催される学園内のパーティーの件で僕に話しかけてきた。
毎年学年末に学内でパーティーが開かれ、生徒達はそこで社交の練習をするのだ。

「いや、でもゾーイは貴族の子にエスコートしてもらった方が…」
「そんなのいいわ、それに…婚約者がいるのに他の人にエスコートしてもらうってのもね？」

小声で付け加えた彼女は悪戯っぽく笑った。まだ婚約者と確定したわけでは無いのだが…彼女が僕を好いてくれていることが嬉しい。

「では…僕でよければ喜んで」

学内の行事ということもあり、支援を受けている平民が貴族をエスコートしても問題にはならないだろう。そうして僕はゾーイをエスコートすることになった。

「なら、アリスティア嬢は俺と一緒に行かないか？」
「あら、良いですわよ。それならテオと行かなくて済みますわ」
「ふん、じゃあ僕は一緒に行ってくれる令嬢を探してくるよ」

意外にもエリオットがティアを誘う。テオは人気があるのですぐに相手が見つかるだろう。
これで概ねパートナーが決まった。ヒューゴ以外は…

「あ…僕は1人で参加するよ」

平民がほとんどいない学校でヒューゴの相手を探すのは難しいだろう。
彼を1人にすることに申し訳なさを感じながら「そっか…」と答えることしかできなかった。

～ヒューゴside～

僕は沈んだ気持ちで寮へと戻る道を歩いていた。

皆は学年末のパーティーで浮かれているが、相手のいない僕にとっては苦痛なだけのイベントだった。

(てっきりジョシュアも1人で参加すると思ってたのに…)

2人なら何とも思わなかったが、自分だけとなると惨めな気分だ。

そんな時、もう関わりたく無い声に話しかけられた。

「おい、ヒューゴ久しぶりだな」

そこにいたのはマヌエルたちだった。

「あ…ハンフリー様、お久しぶりです」

僕は1人で行動していたことを悔いた。

「お前、あの色無しのことどのくらい知ってる？」
「ジョシュアのことですか…？」
「ああ、そいつだ。もし弱みになるようなことを教えてくれたらお前への嫌がらせはやめてやるよ」
「えっ！」

彼らはあの一件以来、表立って絡んでくることはなかったが、陰口や小さな嫌がらせは続いていた。

(ジョシュアの情報を流せばそれが無くなる…？)

「弱み…になるかは分かりませんが…」

僕はジョシュアが平民であること、魔法が使えないこと、アダムス伯爵家の支援を受けていることを話した。

「そんなんじゃ弱みにはならねえな。もっと他に無いのかよ」
「え、えっと…今度の学年末パーティーではアダムス伯爵令嬢と一緒に参加するようです。僕にはその程度しか…」

考えてみればジョシュアは色無しという点が最大の欠点で、他に弱みになりそうなところは思い浮かばなかった。

こんな情報じゃ僕への嫌がらせは無くならないか…そう肩を落としていたが、ハンフリー伯爵令息は何やら考え込んでいた。

「アダムス伯爵令嬢とねえ…ちなみに服はどうするんだ？」
「え？さあ…彼のことですから制服で参加するか…あるいは伯爵令嬢がプレゼントするかもしれませんね」
「ふーん、なるほどな。じゃあお前、当日あの色無しの服全部盗んでこい」
「ぬ、盗む？」
「ああ、あるいは切り裂いてもいいが。とにかく当日あいつが着れる服を無くしてやるんだ」

そしてマヌエルは「そうしたらあいつどうするかな？」と言って笑った。

寝巻き姿で現れるか服がないからと欠席するか…前者なら皆の前で大恥をかく上、ゾーイ嬢にも恥をかかせるだろう。
後者は後者でゾーイ嬢がパートナーなしで参加することになってしまう。そうしたら、すっぽかしたジョシュアはただでは済まされないだろう。

もしかしたら後援を打ち切られるかもしれない。

そう考えると自然と笑みを浮かべている自分がいた。

「分かりました。当日彼の服を切り裂いてやります」　

そうして、僕はマヌエルたちと別れた。

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