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学園生活
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それからというもの、僕とヒューゴは常に一緒に行動するようになった。
1人ではないということがこんなにも心強いとは…そう思いながら友達の有り難みを噛みしめる。
そして今日もヒューゴと一緒に教室を移動しようとしていると、ゾーイに話しかけられた。
「ジョシュ!あなたたちもこれから移動するところ?良ければ一緒に行きましょう」
「ゾーイ嬢。ええ、ぜひそうしましょう」
そう答えた所でヒューゴが僕を小突いた。
「あっ!ゾーイ嬢、紹介が遅れてすいません。こちらは友達のヒューゴです。ヒューゴ、こちらはアダムス伯爵家のゾーイ嬢」
先日頼まれたばかりだというのに気が回らなかった自分が情けない。そう思って慌ててお互いを紹介する。
「こうしてお話しするのは初めてね。いつもジョシュがお世話になっていますわ」
「お話しできて光栄です。それに、ジョシュアには僕の方がお世話になっていますので。あの、僕とも今後は仲良くしていただけると嬉しいです」
「ええ、こちらこそこれからどうぞよろしく」
ゾーイは無難に答え微笑んだ。そして、僕たちは3人で移動することとなった。
「アダムス伯爵家は事業に成功されて勢いのある家門だとお伺いしました。お父様は敏腕なのですね」
「まあ、ありがとう。うちは歴史の浅い家門ですから、父も商人気質なんです」
「そうなんですか!実は僕の家は商家でして、少し通じるものがあるなと思っていたんです」
ヒューゴはゾーイと会話するのに夢中で、僕は2人の後ろを一歩下がって歩く。少し寂しいが彼にとっては貴族と懇意になるチャンスだ。
これくらいは我慢しないとと自分に言い聞かせた。
そして、彼らの後を歩いているうちに広々としたグラウンドに出た。ここでは魔法の実習を行うのだ。
魔法が使えない僕も一応は授業に参加するつもりだ。
そもそも魔法が使えないのに学園に入学する者などいないので、教師陣も僕にどう接すれば良いかわからないようで、無理だと思ったら見学でも良いと言われている。
「あれ?ジョシュアは色なしなのに授業に参加するの?」
他のクラスメイト達が集まっているグラウンドの中央に向かおうとした僕に、ヒューゴが不思議そうな顔をする。
僕は彼の言葉に一瞬胸がズキッとした。色無しは蔑称だ。彼の雰囲気からして、そんな意図で言ったのではないと思うが友達にそう呼ばれたことに気分が沈む。
「ジョシュ、大丈夫?」
何がとは言わないが、ゾーイが心配そうに言葉をかけてくれる。
「うん、全然大丈夫だよ」
僕は努めて明るい声でそう答え、他の生徒達に合流した。
1人ではないということがこんなにも心強いとは…そう思いながら友達の有り難みを噛みしめる。
そして今日もヒューゴと一緒に教室を移動しようとしていると、ゾーイに話しかけられた。
「ジョシュ!あなたたちもこれから移動するところ?良ければ一緒に行きましょう」
「ゾーイ嬢。ええ、ぜひそうしましょう」
そう答えた所でヒューゴが僕を小突いた。
「あっ!ゾーイ嬢、紹介が遅れてすいません。こちらは友達のヒューゴです。ヒューゴ、こちらはアダムス伯爵家のゾーイ嬢」
先日頼まれたばかりだというのに気が回らなかった自分が情けない。そう思って慌ててお互いを紹介する。
「こうしてお話しするのは初めてね。いつもジョシュがお世話になっていますわ」
「お話しできて光栄です。それに、ジョシュアには僕の方がお世話になっていますので。あの、僕とも今後は仲良くしていただけると嬉しいです」
「ええ、こちらこそこれからどうぞよろしく」
ゾーイは無難に答え微笑んだ。そして、僕たちは3人で移動することとなった。
「アダムス伯爵家は事業に成功されて勢いのある家門だとお伺いしました。お父様は敏腕なのですね」
「まあ、ありがとう。うちは歴史の浅い家門ですから、父も商人気質なんです」
「そうなんですか!実は僕の家は商家でして、少し通じるものがあるなと思っていたんです」
ヒューゴはゾーイと会話するのに夢中で、僕は2人の後ろを一歩下がって歩く。少し寂しいが彼にとっては貴族と懇意になるチャンスだ。
これくらいは我慢しないとと自分に言い聞かせた。
そして、彼らの後を歩いているうちに広々としたグラウンドに出た。ここでは魔法の実習を行うのだ。
魔法が使えない僕も一応は授業に参加するつもりだ。
そもそも魔法が使えないのに学園に入学する者などいないので、教師陣も僕にどう接すれば良いかわからないようで、無理だと思ったら見学でも良いと言われている。
「あれ?ジョシュアは色なしなのに授業に参加するの?」
他のクラスメイト達が集まっているグラウンドの中央に向かおうとした僕に、ヒューゴが不思議そうな顔をする。
僕は彼の言葉に一瞬胸がズキッとした。色無しは蔑称だ。彼の雰囲気からして、そんな意図で言ったのではないと思うが友達にそう呼ばれたことに気分が沈む。
「ジョシュ、大丈夫?」
何がとは言わないが、ゾーイが心配そうに言葉をかけてくれる。
「うん、全然大丈夫だよ」
僕は努めて明るい声でそう答え、他の生徒達に合流した。
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