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やり直し
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そうして勉強に励む日々が続き、気づけば僕は11歳、ティアたちは9歳になっていた。
そんなある日、ティアが両親に呼び出された。
テオ1人が呼ばれることはあっても、僕やティアが呼ばれることなど滅多に無かったので、どうしたのだろうだろう疑問に思う。
テオも同じ気持ちだったようで、僕たちは2人、珍しいこともあるものだと談笑していた。
すると、突然扉が開いてティアが勢いよく入ってきた。
「お兄様!」
「ティア?どうしたんだ、そんなに慌てて。」
「礼儀も何も無いね。侯爵令嬢が聞いて呆れる。」
「テオはうるさい!」
そう言ったティアは本人も混乱した様子で僕に抱きついてきた。
「お兄様!私、王子の婚約者になったの!」
「「は?」」
僕とテオの声が重なる。それぞれの疑問は異なるだろうけれど、一様に驚いたのだ。
(ティアが、婚約?まだ9歳なのに…?)
過去で一族郎党死刑になったのはティアが聖女に毒を盛ったからだが、その根本は婚約者たる王子が聖女と恋仲になったことだった。
僕は、前世でティアがいつ彼と婚約を結んだのか知らなかったので、すっかり忘れていた。まさか、こんなにも早くからだったとは…
「ティアは王子と会ったのかい?」
「いいえ、まだよ。お父様とお母様に、私が婚約者に内定したからって呼び出されたの。」
「こいつを婚約者にだなんて、王家も見る目がないな。」
「だからテオは黙っててよ!」
嫌な動悸がする。もうティアと王子の婚約が決まっているなんて。
「それで、ティアはその話、受けるのかい?」
「受けるも何も…私に選択権なんかないわ。」
それもそうか。あの両親がこんないい話を蹴るわけがない。
「それにね、私実は嬉しいの。王子とはまだ会ったこともないけど、私が婚約者になったからお父様と
お母様すごく喜んでいたのよ。」
嬉しそうに話すティアに、言葉が続かない。
普段は両親のことなど気にしていない風に振る舞っていた彼女だったが、やはり本当はちゃんと愛されたかったのだろう。
「そう…か。それは、おめでとうティア。」
僕は思ってもいない言葉をなんとか絞り出す。今の彼女にかける言葉はこの他に見当たらなかった。
それに親同士の約束で決まった婚約だ。とても不安だが、僕がどうこうして避けられるものでは無かっただろう。
だから、ひとまずは成り行きを見守ろうと思う。そして叶うことならこの婚約が上手くいくよう力を尽くそう。
おそらくティアの性格は前世とは異なる。もしかしたら、王子ともうまくいくかもしれない。
そんな淡い希望を抱きつつ、もしもの時を考える。
もし、また過去と同じような運命を辿ることになるのならば…ティアとテオだけでも救う手立てを用意しなくては。
そう思って、幸せそうに笑うティアの頭を撫でた。
そんなある日、ティアが両親に呼び出された。
テオ1人が呼ばれることはあっても、僕やティアが呼ばれることなど滅多に無かったので、どうしたのだろうだろう疑問に思う。
テオも同じ気持ちだったようで、僕たちは2人、珍しいこともあるものだと談笑していた。
すると、突然扉が開いてティアが勢いよく入ってきた。
「お兄様!」
「ティア?どうしたんだ、そんなに慌てて。」
「礼儀も何も無いね。侯爵令嬢が聞いて呆れる。」
「テオはうるさい!」
そう言ったティアは本人も混乱した様子で僕に抱きついてきた。
「お兄様!私、王子の婚約者になったの!」
「「は?」」
僕とテオの声が重なる。それぞれの疑問は異なるだろうけれど、一様に驚いたのだ。
(ティアが、婚約?まだ9歳なのに…?)
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「こいつを婚約者にだなんて、王家も見る目がないな。」
「だからテオは黙っててよ!」
嫌な動悸がする。もうティアと王子の婚約が決まっているなんて。
「それで、ティアはその話、受けるのかい?」
「受けるも何も…私に選択権なんかないわ。」
それもそうか。あの両親がこんないい話を蹴るわけがない。
「それにね、私実は嬉しいの。王子とはまだ会ったこともないけど、私が婚約者になったからお父様と
お母様すごく喜んでいたのよ。」
嬉しそうに話すティアに、言葉が続かない。
普段は両親のことなど気にしていない風に振る舞っていた彼女だったが、やはり本当はちゃんと愛されたかったのだろう。
「そう…か。それは、おめでとうティア。」
僕は思ってもいない言葉をなんとか絞り出す。今の彼女にかける言葉はこの他に見当たらなかった。
それに親同士の約束で決まった婚約だ。とても不安だが、僕がどうこうして避けられるものでは無かっただろう。
だから、ひとまずは成り行きを見守ろうと思う。そして叶うことならこの婚約が上手くいくよう力を尽くそう。
おそらくティアの性格は前世とは異なる。もしかしたら、王子ともうまくいくかもしれない。
そんな淡い希望を抱きつつ、もしもの時を考える。
もし、また過去と同じような運命を辿ることになるのならば…ティアとテオだけでも救う手立てを用意しなくては。
そう思って、幸せそうに笑うティアの頭を撫でた。
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