悪役令嬢の兄のやり直し〜侯爵家のゴーストと呼ばれた兄ですが、せめて妹だけは幸せにしたいと思います〜

ゆう

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やり直し

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目が覚めると自分の部屋の天井が目に入った。僕は確か首を刎ねられ死んだはずなのに‥。そう思ってベッドの上から辺りを見渡す。

死後の世界にしては、自室というのは違和感がある。そうして起き上がったところで気づいた。なんだか視線が低い。
体のパーツも小さくて、まさかと思って鏡の前まで移動してみた。すると、そこに写っているのは、幼い頃の僕だった。多分2歳くらいだろうか。

一体何が起きたのかわからない。死んだ後に夢でも見てると言うのだろうか。そうして考え込んでいると、部屋の外が騒がしくなった。

僕はそっと部屋を出て使用人の1人を呼び止めた。

「何があったの?」
「坊ちゃん!遂にお嬢様がお生まれになったんですよ!」

その言葉に僕は反応することができなかった。

(お嬢様?アリスティアが…生まれた?)

確かにアリスティアは僕が2歳の頃に生まれた。ということは僕は14年前に戻ってしまったということになる。

僕はそれを確かめるために慌ててアリスティアがいる部屋へと走った。もう無事取り上げられて、部屋に寝かされているらしい。

部屋の前、乱れた息を整えるように深呼吸をしてそっとドアに手をかける。中には豪華な揺り籠がひとつ、ポツンと置いてあった。

恐る恐るその揺り籠に近づいて中を覗き込む。そこには、ついさっき生まれたばかりのアリスティアがいた。

「あ…」

咄嗟に言葉が出ず、気づけば涙が溢れていた。

「アリス、ティア…」

そう呼び掛けながら手を伸ばせば、アリスティアはキャッキャっと笑いながら僕の指を握った。

「っ!」

(これは、一体…僕は、時間が戻って…?)

混乱する状況で必死に考える。だけどこれは夢では無い。どうやら僕は14年前の2歳の頃に戻ってしまったらしい。

アリスティアがあ「あうあう」と言いながらもう片方の手を僕に伸ばす。何だろうと思って顔を近づけると、彼女の手が僕の涙の跡をなぞった。

「ああ‥」

これはきっと神様がやり直すチャンスをくれたんだ。

そう思った僕はアリスティアの手をそっと包み込んだ。

「アリスティア。約束した通り、今度はちゃんとお兄ちゃんとして君を愛するから。」

今度は自分を守るために引きこもったりしない。

14年後にアリスティアが処刑されるような未来を避けるため、彼女が幸せになれるよう僕は精一杯良いお兄ちゃんになろう。

そんな決意を胸に、僕はアリスティアの手にそっとキスをして部屋を後にした。
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