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本編
仕返し(アルフレッドサイド)
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当日。
王都の闘技場もかくやといった観客にさすがのギルバートも緊張しているのがわかる。その様子にほくそ笑んで俺はやつを中心に引っ張っていった。
司会が決闘を開始する合図を出す。
絶対にギルバートに見せ場など作らせてやるものか。俺は、速攻でやつに切り込んだ。
「っ!」
すんでのところで剣を受け止めたギルバートが苦しげな息を吐く。その焦燥を滲ませた表情は、勇者の修行中に何度も想像したもので、俺は気持ちが高揚するのを感じた。
(そろそろ恥をかかせてやるか。)
俺はそう思って鍔迫り合いをしていたギルバートを吹っ飛ばした。やつは驚いた顔をして、咄嗟に受け身を取り損ねたようだ。
頭を打ったあいつに、大丈夫だろうかと少し心配になる。何も殺してやりたいとか大怪我をさせたいというわけではないのだ。
「ぐっ」
うめき声をあげながら起き上がったギルバートに、安心と同時にまだまだこれからなのだから当然だという気持ちになる。
だがあまり怪我はさせないように気をつけよう。そう思って詰め方を変える。2本の剣と魔法を使って、周りにも本人にも実力差がしっかりわかるようにじりじりと追い詰めていく。
手加減しているとはいえ、なんとか応戦しているギルバートを流石だなと感心する。王都の騎士達ならもう対応しきれずに降参しているところだ。
(だけど、そろそろ終わらせてやろう。)
俺は一気に詰め寄りギルバートを吹っ飛ばす。盛大に尻餅をついたギルバートに追い討ちをかけるように柄で殴り、次は足を払ってやる。
俺はギルバートのプライドをズタズタにしてやりたくて、何度もやつが立ち上がるのを阻止した。
(楽しい・・・)
自分の足元で、立ち上がることもできずに蹲っているギルバートを見ると、言いようのない高揚感を感じた。周りの嘲笑に耐えきれず俯くギルバートに、むくむくと嗜虐心が顔を出す。
すると意を結したかのように突然顔を上げたギルバートと目があった。少し涙が浮かんでいるグレーの瞳は、青空を反射していて息を呑むほど美しい。
俺はドキッとしてギルバートの瞳に見惚れた。すると突然剣先を掴まれた。やつの手から血が滴り落ちる。
まさかそこまでするとは思わなくて、俺は驚いて剣を引っ込めた。その引っ張る力を利用して立ち上がったギルバートは、いつもの傲慢そうな雰囲気をとりもどして不敵に笑っていた。
別にこれで勝ちが見えた訳でもないのに、なぜ笑えるのだろうか。俺は不思議に思ってギルバートを見た。
「傭兵をやってるくせに、手を怪我していいのかよ。」
「怪我も何も、ここでただ負ければ傭兵業なんて続けられなくなるっての。」
「あっそ」
正直、ここまで無茶をするとは思わなかった。・・・少しだけギルバートのことを格好いいと思ってしまう。
(昔からそうだった・・・ギルバートは負けず嫌いで努力家だったんだ。)
傲慢なところが玉に瑕だが、あいつは基本的に頑張り屋だった。子供の頃は真っ直ぐに頑張れるあいつが羨ましくて、そんなあいつに見下されていることが耐えられなかったのだ。
だが自分の気持ちを再認識したところで、当然勝ちを譲る気はない。
立つのもやっとなギルバートを再び地面にねじ伏せ、立ち上がれないよう2本の剣を首元に突き立てる。
「はい、もうお終い。反撃できるならやってみてもいいけど?」
「・・・・・・・・・・・・降参する。」
ほんの少しの抵抗を見せたギルバートだったが、やがて諦めたようだ。その言葉に念願の夢が叶ったのだと喜びが溢れてくる。
司会者が高らかに勝利を宣言する。俺は足元に転がったギルバートをそのままに声援に応えた。
「おい!いい加減剣をどかせ!」
足元でギルバートが喚いているが、この状況がなんとも心地よかった俺は、しばらくそのまま声援に応え続けた。
王都の闘技場もかくやといった観客にさすがのギルバートも緊張しているのがわかる。その様子にほくそ笑んで俺はやつを中心に引っ張っていった。
司会が決闘を開始する合図を出す。
絶対にギルバートに見せ場など作らせてやるものか。俺は、速攻でやつに切り込んだ。
「っ!」
すんでのところで剣を受け止めたギルバートが苦しげな息を吐く。その焦燥を滲ませた表情は、勇者の修行中に何度も想像したもので、俺は気持ちが高揚するのを感じた。
(そろそろ恥をかかせてやるか。)
俺はそう思って鍔迫り合いをしていたギルバートを吹っ飛ばした。やつは驚いた顔をして、咄嗟に受け身を取り損ねたようだ。
頭を打ったあいつに、大丈夫だろうかと少し心配になる。何も殺してやりたいとか大怪我をさせたいというわけではないのだ。
「ぐっ」
うめき声をあげながら起き上がったギルバートに、安心と同時にまだまだこれからなのだから当然だという気持ちになる。
だがあまり怪我はさせないように気をつけよう。そう思って詰め方を変える。2本の剣と魔法を使って、周りにも本人にも実力差がしっかりわかるようにじりじりと追い詰めていく。
手加減しているとはいえ、なんとか応戦しているギルバートを流石だなと感心する。王都の騎士達ならもう対応しきれずに降参しているところだ。
(だけど、そろそろ終わらせてやろう。)
俺は一気に詰め寄りギルバートを吹っ飛ばす。盛大に尻餅をついたギルバートに追い討ちをかけるように柄で殴り、次は足を払ってやる。
俺はギルバートのプライドをズタズタにしてやりたくて、何度もやつが立ち上がるのを阻止した。
(楽しい・・・)
自分の足元で、立ち上がることもできずに蹲っているギルバートを見ると、言いようのない高揚感を感じた。周りの嘲笑に耐えきれず俯くギルバートに、むくむくと嗜虐心が顔を出す。
すると意を結したかのように突然顔を上げたギルバートと目があった。少し涙が浮かんでいるグレーの瞳は、青空を反射していて息を呑むほど美しい。
俺はドキッとしてギルバートの瞳に見惚れた。すると突然剣先を掴まれた。やつの手から血が滴り落ちる。
まさかそこまでするとは思わなくて、俺は驚いて剣を引っ込めた。その引っ張る力を利用して立ち上がったギルバートは、いつもの傲慢そうな雰囲気をとりもどして不敵に笑っていた。
別にこれで勝ちが見えた訳でもないのに、なぜ笑えるのだろうか。俺は不思議に思ってギルバートを見た。
「傭兵をやってるくせに、手を怪我していいのかよ。」
「怪我も何も、ここでただ負ければ傭兵業なんて続けられなくなるっての。」
「あっそ」
正直、ここまで無茶をするとは思わなかった。・・・少しだけギルバートのことを格好いいと思ってしまう。
(昔からそうだった・・・ギルバートは負けず嫌いで努力家だったんだ。)
傲慢なところが玉に瑕だが、あいつは基本的に頑張り屋だった。子供の頃は真っ直ぐに頑張れるあいつが羨ましくて、そんなあいつに見下されていることが耐えられなかったのだ。
だが自分の気持ちを再認識したところで、当然勝ちを譲る気はない。
立つのもやっとなギルバートを再び地面にねじ伏せ、立ち上がれないよう2本の剣を首元に突き立てる。
「はい、もうお終い。反撃できるならやってみてもいいけど?」
「・・・・・・・・・・・・降参する。」
ほんの少しの抵抗を見せたギルバートだったが、やがて諦めたようだ。その言葉に念願の夢が叶ったのだと喜びが溢れてくる。
司会者が高らかに勝利を宣言する。俺は足元に転がったギルバートをそのままに声援に応えた。
「おい!いい加減剣をどかせ!」
足元でギルバートが喚いているが、この状況がなんとも心地よかった俺は、しばらくそのまま声援に応え続けた。
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