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第三章『王子様、現る!?』

第73話 これは身勝手なオナニーだから ★

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「ヒミカさん! もう止めてください!」

 涙でぐちゃぐちゃの視界の端で、クライドが懇願している。

「もう、観てられないです。ヒミカさんが泣く姿も、僕の知らない男とセックスするのも……っ!」

 内股で股間をもじもじとさせている姿は苦しそうで、それでもヒミカがクライドとの性行為で喘ぐ姿をオカズにはしまいと必死に耐えている。

「ごめんユーマっ! はしたないよね、幻滅するよね? でも止められないのっ。勇者とか魔王とか、戦線とか戦いとか、黒い感情が頭の中でぐちゃぐちゃで、こうしてオナ二―している時だけ、白くてほわほわした気持ちにさせてくれるのっ♡」

 カエルのように一心腐乱に腰を振るだけで飽き足らず、幻影に命じて自分の乳首を摘まみあげる。
 愛する人と繋がり合うためのセックスではない。
 ただひたすら身勝手な自慰行為。
 
 心の中の負の感情を快感で流し去るほど気持ちよければ、それでいい。

「く、クク……。魔王の眷属でオナニーとは恐れ入る。俺への復讐のつもりかよ」

「ふくしゅう? なぁに、それ。えっちより気持ちいいの?」

 もはや他のことはどうでもよくなっていた。
 勇者だとか魅了だとか関係ない。
 
 目の前に通常のサイズを遥かに越えた、延唾ものの巨根がある。
 ヒミカはそれを受け入れるヴァギナを持っている。
 性器と性器をくっつけてしまったらもう、誰だって気持ちよくなることしか考えられない。

「くっ、何が勇者だ……この淫婦みたいな悪魔め」

「悪魔? 何言ってるの? ヒミカもクライドも人間でしょ? ヒミカ達は今、神様が生き物に与えた性行為っていうご褒美を楽しんでるの♡」

「そうか、よ……。けどいいのかよ。いくら抑えつけようが、俺の精液はいずれヒミカの子宮にぶちまけられるぞ」

「大丈夫。ヒミカね、弱い生命体の精液は全部魔力に変換されちゃうらしいから」

「果たして、魔王の眷属でも同じかな? かはっ……一度でも孕んでしまったら最後、お前は勇者から魔族の仲間入り。世界の全てを敵に回す……だろう、よ……。ぐっ……」

「クライド? もう限界なの? おちん×んがもうとんでもないくらいパンパンになってるよ♡ あ、ヒミカもイきそう♡ クライドの言う通り、魔王の眷属ペニスで堕天しちゃうっ♡」

 魔王族の子を孕むという禁忌。
 ヒミカの首筋に冷や汗が伝うも、もはや止められない。
 滝を流れる水を止めることなどできないのと同じで、快楽という神が授けし祝福のろいに抗うことなどできやしない。

「がっ……ヒ、ミカ……ごぼぼぼ」

 拷問にも近い射精管理と血を流し過ぎた影響か、クライドは口から悪態の代わりに泡を吹いてしまっている。
 剣扇で縫い留めた手の先から、まるで灰になるかのように少しずつ形が崩れていく。
 温かく生を感じられるのは、ヒミカの膣に埋まる性器だけだ。

「あ、ああっ……♡ もう、イくのね? クライドの精子たち、ヒミカが全部受け止めてあげるねっ♡」

 絶頂を予感する。
 全身がぶるりと期待に震え、ストロークする腰の動きがさらに早く、深くなる。

「ヒミカもイくっ♡ 今までで一番気持ちいオナ二―でいくっ♡ すんごいのクるっ♡」

 全身が汗と涙でぐちゃぐちゃの顔がひっくり返るくらい仰け反って、後ろのユーマ達と目が合った。

「ググ、う、おおおオオオオッ!」

 クライドが咆哮し、ヒミカの幻影が驚いたようにペニスを縛る手を解放した。
 というより、これ以上抑えることができず暴発した。
 幻影は力尽きたかのように霧散してしまう。

「イっ──くぅ、あ、ンぁあああああああああああああっ♡」

 びっっっびゅうくううううううっ!
 ごびゅるるるるるるっ!
 びびゅくううううううううううううっ!

「んあああああぁっ!? 魔王の眷属精液しゅごいいいっ!? 子宮が溢れて壊れちゃうっ!?」

 亀頭が既に子宮の最奥まで達している、限界まで肥大化したペニスの射精。
 その勢い、吐出量は噴射と呼ぶ方がふさわしい。

 異形の生殖器は主が瀕死のため、子孫を残そうとより多く、濃い精液を雌の胎内へと送り込むのだ。
 手足の感覚すら希薄になり、身体の中心に感覚の全てが集中する。

「ンはあああっ♡ ヒミカの中に、クライドが入ってくるっ♡ 子宮に残ってたジャイアントオークのよわよわ精子が成敗されちゃってるっ♡ 精子たちが、ヒミカを孕ませるのは自分たちだって必死になって泳いでるっ♡」

 長くて太い肉棒は挿入するだけでとてつもない圧迫感で苦しいのに、媚肉は手を差し伸べるようにペニスに絡みつき、脈動の手助けをしている。

「おっっ♡ んおおおっ♡ またイくっ!? 頭の中にしゃせーされてるみたいにドロドロで、もうわけわかなんないっ♡」

 クライドの身体の血液が全て精液に置き換わったかのように、延々と射精は続いた。
 子宮はとっくに許容量を超え、愛液と精液が溶け合った体液が逆流して潮吹きのようにヴァギナから溢れ出す。
 瞬く間に床が浸水したかのような大きな精液プールが形成されて、匂いだけで想像妊娠すらしてしまいそうな程の生臭く芳しい臭気が充満した。

「いくっ♡……っあ、ああっ。う、うぅっ………うっ……ひっく」

 見守ることしかできないユーマにとって耳を塞ぎたくなるような嬌声は、やがてすすり泣きに変わっていく。
 心臓の鼓動のような脈動が少しずつ弱くなり、途絶えた時にはクライドの身体は首から上だけを残して全て灰になっていた。

「クライド……」

 眠るような顔は安らかで、学び舎スクールの時と変わらない、幼く無邪気な顔だった。

「おつかれ、ヒミカ」

「ヒミカさん!」
 
 リルムがボロボロの衣装を脱いでヒミカに着せて、ユーマは脱ぎ捨てられた真紅のベラを手に駆け寄った。

「僕は知ってます。ヒミカさんは何も悪くありません。元々、クライドはヴィーヴィルに感染して、暴走した時点で死ぬことは避けられなかったのです」

「そーそー。ユーマの言う通り。ここは泣くところじゃなくて勝利のぽーずでしょ。それにクライドの顔を見なよ。すっごく幸せそうじゃんか。よっぽどヒミカとのえっちが気持ち良かったんだろうねぇ」

 もう一度振り返ると、クライドの身体は全て消滅してしまっていた。
 今となっては、灰の山に突き刺さった剣扇しか残っていない。

「でも、私……っ! 私が、クライドのことを……っ! クライドのことが……っ!」

 泣き止まないヒミカをたしなめることなく、リルムは小さな身体でヒミカをぎゅっと抱きしめた。

「ヒミカには、もっと相応しい相手がいるよ。案外、またすぐに現れるものさ」

「……お腹、苦し」

「へ?」

 ヒミカが口元を押さえる。
 よく見ると、妊婦のようにお腹が大きく膨らんでいる。

「あらら。あんなに精子ごくごくしちゃったら、そりゃそうなるね」

「ってことはまさか……っ!?」

 血相を変えて絶望するユーマ。

「なんか、産まれそう……っ!」

 やがて淫紋が激しく明滅し、辺りが眩い光に包まれる。
 けれど、光は徐々に萎んでいって元に戻ってしまう。
 苦しさもすっかりと消えてしまっていた。

「やっぱり、クライドの精子も全部、魔力に変換されちゃったみたいね」
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