【完結】【R-18】三十歳童貞を貫いて魅了魔法を習得。先輩に復讐H、好きな子と即ハメして決意する。「それは、僕自身が淫魔になることだ」

湊零

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第三章『魅了H。駆出し淫魔は大悪魔に誘惑され、黒い天使は嫉妬する』

第五十六話「シトラスとミカエリの過去(後編)」

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 人間界。
 河川敷の高架下。

 二人の若い男女が、ぴっちりと纏っていた衣服を乱し、荒い息を吐きながら互いの性器をくっつけ合っている。

 私は、その場から一歩も動くことができず、目玉だけが食い入るように、二人の様子をフォーカスしていた。

「あれは……何なの、ミカエリ?」

 ミカエリが片手で視界を閉ざしながら、耳打ちする。

「人間の、性行為です」

「性、行為……?」

 言葉の意味は知っていたが、実際に目にするのは初めてだった。

 天界では、人間のような生殖行為は必要ない。
 当然、人間の真似をすることも、不必要に性器を刺激することも、卑猥な妄想をすることさえ禁じられている。

「つまり、繁殖行為ですね。でも、彼らはまだ幼い。それなのに、白昼堂々と公衆の面前で……。しかも避妊もしていません……。大問題ですね。いたずらに、快楽を貪る、卑猥で淫蕩な、悪です」

 ガリガリと、気難しい表情をしながら、高速で洋紙に記録していく。
 きっと、天使長に報告するつもりなのだろう。

「シトラスも、あまり見ないようにして早く記録してください。私は女性の方を、シトラスは、男の方を」

「ミカエリ……。私も、アレ、したい」

「は?」

「私も、性行為、してみたい……!」

 下着の中で何かドロッとしたものが垂れる感触があった。
 不快感は一切なくて、それどころか、下腹部が熱を持ったように疼く。

「何言ってるのですかシトラス! 生殖目的でなく性行為をするなど、悪そのものです! 天使長に一〇〇〇〇人の悪人を報告しなければ、日が暮れるまでに帰れないのですよ!」

 隣でミカエリが喧しく叫んでいるか、ちっとも耳に入らない。

 代わりに鼓膜に滑り込んでくるのは、淫らに滴る水音と、熱に浮かされたような喘ぎ声だ。

『あっ、あああっ。イクっ。一番奥でイっちゃう……』

『俺、もう我慢できない……! 膣内なかでイくよ……』

『うん、来て……』

『く、ううっ』

『んああああっ、熱いの射精てるっ! 子宮にいっぱい溢れちゃうっ……んあああっ』

 これでもかというくらい激しく密着した二人は、同時に身体を震わせる。
 激しく身体を痙攣させて、愛情を確かめ合うように再び身体を弄り合い始めた。
 
 彼らに、悪や罪を犯している感情はない。
 ただ、二人を包む愛情と、肉体に触れる悦びを味わっている。
 
「すごい……気持ちよさそう……」

 私は、下着の中に手を入れた。

「……んんっ!」

 少し触れただけで、今まで経験したことのない痺れるような快感が、下腹部から脳みそを直撃した。

「気持ちいい。だから、禁止されてるんだ……」

 禁断の扉を開いたかのような、ぞくぞくとした感覚。
 止まらない……。いや、止められない。

「何してるんですか、シトラス! あなた本当に帰れなくなりますのよ!」

「……はぁっ、はぁ……っ」

 私は気にせず指を下着の中で掻きまわす。
 それだけじゃ足りなくて、空いた手で、膨らんだ胸の先端を擦ってみる。

「──ああっ!」

 バチバチィ! 
 白い電のような快感が迸り、足腰に力が入らなくなった。

 そんな様子を見かねたミカエリの声が、ようやく聞こえてきた。

「もう知りません! シトラス、貴方も人間達と同じように罰せられればいいのです。日が暮れて、天界へ帰れなくなっても、私はもう知りませんから!」

 そそくさと情事に耽る男女を置いて、ミカエリはどこかへ飛んでいいってしまった。

 私は、未だ腰を振り続けている彼らの傍らで、自分の性器を弄る背徳感と快楽に浸っていた。


  ◆
 

「……はっ!?」

 気付けば、オレンジ色の夕焼けが漆黒に覆われる直前の空模様だった。

 私はずっと一人で慰めていたあと、そのまま眠ってしまったようだ。

「どうしよう、帰らないと……」

 しかし、天使長から一〇〇〇〇人の悪人を見つけて報告しろと命じられていた。
 けど、たったの一人も私は記録していない。

 性行為をしていた彼らはもういない。

 今のまま帰ったら、天使長になんて言われるか。
今までも散々サボってきた自分だ。今回ばかりは、とんでもない罰が待ち受けているのかもしれない。

「……帰りたく、ないな……」

 そうこう悩んでいる内に、空は完全な黒に染まってしまった。

 陽が出ている時間にのみ、人間界と天界は繋がる。
 つまり、夜の間は、天界に帰ることはできない。

 そして……。

「な、何……?」

 急に風が強く吹き始め、辺り一帯の雑草が激しくざわめく。
 一瞬の後、目の前に黒い人影が現れ、こちらを見下ろしていた。

「フム。哀れな子供かと思いきや、これはこれは。天界の落とし物かな?」

 凄みのある女声。

 露出の激しいネグリジェに、官能を刺激する豊満な肉体。
 背中に生えたるは、自身のそれと対を為す、漆黒の翼。

 思い出す。

 陽が暮れた夜の世界。
 閉ざされた天界と入れ替わるように繋がる、魔界。

 眼前の女性は、人間ではない。

「我が名はシトリー。情欲を支配する大悪魔である」

「悪魔……」

 その存在は、天界を常に脅かすものとして、危険視されていた。

 あらゆる享楽と破壊を望み、人間をそそのかす。
 時に天界さえも支配しようと企む、凶悪。

 しかも、翼の濃度具合から、まちがいなく上級悪魔だ
 何の力も持たない天使が、一度出会ってしまったら、まず命はない。

「…………」

 ジロリとこちら睨む威圧に、私は動くことも喋ることもできない。
 その恐怖に、下腹部に溜まっていた粘液がどろりと漏れた。

「……殺される、と思ったか?」

「え……?」

「はてさて、今の我は気分がよい。貴様のような子供相手にムキになったりはせん。どうだ? 貴様さえよければ、朝まで我の下で匿ってあげようか?」

 人を簡単に誑かす、悪魔の囁き。
 優しい言葉に騙されてはいけない。

 私、は……。

「わ、私を、弟子にしてくださいっ!」

 空に放たれた私の言葉に、さすがの上級悪魔の困惑した表情を浮かべた。

「笑わせる。子供は素直に『帰りたい』と泣き叫べばいい。それを肴に、今宵は許してやると言っているんだ。二言はないぞ?」

 ぞわっ!
 周囲の大気が震え、重苦しい圧がのしかかる。
 優しくしたつもりが、逆にからかわれたと思っているのかもしれない。

「本気です。私、もっともっと気持ちよくなりたい! あの人たちのように、好きなだけ!」

 乱れた衣服を脱ぎ捨てる。
 恐怖で足が竦んでいるハズなのに。
 乳首はツンと固く尖り、下腹部はしとどに濡れ、愛液が太ももを伝っていった。

 それを見て何かを察したのか、高らかに笑い始めた。

「は、ははっ! 面白い!」

 目の前で大きな胸が妖しく揺れる。
 自分にはない成熟した胸に、官能が刺激される。

「我ら悪魔は堕落という言葉が大好物だ。自ら堕ちる覚悟があるのなら……ついてこい」
 
 こうして、私は魔界の悪魔に魅了されたのだった。
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