上 下
54 / 74
第三章『魅了H。駆出し淫魔は大悪魔に誘惑され、黒い天使は嫉妬する』

第五十四話「シトラスの正体」

しおりを挟む
「大変申し訳ありませんでした」

 僕は浴室を出たすぐの脱衣所で、全裸土下座を披露する。
 因みにミカエリは激しく絶頂してそのまま伸びてしまったため、冷えピタを張って寝かせてある。……やっぱり全裸で。

「【生命魔力マナ】が溜まった故、魔界に戻ることが可能になった途端、これだ……。我と言うものがありながら、よりにもよってミカエリと……!」

 大悪魔の名に相応しい怒りの業火を纏うシトラス。
 浮気現場のような修羅場。兎にも角にも、まず全裸と言うのは格好がつかない。

「でも、僕が感じた快楽はシトラスにも共有されてWin-Win……ごふっ」

 鮮やかなムーンサルトが僕の頭をかちあげ、そのまま仰向けに倒れる。
 くたびれたペニスを、むんずっ! と、シトラスが踏みつけた。

「せっかく! 我が! 一大決心をしてる最中に……って、反省しているのか宋真!」

「……はい」

「下の手はあげなくてよい!」

 僕が降参の意味を込めて手をあげるのと、ペニスがシ素足の刺激に反応して、むくりと起き上がるのが同時だった。

「でもさ……どうしてまた、魔界なんかへ? 僕だって、シトラスが僕を見捨てて帰ってしまったんじゃないかって、不安だったんだよ」

「む……それは、そうかも、しれぬ、な。安心しろ。我は宋真を見捨てたりはせん。むしろ逆だ」

 シトラスは僕のペニスをぐりぐりと押しつぶしたまま、高らかに宣言する。

「宋真、我と一緒に魔界へ来てもらうぞ!」

「……は? なんで?」

「我が恩師『シトリー』への顔合わせだ。宋真は魅了魔法使いとして十分強くなった。立派な弟子ができたとあれば、恩師も今度こそ、我を悪魔だと認めてくれるであろう」

 宙を見つめながらガッツポーズするシトラス。
 僕は思わず納得しかけて……気づいた。

「待って? 今、『悪魔だと認めて』って言った? 別に、シトラスはもうとっくに悪魔でしょ?」

「それは……そうだが……。その、つまり……」

「つまり……?」

 露骨に歯切れが悪くなる様子に、彼女は何かを隠していることを感じとる。

 そういえば、シトラス自身のことについて、今まで曖昧にしてきた。
 そろそろ、知っておいたほうがいいのかもしれない。

「教えてよ、シトラス。君のことを」

「フムぅ……言われなくても、いずれ明かすつもりだったのだ……でも、今と言うのは、その……心の準備が──」

 その時、僕でもシトラスでもない、第三者の声が僕の鼓膜を突き刺した。

「それは、シトラスが悪魔なんかじゃないからですよ」

 いつの間にか起き上がったミカエリが、ぴしゃりと言い放った。
 胸元にバスタオルを寄せて、何事もなかったかのような冷静さが、冗談ではないことを示していた。
 
「ミ、カエリ……?」

「まだ伝えていなかったんですか……。呆れました。ほんと、シトラスは臆病なくせに無駄に強がりで、そのくせ、悪にもなりきれない半端な心の持ち主ですね」

「ミカエリは、前からシトラスのこと知ってるよね? 二人は、一体どういう関係なの?」

 僕のドライヤーを勝手に使いながら、ミカエリは退屈気に呟いた。

「同僚。……かつて、同じ大天使を目指して同じ皿のパンを食べ合った……天使です」

 その言葉の意味を、僕はすぐに呑み込むことはできなかった。

 だって、目の前にいるシトラスには、天使の輪っかなんてない。

 なにより、背中から生えている黒い羽は、紛れもない悪魔の証じゃないのだろうか。

「シトラス……本当なの?」

「……本当だ」

 観念したようにシトラスがうなだれた。

 嫌な沈黙を破るように、ミカエリが説明を続ける。

「シトラスは私の親友。でも、好奇心に負け、自ら悪魔堕ちした。天界は、同胞が生んだ汚名をそそぐため、私に彼女を拘束するよう命じたのです」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

俺の彼女とセックスしたがる友達に一度だけゴムありならと許可したら、彼女はマンコから精液垂らして帰ってきた。

えんとも
恋愛
彼女とセックスしたがる友達に、最初はフェラから始まり、寝取られ癖が開花した彼氏が、ゴムありでのセックスを許可すると、彼女は中出しされて帰ってきた

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

お屋敷メイドと7人の兄弟

とよ
恋愛
【露骨な性的表現を含みます】 【貞操観念はありません】 メイドさん達が昼でも夜でも7人兄弟のお世話をするお話です。

連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)   「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」 久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...