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第三章『魅了H。駆出し淫魔は大悪魔に誘惑され、黒い天使は嫉妬する』
第五十四話「シトラスの正体」
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「大変申し訳ありませんでした」
僕は浴室を出たすぐの脱衣所で、全裸土下座を披露する。
因みにミカエリは激しく絶頂してそのまま伸びてしまったため、冷えピタを張って寝かせてある。……やっぱり全裸で。
「【生命魔力】が溜まった故、魔界に戻ることが可能になった途端、これだ……。我と言うものがありながら、よりにもよってミカエリと……!」
大悪魔の名に相応しい怒りの業火を纏うシトラス。
浮気現場のような修羅場。兎にも角にも、まず全裸と言うのは格好がつかない。
「でも、僕が感じた快楽はシトラスにも共有されてWin-Win……ごふっ」
鮮やかなムーンサルトが僕の頭をかちあげ、そのまま仰向けに倒れる。
くたびれたペニスを、むんずっ! と、シトラスが踏みつけた。
「せっかく! 我が! 一大決心をしてる最中に……って、反省しているのか宋真!」
「……はい」
「下の手はあげなくてよい!」
僕が降参の意味を込めて手をあげるのと、ペニスがシ素足の刺激に反応して、むくりと起き上がるのが同時だった。
「でもさ……どうしてまた、魔界なんかへ? 僕だって、シトラスが僕を見捨てて帰ってしまったんじゃないかって、不安だったんだよ」
「む……それは、そうかも、しれぬ、な。安心しろ。我は宋真を見捨てたりはせん。むしろ逆だ」
シトラスは僕のペニスをぐりぐりと押しつぶしたまま、高らかに宣言する。
「宋真、我と一緒に魔界へ来てもらうぞ!」
「……は? なんで?」
「我が恩師『シトリー』への顔合わせだ。宋真は魅了魔法使いとして十分強くなった。立派な弟子ができたとあれば、恩師も今度こそ、我を悪魔だと認めてくれるであろう」
宙を見つめながらガッツポーズするシトラス。
僕は思わず納得しかけて……気づいた。
「待って? 今、『悪魔だと認めて』って言った? 別に、シトラスはもうとっくに悪魔でしょ?」
「それは……そうだが……。その、つまり……」
「つまり……?」
露骨に歯切れが悪くなる様子に、彼女は何かを隠していることを感じとる。
そういえば、シトラス自身のことについて、今まで曖昧にしてきた。
そろそろ、知っておいたほうがいいのかもしれない。
「教えてよ、シトラス。君のことを」
「フムぅ……言われなくても、いずれ明かすつもりだったのだ……でも、今と言うのは、その……心の準備が──」
その時、僕でもシトラスでもない、第三者の声が僕の鼓膜を突き刺した。
「それは、シトラスが悪魔なんかじゃないからですよ」
いつの間にか起き上がったミカエリが、ぴしゃりと言い放った。
胸元にバスタオルを寄せて、何事もなかったかのような冷静さが、冗談ではないことを示していた。
「ミ、カエリ……?」
「まだ伝えていなかったんですか……。呆れました。ほんと、シトラスは臆病なくせに無駄に強がりで、そのくせ、悪にもなりきれない半端な心の持ち主ですね」
「ミカエリは、前からシトラスのこと知ってるよね? 二人は、一体どういう関係なの?」
僕のドライヤーを勝手に使いながら、ミカエリは退屈気に呟いた。
「同僚。……かつて、同じ大天使を目指して同じ皿のパンを食べ合った……天使です」
その言葉の意味を、僕はすぐに呑み込むことはできなかった。
だって、目の前にいるシトラスには、天使の輪っかなんてない。
なにより、背中から生えている黒い羽は、紛れもない悪魔の証じゃないのだろうか。
「シトラス……本当なの?」
「……本当だ」
観念したようにシトラスがうなだれた。
嫌な沈黙を破るように、ミカエリが説明を続ける。
「シトラスは私の親友。でも、好奇心に負け、自ら悪魔堕ちした。天界は、同胞が生んだ汚名をそそぐため、私に彼女を拘束するよう命じたのです」
僕は浴室を出たすぐの脱衣所で、全裸土下座を披露する。
因みにミカエリは激しく絶頂してそのまま伸びてしまったため、冷えピタを張って寝かせてある。……やっぱり全裸で。
「【生命魔力】が溜まった故、魔界に戻ることが可能になった途端、これだ……。我と言うものがありながら、よりにもよってミカエリと……!」
大悪魔の名に相応しい怒りの業火を纏うシトラス。
浮気現場のような修羅場。兎にも角にも、まず全裸と言うのは格好がつかない。
「でも、僕が感じた快楽はシトラスにも共有されてWin-Win……ごふっ」
鮮やかなムーンサルトが僕の頭をかちあげ、そのまま仰向けに倒れる。
くたびれたペニスを、むんずっ! と、シトラスが踏みつけた。
「せっかく! 我が! 一大決心をしてる最中に……って、反省しているのか宋真!」
「……はい」
「下の手はあげなくてよい!」
僕が降参の意味を込めて手をあげるのと、ペニスがシ素足の刺激に反応して、むくりと起き上がるのが同時だった。
「でもさ……どうしてまた、魔界なんかへ? 僕だって、シトラスが僕を見捨てて帰ってしまったんじゃないかって、不安だったんだよ」
「む……それは、そうかも、しれぬ、な。安心しろ。我は宋真を見捨てたりはせん。むしろ逆だ」
シトラスは僕のペニスをぐりぐりと押しつぶしたまま、高らかに宣言する。
「宋真、我と一緒に魔界へ来てもらうぞ!」
「……は? なんで?」
「我が恩師『シトリー』への顔合わせだ。宋真は魅了魔法使いとして十分強くなった。立派な弟子ができたとあれば、恩師も今度こそ、我を悪魔だと認めてくれるであろう」
宙を見つめながらガッツポーズするシトラス。
僕は思わず納得しかけて……気づいた。
「待って? 今、『悪魔だと認めて』って言った? 別に、シトラスはもうとっくに悪魔でしょ?」
「それは……そうだが……。その、つまり……」
「つまり……?」
露骨に歯切れが悪くなる様子に、彼女は何かを隠していることを感じとる。
そういえば、シトラス自身のことについて、今まで曖昧にしてきた。
そろそろ、知っておいたほうがいいのかもしれない。
「教えてよ、シトラス。君のことを」
「フムぅ……言われなくても、いずれ明かすつもりだったのだ……でも、今と言うのは、その……心の準備が──」
その時、僕でもシトラスでもない、第三者の声が僕の鼓膜を突き刺した。
「それは、シトラスが悪魔なんかじゃないからですよ」
いつの間にか起き上がったミカエリが、ぴしゃりと言い放った。
胸元にバスタオルを寄せて、何事もなかったかのような冷静さが、冗談ではないことを示していた。
「ミ、カエリ……?」
「まだ伝えていなかったんですか……。呆れました。ほんと、シトラスは臆病なくせに無駄に強がりで、そのくせ、悪にもなりきれない半端な心の持ち主ですね」
「ミカエリは、前からシトラスのこと知ってるよね? 二人は、一体どういう関係なの?」
僕のドライヤーを勝手に使いながら、ミカエリは退屈気に呟いた。
「同僚。……かつて、同じ大天使を目指して同じ皿のパンを食べ合った……天使です」
その言葉の意味を、僕はすぐに呑み込むことはできなかった。
だって、目の前にいるシトラスには、天使の輪っかなんてない。
なにより、背中から生えている黒い羽は、紛れもない悪魔の証じゃないのだろうか。
「シトラス……本当なの?」
「……本当だ」
観念したようにシトラスがうなだれた。
嫌な沈黙を破るように、ミカエリが説明を続ける。
「シトラスは私の親友。でも、好奇心に負け、自ら悪魔堕ちした。天界は、同胞が生んだ汚名をそそぐため、私に彼女を拘束するよう命じたのです」
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