上 下
33 / 74
第二章『告白H。職場のかわいい新社会人に膣内射精したい』

第三十三話「勇気を出して告白したのに、あっさりフるなんて許せないよね?」

しおりを挟む
「ごめんね、倉林さん。こんな時間に呼び出しちゃって。仕事は順調?」

「いえ、正直全然終わってなくて……。私ってトロいんでしょうか……?」

 そりゃあ連日のようにセックスしてたら、終わる仕事も終わらないだろう。

「心配しなくても、僕が今度教えてあげるよ。伊達にこの仕事長くやってないからね」

「本当ですかっ!? 嬉しいですっ。私、ほんとダメで、先輩に助けられてばかりですね」

 倉林さんはぱあっと顔を赤くすると、それを隠すように頬を手で覆う。

 どの指にも指輪はついていなかった。
 あくまで僕には『彼氏がいないけど実はエッチが好きな理想の女の子』を演じ続けるつもりらしい。

「それで、こんな夜更けに人の気配がない場所で、大事な話と言うのは──?」

 そして恥ずかしながらも、僕に話を切り出すように促す。

 うん、倉林さんはトロくなんかないよ。
 これから僕が何を話そうとしているのか、分かっているみたいだし。

「この前言えなかったから、ちゃんと言うね」

 僕は一歩倉林さんの前に踏み出す。
 彼女は特に驚く様子もない。むしろ、これから先出てくる言葉に期待すらしているようだ。

「僕は、倉林さんのことが大好きだ。僕と……恋人として付き合ってほしい」

 時間が停止したかのような、静寂。

 覚悟したとはいえ、正面切って言うのは恥ずかしい。
 でも僕には、百戦錬磨のチャラ男のような、キザったらしい口説き文句は出てこないのだ。

 倉林さんは、わざとらしく『えっ』『うそっ』『告白?』『きゃっ!』なんて小さく呟きながら、焦っている…………フリをしている。

 もう僕を騙すことはできないよ。

「日高先輩、先輩の気持ち、とっても嬉しいですっ。私って、誰かに告白されたことなんて今までなくて、どうしていいか分からなくって……その……」

 なるほど。
 普通のカップルはこんな甘ったるい、けれど心臓が破裂するような緊張感を乗り越えてきたんだ。
 相手の言葉一つで、自分の行く先がバラ色にも暗闇にもなるのだから。

「私、前にえ……えっちな小説書いてるって、先輩に打ち明けましたよね」

「うん、そうだね」

「先輩とお付き合いできるのは嬉しいんですけどっ。そういう関係になったら、きっと私、書く時間が無くなって、趣味を諦めてしまいそうで……」

「つまり?」

「つまりですねっ! そのっ、彼氏彼女ってカンケイじゃなくて、親友……友達ってのはどうでしょうかっ?」

 でたよ。
 男を傷つけないよう、しかしはっきりと関係は断る、研ぎ澄まされた告白回避スキル。

 おそらく、これまでの人生で何十人と告白されて身についたのだろう。
 この常套句で、そのままがっくりと項垂れてその場を後にした哀れな男の事を想うと、深い悲しみを禁じ得ない。
 僕だって、何も知らなかったらきっと同じ行動を取っていただろう。

 だけど、今は違う。
 倉林さん、君は勘違いしているよ。
 今日は、君が僕と付き合うかどうかを決める日じゃない。
 
「それってつまり……僕はフラれたってこと? そんな、傷つくなぁ。告白するのって、すごく勇気がいるんだよ。女の子からすれば、冴えない男子から告白されることが迷惑なんだろうけど、僕の気持ちも少しは考えてほしいな」

「そ、そうですよねっ。ご、ごめんなさいっ。私ったら、いつもいつも日高先輩に迷惑かけてばかりで、全然お返しが足りてないですよね……」

「大丈夫。僕に倉林さんの全部をくれればいいから」

「ぜ、全部、ですかっ!?」

 一体ナニを想像したのか、彼女は無意識に胸を隠すように手で覆い、内腿を擦り合わせる。

「そ、それってつまり、こ、ここここの前のような……」

 あくまで清純ぶるんだね。
 とっくに処女をぶち破ってるのに。

『下衆めっ、さっきから一体何を考えているのです!』

 ふわり、と空気からにじみ出るように、突然ミカエリが姿を現した。

 相変わらず、白髪のロングヘアーに、ホワイトドレス。白く光る輪っかに、汚れなき純白の羽。
 誰がどう見ても天使としか形容できない彼女が、僕を糾弾する。

「ミカエリっ!?」

『聡美は黙ってなさい。そこの下衆。【契約】した悪魔はどこに居るのです? 大方、私に一糸報いる隙でも狙っているのでしょう?』

「ううん、シトラスはもういないよ。……喧嘩、しちゃったからね」

 改めてシトラスが居ない現実を認識し、僕は自然と声が暗くなる。
 それを見たミカエリが高らかに笑った。

『あははは! 悪魔が人間と喧嘩! あはははは! では、そこの下衆は一体何しに聡美の前に現れたのです? 魔法で聡美を振り向かせるつもりですか? いいや、そんなハズないですね。だったらこんな童貞丸出しのような告白、するわけありませんから』

「しかもあっさり断られちゃいましたからね」

 僕があっさり負けを認めると、ミカエリはますます上機嫌になって煽る。

『素直でよろしいですこと。そもそも、そこの下衆に聡美がなびくことはありません。なにせ、聡美は既に殿方が──』

「ちょっ、ミカエリっ! 何を言って──」

「大丈夫だよ、倉林さん」

 僕はにっこりと微笑みかける。

 その優しい顔は、きっと天使の如く柔和な笑みを浮かべていたことだろう。

「全部、知ってるから」

 倉林さんとミカエリ。
 双方が、僕の告白なんかよりも数十倍驚いた顔をして、雷を打たれたように固まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...