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第二章『告白H。職場のかわいい新社会人に膣内射精したい』
第二十九話「喧嘩」
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一九時。
「倉林さんとセックスして、仕事は定時で帰れる。ああ。生きてるって感じだなぁ」
僕──日高宋真は、定時帰り後の時間で、趣味の読書を謳歌していた。
「文芸やSFもいいけど、仕事終わりは官能小説に限る」
自室の本棚に敷き詰められた本の中から、一冊を取り出し、ベッドに寝転がった。
この前シトラスが僕の名前を呼びながらオナニーしていたベッドで。
タイトルは『気になる隣のOLから、『残業しながらセックスしよ?』と言われたので』だ。
内容はもちろん、こんな感じだ。
倉林さんのような可愛いヒロインが、ある日突然セックスに興味があることを主人公に打ち明ける。
その日から、ヒロインとエッチな残業の日々が始まって……という感じ。
今時ありがちなジャンル。
けれど今の僕にとって、興奮度は三倍。
「この晴美っていう巨乳ヒロイン、倉林さんとそっくりなんだよね」
主人公が残業中、突然ヒロインから抱き着かれ、豊満な巨乳を押し付けられる。
『誰もいないですし、今日も秘密の残業、シたいです、先輩──っ』
ズボンの中で僕の息子が起き上がる。
登場人物と自分を重ねられるからだ。
「倉林さんと付き合えたら、晴れて堂々とセックスできるわけか。その内、遊園地の帰りにラブホに泊まったりして。そのまま……ごくり」
恋に悩む乙女のように悶える僕。
普段なら五秒後には『何してんだ、僕』ってなるけど、今はどうでもいい。
そこへ、玄関が開く音がしたと思ったら、シトラスが帰ってきた。
「シトラス! どこ行ってたの? 先に帰ってたかと思ったよ」
「……すまぬ。少し、用事があってな」
「身体は大丈夫? ミカエリが放った光線がシトラスを貫いた時、とても不安で──」
「ああ。先も言ったが、致命傷は避けた。大したことはない。フフ、セックスして忘れたかと思ったら、ちゃんと覚えてる所、宋真の優しさが光るな」
「シトラス、見てたの? あ、感覚共有してるもんね。そうなんだよ! 僕、あの倉林さんとシたよ、セックス。ゴム有りだけど」
「そうか。それはよかったな」
「シトラスと出会ってからどんどんエッチなことができて、幸せだ……ってシトラス? なんか元気ない?」
部屋に入ってくるなり、シトラスは空中で体育座りをしながらゆっくり回転している。
何か思い詰めているようだ。
口調こそいつもの大悪魔モードだけど、なんというか覇気がない。
「う、ウム。そ、宋真が好きな倉林聡美について、大事な話があるんだが──」
「大事な話? うんうんっ、僕もいつかまたチャンスが来たら告白しようと思うんだ。『大事な話があるんだ』って。倉林さんは僕に処女を捧げてくれたんだし、きっと両想いのハズだから大丈夫だよね?」
「聞け、宋真」
「え?」
空中でピタリと静止すると、シトラスは思い切ったように口を開いた。
「宋真の好きな倉林だがな。……木山とかいう男とセックスしていた」
「……へ?」
突然の告白に、僕は耳を疑った。
倉林さんが、なんだって?
うまく聞こえなかったなぁ。
「倉林さんが、僕じゃなくて他の男と? いやいやそれはあり得ないよ」
僕はおかしくて笑ってしまう。
「木山君は倉林さんのOJT担当で、僕とはあまり話しことはないけど、そういう関係じゃない」
「……証拠はあるのか?」
「証拠って……特にないけど」
「宋真。悪いことは言わん。傷が深くなる前に、倉林のことは忘れて他の女とセックスしろ。相手がいないなら新たに仕事を探せ。今の我ではミカエリにも太刀打ちできないし、丁度いい頃合いだ」
「ちょっちょっと勝手なこと言わないでよ、シトラス。やっと僕にも人並みの幸せが来そうって時なのに、どうしてそんなテキトーなこと言うのさ」
「テキトーではない、我は見たのだ!」
「じゃあシトラスの方こそ、証拠はあるの?」
「……それは」
ばつが悪そうに視線を逸らすシトラス。
さっきから倉林さんから僕を遠ざけようとしてくる。
一体何なんだ。
さっきまでの幸せな妄想をぶち壊された気分になって、少し苛立ってしまった。
「もうこの話はおしまい。僕は好きで図書館司書になったんだし、シトラスには悪いけど、今は倉林さんのことしか頭にないから」
「そんな。では我の【生命魔力】はどうなるのだ?」
「心配しなくたって、僕と倉林さんが付き合えばいくらでもセックスできると思うよ。あ、でも膣内射精を許してくれるかはわからないけど──」
「ふざけるな。そんな悠長に待たなくても良いように、宋真に【魅了魔法】を教えたのだ」
「でも、好きな人を魔法で無理矢理ってのも気が引けるし──」
「もういい! 宋真のバカ! 勝手にしろ!」
シトラスは業を煮やして後ろを振り返る。
背中から生えた羽が、悲しそうに震えていた。
「し、シトラス──?」
小さな悪魔の、涙交じりに震える声が、小さく僕の鼓膜を突き刺した。
「私は悪魔だけど、宋真が傷つくところは見たくないの……」
パタン。
玄関の扉が閉じられた。
一人になった僕の部屋は以前のように、再び静かになった。
「倉林さんとセックスして、仕事は定時で帰れる。ああ。生きてるって感じだなぁ」
僕──日高宋真は、定時帰り後の時間で、趣味の読書を謳歌していた。
「文芸やSFもいいけど、仕事終わりは官能小説に限る」
自室の本棚に敷き詰められた本の中から、一冊を取り出し、ベッドに寝転がった。
この前シトラスが僕の名前を呼びながらオナニーしていたベッドで。
タイトルは『気になる隣のOLから、『残業しながらセックスしよ?』と言われたので』だ。
内容はもちろん、こんな感じだ。
倉林さんのような可愛いヒロインが、ある日突然セックスに興味があることを主人公に打ち明ける。
その日から、ヒロインとエッチな残業の日々が始まって……という感じ。
今時ありがちなジャンル。
けれど今の僕にとって、興奮度は三倍。
「この晴美っていう巨乳ヒロイン、倉林さんとそっくりなんだよね」
主人公が残業中、突然ヒロインから抱き着かれ、豊満な巨乳を押し付けられる。
『誰もいないですし、今日も秘密の残業、シたいです、先輩──っ』
ズボンの中で僕の息子が起き上がる。
登場人物と自分を重ねられるからだ。
「倉林さんと付き合えたら、晴れて堂々とセックスできるわけか。その内、遊園地の帰りにラブホに泊まったりして。そのまま……ごくり」
恋に悩む乙女のように悶える僕。
普段なら五秒後には『何してんだ、僕』ってなるけど、今はどうでもいい。
そこへ、玄関が開く音がしたと思ったら、シトラスが帰ってきた。
「シトラス! どこ行ってたの? 先に帰ってたかと思ったよ」
「……すまぬ。少し、用事があってな」
「身体は大丈夫? ミカエリが放った光線がシトラスを貫いた時、とても不安で──」
「ああ。先も言ったが、致命傷は避けた。大したことはない。フフ、セックスして忘れたかと思ったら、ちゃんと覚えてる所、宋真の優しさが光るな」
「シトラス、見てたの? あ、感覚共有してるもんね。そうなんだよ! 僕、あの倉林さんとシたよ、セックス。ゴム有りだけど」
「そうか。それはよかったな」
「シトラスと出会ってからどんどんエッチなことができて、幸せだ……ってシトラス? なんか元気ない?」
部屋に入ってくるなり、シトラスは空中で体育座りをしながらゆっくり回転している。
何か思い詰めているようだ。
口調こそいつもの大悪魔モードだけど、なんというか覇気がない。
「う、ウム。そ、宋真が好きな倉林聡美について、大事な話があるんだが──」
「大事な話? うんうんっ、僕もいつかまたチャンスが来たら告白しようと思うんだ。『大事な話があるんだ』って。倉林さんは僕に処女を捧げてくれたんだし、きっと両想いのハズだから大丈夫だよね?」
「聞け、宋真」
「え?」
空中でピタリと静止すると、シトラスは思い切ったように口を開いた。
「宋真の好きな倉林だがな。……木山とかいう男とセックスしていた」
「……へ?」
突然の告白に、僕は耳を疑った。
倉林さんが、なんだって?
うまく聞こえなかったなぁ。
「倉林さんが、僕じゃなくて他の男と? いやいやそれはあり得ないよ」
僕はおかしくて笑ってしまう。
「木山君は倉林さんのOJT担当で、僕とはあまり話しことはないけど、そういう関係じゃない」
「……証拠はあるのか?」
「証拠って……特にないけど」
「宋真。悪いことは言わん。傷が深くなる前に、倉林のことは忘れて他の女とセックスしろ。相手がいないなら新たに仕事を探せ。今の我ではミカエリにも太刀打ちできないし、丁度いい頃合いだ」
「ちょっちょっと勝手なこと言わないでよ、シトラス。やっと僕にも人並みの幸せが来そうって時なのに、どうしてそんなテキトーなこと言うのさ」
「テキトーではない、我は見たのだ!」
「じゃあシトラスの方こそ、証拠はあるの?」
「……それは」
ばつが悪そうに視線を逸らすシトラス。
さっきから倉林さんから僕を遠ざけようとしてくる。
一体何なんだ。
さっきまでの幸せな妄想をぶち壊された気分になって、少し苛立ってしまった。
「もうこの話はおしまい。僕は好きで図書館司書になったんだし、シトラスには悪いけど、今は倉林さんのことしか頭にないから」
「そんな。では我の【生命魔力】はどうなるのだ?」
「心配しなくたって、僕と倉林さんが付き合えばいくらでもセックスできると思うよ。あ、でも膣内射精を許してくれるかはわからないけど──」
「ふざけるな。そんな悠長に待たなくても良いように、宋真に【魅了魔法】を教えたのだ」
「でも、好きな人を魔法で無理矢理ってのも気が引けるし──」
「もういい! 宋真のバカ! 勝手にしろ!」
シトラスは業を煮やして後ろを振り返る。
背中から生えた羽が、悲しそうに震えていた。
「し、シトラス──?」
小さな悪魔の、涙交じりに震える声が、小さく僕の鼓膜を突き刺した。
「私は悪魔だけど、宋真が傷つくところは見たくないの……」
パタン。
玄関の扉が閉じられた。
一人になった僕の部屋は以前のように、再び静かになった。
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