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第一章『復讐H。職場の嫌いな女先輩』
第四話「震える怒り。決意と契約」
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ビルから飛び降りて、死にかけの僕に突き付けられた、自称大悪魔からの【契約】。
「で、でも。そもそも君は誰なんだ?」
「貴様は物事を難しく考えすぎなのだ」
白黒の悪魔は僕のスーツ姿と、飛び降りた天井、そして五階建てのビル全体をざっと見渡した。
「……フム。察するに、今まで否定され、虐げられてきたのだろう。特に、『女』に」
「っ!」
心の内を見透かされたような発言に、僕は動けない。
「例えば、先輩から毎日人格を否定されるような罵倒を受けている。或いは想い人には視界にすら入れてもらえない、とかな」
「え、どうして僕のことを……」
「フフ、図星か。それは我こそが、世界を恐怖のどん底に突き落とす悪魔見習い……じゃなくて、大悪魔だからだ」
「悪魔見習いって言った?」
「……」
「無視かい!」
「現実を無視しているのは貴様だ」
ぴしゃりとした声に、僕は硬直する。
「貴様は、このまま無意味に死ぬことに満足できるのか? 一時の辛さから逃れても、貴様の脳裏に浮かぶ女共は、しつこいハエがやっと居なくなった、としか思わないであろう」
「それは……」
「彼女らに復讐できる。想い人が居るなら手籠めに出来る。そんな力、【魅了魔法】を我が与えてやろうと言っている。そう、これは悪魔の契約なのだ」
ドクン、と心臓が脈打った。
今の僕じゃない。
隣で、間もなく息絶えようとしている、僕の心臓だ。
「もう一度言う。このままでは後三〇秒で貴様は死ぬ。しかし、我と【契約】すれば、最強の魅了魔法使いとして、もう一度人生を再開できる。──さぁ、どうする?」
死にたいと思っていた。
悔しさも、後悔も、憎しみも。欲望も。何もかも死ぬからもうどうでもいいと思っていた。
けれど、なんだって?
生き延びるだけじゃなくて、本物の魔法使いになれる?
その力で、人生を好き放題ヤることができる、だって?
そんな話、信じられるのか?
いや、違う。信じるとか、信じないとか、そういう問題じゃない。
「……シたい」
喉奥から、搾り出た。
「シたい、【契約】! やっぱりこのまま惨めに死ぬなんてできない!」
怨嗟に、声が震えた。
「本当に人生を好き放題出来るなら! ゴミのような目で見てきた人達に復讐できるなら! 僕は、悪魔にだって魂を売る!」
心の中で押し殺していた感情が、間欠泉のように噴き出た。
大悪魔の口元が二ヤリと歪む。
「我が名はシトラス。貴様の名は?」
「宋真。日高宋真だ」
「では宋真。始めようか。甘美で蕩ける第二の『性』活を」
突然、眠気が襲ってきた。
崩れるように意識が闇の底へ落ちていく。
「まったく……命は大事にしなさいよ、バカ」
囁くような一瞬。
聞こえていないと思ったのだろうか。
意識が途切れる寸前、少女相応の幼い声が、鼓膜を優しく撫でた。
やがて、周囲の時間が動き始めたかのように、人の悲鳴と、救急車のサイレンが遠くから聞こえてきた。
【契約】と【魅了魔法】。
シトラスと名乗った、天使のような悪魔の名前。
まだよく分からないけど、こんな美少女と濃厚なキスができたなら、身投げした甲斐もあったのかな……。
「で、でも。そもそも君は誰なんだ?」
「貴様は物事を難しく考えすぎなのだ」
白黒の悪魔は僕のスーツ姿と、飛び降りた天井、そして五階建てのビル全体をざっと見渡した。
「……フム。察するに、今まで否定され、虐げられてきたのだろう。特に、『女』に」
「っ!」
心の内を見透かされたような発言に、僕は動けない。
「例えば、先輩から毎日人格を否定されるような罵倒を受けている。或いは想い人には視界にすら入れてもらえない、とかな」
「え、どうして僕のことを……」
「フフ、図星か。それは我こそが、世界を恐怖のどん底に突き落とす悪魔見習い……じゃなくて、大悪魔だからだ」
「悪魔見習いって言った?」
「……」
「無視かい!」
「現実を無視しているのは貴様だ」
ぴしゃりとした声に、僕は硬直する。
「貴様は、このまま無意味に死ぬことに満足できるのか? 一時の辛さから逃れても、貴様の脳裏に浮かぶ女共は、しつこいハエがやっと居なくなった、としか思わないであろう」
「それは……」
「彼女らに復讐できる。想い人が居るなら手籠めに出来る。そんな力、【魅了魔法】を我が与えてやろうと言っている。そう、これは悪魔の契約なのだ」
ドクン、と心臓が脈打った。
今の僕じゃない。
隣で、間もなく息絶えようとしている、僕の心臓だ。
「もう一度言う。このままでは後三〇秒で貴様は死ぬ。しかし、我と【契約】すれば、最強の魅了魔法使いとして、もう一度人生を再開できる。──さぁ、どうする?」
死にたいと思っていた。
悔しさも、後悔も、憎しみも。欲望も。何もかも死ぬからもうどうでもいいと思っていた。
けれど、なんだって?
生き延びるだけじゃなくて、本物の魔法使いになれる?
その力で、人生を好き放題ヤることができる、だって?
そんな話、信じられるのか?
いや、違う。信じるとか、信じないとか、そういう問題じゃない。
「……シたい」
喉奥から、搾り出た。
「シたい、【契約】! やっぱりこのまま惨めに死ぬなんてできない!」
怨嗟に、声が震えた。
「本当に人生を好き放題出来るなら! ゴミのような目で見てきた人達に復讐できるなら! 僕は、悪魔にだって魂を売る!」
心の中で押し殺していた感情が、間欠泉のように噴き出た。
大悪魔の口元が二ヤリと歪む。
「我が名はシトラス。貴様の名は?」
「宋真。日高宋真だ」
「では宋真。始めようか。甘美で蕩ける第二の『性』活を」
突然、眠気が襲ってきた。
崩れるように意識が闇の底へ落ちていく。
「まったく……命は大事にしなさいよ、バカ」
囁くような一瞬。
聞こえていないと思ったのだろうか。
意識が途切れる寸前、少女相応の幼い声が、鼓膜を優しく撫でた。
やがて、周囲の時間が動き始めたかのように、人の悲鳴と、救急車のサイレンが遠くから聞こえてきた。
【契約】と【魅了魔法】。
シトラスと名乗った、天使のような悪魔の名前。
まだよく分からないけど、こんな美少女と濃厚なキスができたなら、身投げした甲斐もあったのかな……。
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