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『同級生に女装コスプレしてたのを見られちゃいました。』
女装して反応してるなんて……
しおりを挟む「お邪魔します……。」
遠慮がちに僕は泰我の家のドアを開ける。
「今日、誰もいないから好きにしとけ。」
ぶっきらぼうにそう言う。
…ああ。誰もいないのか……。
いざというときに、助けを求められない……。
泰我の部屋は、 ダークブラウンの家具で統一されていて、とてもお洒落だった。
テーブルの近くに座るように言われ、僕はおとなしく腰を下ろす。
スカートだと胡座ができない。パンツ見えちゃうから。正座をしてスカートを両手で押さえる。
泰我は部屋から出て何処かに行ってしまった。
写真を撮るだけなら、早く終わってほしい。すぐにでも着替えたい。ちなみに、帰りのために男の服も用意している。
カチャリっと部屋のドアが空いて、ジュースとお菓子をお盆に乗せた泰我が入ってきた。
「飲んで食え。」
わざわざ、泰我が僕のコップにジュースを注いでくれる。
ぶっきらぼうだけど、こういう所が優しいんだよな。
「ありがとう。」
僕は自然と笑みがこぼれて、クスッと笑ってお礼を言った。
僕の顔ををまじまじと見た泰我は、ポツリと呟いた。
「すげえな。ほんとに女に見える。」
姉のメイクの賜物だろう。
じっーと泰我に見られると、恥ずかしくて途端に落ち着かなくなる。そんなにまじまじと見ないでよ。
僕は俯いて、小さな声で告げた。
「あんまり見ないでよ……。早く写真録ろうよ……。僕、着替えたい……。」
泰我はスマートフォンを用意すると、僕に色んなポーズをするように指示してきた。
普通に立たせたり、ベッドに座らせたり、振り返ったり。
僕は言われるがままにポーズをとっていった。ときには、「これ必要かな?」みたいなポーズも撮られた。なんだ、猫のポーズって。
「もう、いいんじゃない……?」
結構な枚数の写真を撮ったと思うけど……。
僕の問いかけには答えないまま、泰我はベッドにドカッっと座った。
「んっ。」
ポンポンと、泰我が自分の左隣を手で叩く。そこに座れってことかな。
「……こう?」
僕は躊躇いながらも、泰我の左側に座る。すると、スマートフォンを右手に持ち、内向きのカメラを起動した。
「それじゃあ、映んないだろ。もっと近くに寄れよ。」
グイっと左肩を抱かれて、身体が泰我と密着する。強引な感じなのに、力は強くなくて優しい。
いいなー。
泰我の彼女になって人は幸せだと思う。
言葉が少なくても、こうやってちょっとした態度や仕草が優しくて温かくなる。
「うまく撮れねえな。よっと。」
「っ!?わっ!?」
泰我は僕の脇の下に手を入れてひょいッと持ち上げられる。身体を横にして泰我の膝に座らされた。いわゆる、お姫様抱っこ状態だ。
背中に腕を回されて、僕は体制が不安定になったから、思わず泰我の胸元にしがみついてしまった。
よりお互いの身体が密着して、心臓に悪い。
「そういえば、この中ってどうなってんの?」
そう言うと、ペラッとスカートの裾を右手で捲られた。防御力の皆無なスカートは、簡単に太腿まで捲られてしまう。
「ちょっと!!」
「暴れんなよ。」
スカートの裾を抑えようしたけど、泰我の手のほうが早かった。そのまま、上までスカートを捲られてしまう。
「……なんだよ。見せパン履いてんじゃん。」
男だってバレるのが嫌だから、万が一のことを考えてスパッツを履いていたのだ。
泰我は面白くないって顔をして呟いた。
いや、男の僕に、なに期待してんの??
「……裾、持ってろ。」
そう言うと、泰我は僕にスカートの裾を持たせようとする。男同士でも、スカートを履いているからだろうか。なんだか恥ずかしくて俯いてしまった。
「…恥ずかしいよ……。」
ぽつりとそう溢すと、泰我は俺の耳元で意地悪に囁いた。
「コスプレ写真。バラされてもいいのか?」
うう……。そうだ。
僕は弱味を握られているのだった。
仕方なく、おずおずと両手でスカートの裾を掴んで、持ち上げる。背中には泰我の手がまわされて、僕を支えてくれる。
自分で泰我にスカートの中を見せつけているようで、どうにも恥ずかしい。僕は羞恥で顔が赤くなっていると思う。
スカートを俺に持たせると、泰我はイタズラするように太腿を指先で撫でて遊び始めた。
指の腹で擽るように、ゆっくりと触られてもどかしいような、くすぐったいような、不思議の感覚が落ち着かない。
内腿に指が這って、徐々に際どい太腿の付け根辺りも掠めていく。
「……んっ…。」
僕がもともと、くすぐったがりなせいか、際どいそこを触られて、ピクッと身体が跳ねてしまった。
僕が反応したのをいいことに、しきりに付け根から内腿にかけてを、触るか触らないかの絶妙な力加減で、泰我の手が撫でていく。
なんだろう……。少しゾクリとした熱が、触られている太腿から粟立つように昇ってくる。心なしか、息も荒くなって、頭も少し浮わついた熱を感じている。
足も泰我の膝に乗せて、力が抜けていってしまっていた。
「……ここ、反応してる……。」
「んんっ!」
力が抜けた両足の間を、スルリと泰我の手が侵入してくる。
不意に泰我の指が、スパッツの上から、僕の少し兆していたモノを掠めていった。
うそ、何で僕勃ってきてるの……?
「…ふぁ、…まっ……て!たい、が!」
泰我は僕の制止の言葉を聞かないまま、指の腹で僕のモノを擦っていく。
スパッツ独特のぴったりとした布が、独特のつるりとした感覚を生み出して、下半身が熱を持ち始める。
僕は慌ててスカートの裾を下ろそうとしたけど、泰我は右手で僕の両手を押さえてしまう。
「スカート持ってろって、言ったろ?」
そんな……。
僕は恥ずかしくて泣きそうになりながら、困惑して泰我を見上げた。
僕を見下ろした泰我は、口角を片方だけあげて、意地悪にニヤリと笑った。
少し掠れた低い声で、僕に言い聞かせるように泰我が囁く。
「……女の格好を人に見られて、ここも勃たせるなんて、変態だな。」
「変態な於莵に、もっと良いことしてやるよ。」
切れ長の瞳に、なんだかギラリと鈍い光が見えた気がした。
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