28 / 61
『幽霊だけど、姿を見られちゃいました。(ついでに触られてます。)』
僕はひんやりした抱き枕のようです。
しおりを挟むクスッと章親が笑ってポツリと何か呟きました。
「……。猫みてぇ。かわいい。」
章親が小さな声で言うから、何を言っているか聞こえませんでした。
首を傾げてる僕をよそに、章親は話を進めます。
「いつも、掃除してくれてありがとな。洗い物も減ってるときあるし、咲弥がやってくれてたんだろ?助かってたよ。」
気づいてくれてたのか。
こうやって、面と向かってお礼を言われるとは思ってもいなかったから、なんか照れくさいです。
「えへへっ。章親の役に立てて嬉しい。」
ちょっと恥ずかしくて、誤魔化すように笑いながら返事をしました。
すると、頬を撫でていた手が顎先に移動して、クイッと顎を持ち上げられます。
ちゅっ。
「ふえっ?」
一瞬、小さな音がして章親の整った顔が目の前に迫りました。
頬に柔らかな感触を一瞬だけ感じて、軽く触れて離れていきます。
あまりに短い出来事だったので、最初は何をされたのか分かりませんでした。
でも、頬に残る感触で章親にキスをされたのだと分かり、僕は幽霊だけど一気に顔に熱が集まりました。
間近に迫っていた章親と目が合い、章親は悪戯が成功した子供のような笑顔で笑っています。
「改めてよろしくな。咲弥。」
あんまりにも嬉しそうな笑顔だったので、怒るに怒れず、僕はその輝く笑顔に見惚れてしまいました。
それから、僕と章親の奇妙な共同生活が始まりました。
僕は姿がバレてしまったので、堂々と料理以外の家事全般をこなすことにしました。
章親は「無理に家事をしなくていい。」と言ってくれたのですが、僕は章親に少しでも休んで欲しかったのです。
それに、幽霊は一日中フヨフヨしているだけで、とても暇です。何かしていないと、暇で仕方ありません。
家事をすると、泰親が必ず僕の頭をぽんぽんしながら、「ありがとな。」とお礼を言ってくれます。
その、いつも頭を撫でて褒めてくれるのが、僕は大好きです。頭を撫でられると、心地よくて
うっとりしてしまいます。
食事をするときは、必ず二人一緒にテーブルを囲うようになりました。
僕はごはんを食べることはできないけど、一緒に食卓について会話をするのが、日課になりました。
章親との共同生活はとても楽しくて、本当にルームメイトになった気分です。
ただ、少しだけ困ったこともあります。
それは、章親がことあるごとに僕の身体を触ってくることです。
腰を掴まれたり、肩を組んだりというスキンシップは序の口です。時々、後ろからぎゅっと甘えるように抱き締められることもあります。
まあ、ここまでは、男同士だから仲の良い間柄だと、普通ですよね?
でも、章親のスキンシップはこれだけに留まりません。
なんと、『いってきます。』のほっぺキスがあるのです。
章親の実家では、兄弟でも『いってきます。』
と言って、ほっぺにキスをしていたと言っていました。
実家は由緒正しい神社と言ってなかったでしょうか……。何ですか、その外国風な習慣は。
でも、それほどまでに家族と仲が良いのだなと関心してしまいました。
最初は章親に頬にキスをされて、戸惑ってしまいましたが、実家で毎日していたときのクセだと言われると、納得しました。
最近は、章親から頬にキスをされたあと、右頬を差し出されるようになりました。
少し恥ずかしいのですが、僕からも章親の頬にキスをするようになりました。
まあ、これも仲の良い証拠かなと思うと、嫌な感じは全然ありません。
そして、章親は僕に『可愛い』とも度々言ってきます。
これは少し不本意というか、僕の身長と童顔を揶揄っているのが分かります。
ちなみに幽霊ですが、慎重は167センチメートルです。章親は身長が180センチメートル以上はあると言っていました。
僕にその身長ください。
地味に気にしてるんです。
そして、日課と言えばもう一つ……。
「ひんやりして気持ちいい。」
今、僕は章親に抱き締められながら、ベッドに一緒に寝ています。
そうです。
もう一つの日課とは、夜は一緒のベッドで、章親にぎゅっとされながら添い寝をすること。
まだまだ熱い時期で、寝ていると寝苦しいのはよくわかります。
でも、ベッドは少し狭くなってしまうから、章親がちゃんと眠れているか心配です。
もう、人を氷枕とかの代わりにしないでよ……。
章親は僕をひんやりする抱き枕だと思っているようです。
僕は幽霊なので、本当は眠らなくても大丈夫なのですが……。
まあ、横になって身体を休めることがあるくらいです。
今日も僕はいつもどおり、章親に後ろから抱き締められ、ベッドに横になっています。
章親に抱きしめられることは、わりと好きです。
人肌が暖かいし、包み込まれる感触も心地良い。
「……う…ん…」
寝ているときの章親は、余計に身体を密着させてきます。もしかしたら、ホームシックでしょうか……。人肌が恋しいのかもしれません。
ぎゅっと僕のお腹あたりを抱き締めていた右手が、モゾモゾと動き出しました。
右手は上に向かっていき、僕の右胸辺りを服の上から擦ってきます。
うん?
時々、寝ているときに章親が寝ぼけて、お腹を撫でられることはありました。
今日はかなり寝ぼけているみたいです。
右胸を撫でていた手が、小さな突起を探り当てて、服の上から指の腹で、くにっと軽く潰されます。
「っ?!……??」
驚いて、ビクッと肩が跳ねてしまいます。
たまたま、指が僕の乳首を掠めただけでしょう。
でも、章親の手はそれだけでは止まりませんでした。
左手も胸に伸びてきて、左右両方の小さな突起を、服の上から、くにくにと指で押し潰されます、
「……んっ、……ふっ、んン!」
えっ……。
待って、章親。
なんで僕の胸触ってくるの??
もしや、これは僕をからかっているのでは?
起きているのかもしれない。
そう思って、そっと後ろを振り返りました。
カッコいい章親の顔が近くに見えますが、スヤスヤと寝息を立てています。
寝てる……。
うそ。本当に寝ぼけてるだけ??
僕の戸惑いをよそに、手は乳首を弄り続けています。
なんだか、むず痒くなってきました。
12
お気に入りに追加
570
あなたにおすすめの小説


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。

皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?



ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる