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『ゲイバーにいるのを生徒に見られちゃいました。』
黙っているかわりに……※
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一緒に歩いていた男性に、今夜の件は断らせてもらった。
残念そうに「仕方ないね。また今度。」と言われ、男性は店に戻っていった。急遽断ったのにも関わらず、快諾してくれたのはありがたかった。
男性と別れた後、俺はどこか落ち着いて話せる場所はないか思案する。
教え子をこんな夜の世界にいさせたくない。
教育的にも悪いし、何しろ思春期の多感な高校生だ。
佐々木も、ここで話すのは良くないと思ったのだろう。
「…ここから少し歩くと、オレの泊っているアパートがあります。とりあえず行きましょう?」
佐々木の提案に、オレは素直に従った。
アパートに招き入れられ、リビングに座らせてもらう。佐々木が、テーブルに麦茶を用意してくれた。
どう話を切り出すべきだろうか。オレが考え込んでいると、佐々木が先に口を開いた。
「俺、夏休み中に従兄の経営するカフェを手伝うって言ったでしょ?あの店は、昼間は普通のカフェで、オーナーはオレの従兄。」
佐々木はグラスを手に取って、そこで麦茶を一口飲んだ。
「…どうして、あのとき……。」
あの時間に、なぜ佐々木がお店の近くにいたのだろうか。
「従兄に頼まれて、忘れ物を届けに行ったんだ。」
そう説明した佐々木は、もう一口麦茶を飲んだ。グラスを置いて、オレをひたと見据えた。
いよいよ、本題だな。
「ひな先生って、ゲイなの?」
やはり、あの店がどういう場所なのか、佐々木は知っているのだろう。
グラスに入った氷が、カランっと乾いた音を鳴らす。
「……ああ、そうだよ。」
もう隠し立てできない。オレは白状することにした。
顔を上げて、まっすぐに視線を合わせて佐々木に告げた。ここまでくると、焦りを通り越して冷静になってしまった。自分の開き直りぶりに、自嘲気味に笑う。
ある程度、俺の返事を予想していたのだろう。
だから、賢い佐々木は俺に先手を打ってきた。
「このことは、誰にも話さないから………。ひな先生、安心して…?」
普通は、気持ち悪がったり、嫌悪で蔑まれてするのに、佐々木は一切そんなことはなかった。とりあえず、可愛い教え子に嫌われなかったことに、心の中で少し安堵した。
でも、相手はあの佐々木だ。
腹黒な教え子は、ここで終わりのはずがない。
「ただ、黙っている代わりに……。」
来たか。
やはり交換条件を出して脅すんだな。
成績も優秀な佐々木が、何を望むか想像がつかない。金銭か?物だろうか……。
両膝の上に置いた拳を握りしめ、佐々木の言葉を待ち構える。
「ひな先生のこと、抱かせてよ。」
「……えっ?」
いま、なんと言った?
「俺に抱かれて?……ひな先生?」
この教え子は何を言っているのだ。
「……な、に…言って。」
「先生は、わざわざあの店にまで行ってセフレを探してた。その相手、俺でもいいでしょ?」
男漁りをしていたのを、生徒に露骨に言われて眩暈がした。
そもそも、佐々木は異性愛者ではないのか?
女の子が好きなはずだろう?
「佐々木は、ゲイなのか?男が好きなのか?」
「ゲイかどうかは分かんないけど……。ひな先生を見ると全然イケる。」
全然イケるってなんだ。
「冗談はよせ。オレは男だ。女と違って柔らかくないし、男と女じゃ勝手が違う。」
「男とのヤリ方なら知ってるけど?」
思春期の高校男子を舐めたらいけなかった。
誰だ、佐々木に変な知恵を吹き込んだのは。
「……佐々木が、オレに挿れるのか?」
「そうだね。俺はひな先生に抱かれたいんじゃなくて、先生を抱きたい。」
教え子にこんなことをさせて、良いはずがない。
「健全な高校生がすることじゃない……。他のことじゃダメなのか?」
「…………ひな先生、バラされてもいいの?」
「っ!!」
「もしゲイだってバレたら、男子校になんて居れなくなるよ?」
そうだ。オレは佐々木に脅されているのだ。
教員ができなくなるのは耐えられない。
今後の社会的立場も危うくなるかもしれない。
それなら、オレの身体くらい……。
「…………わかった…。」
俯いたまま消え入りそうな声で答えた。
そんなオレの姿を、欲情の揺らめく瞳をして、怪しく口角を上げて佐々木が見ていたことなんて、オレは知らなかった。
佐々木に手を引かれ、リビングの隣の部屋に促される。隣の部屋は、寝室になっていた。
パイプベッドに小さな机が一つ。
必要以上のものは置かれていない。
「このアパートは、もともとバーの従業員用の寮なんだ。最近、一人従業員が辞めて、ちょうど空きがあったから、夏休みの手伝い中は好きにしていいって。」
簡単に佐々木が説明をしてくれるが、オレは佐々木の話が頭に入ってこなかった。
これから行われる行為に、緊張して余裕がない。
佐々木は俺を先に部屋へ入れると、カチャリッと後ろ手で寝室の鍵を閉めた。
鍵が閉められた音で、もう、逃げられないと悟った。居心地が悪くて寝室で突っ立っていると、佐々木にまた手を引かれてベッドに座らされた。
「とっとと始めろよ。」
「ひな先生、見た目と違って男前だよね。……なるべく優しくしたい。」
この状況で優しくしたいなんて、おかしなことを言う。オレは、さっさとヤッて、早く終わらせて欲しいのに。
「先生……。」
右隣に佐々木が座って、俺の左頬を指先で優しく撫で上げる。間近に迫った整った顔貌に、思わず魅入ってしまう。
じっと佐々木の顔を見ていたら、顎を持ち上げられた。
「……その顔、他の人にも見せてたんだと思うと……。もう狂いそう。」
冷たさを感じる眼鏡の奥に、ほんの少しの暗い感情が見えたのは勘違いではない。
声色もほの暗い色を帯びている気がする。
「っン、んん!」
佐々木はいきなり俺の唇を奪った。
優しくするという言葉はどこに行ったのか。
唇ごと食べるように何度も角度を変えて口づけられる。ほんの少し開いた隙間から、するりと舌が入り込んできた。
押し返そうとした舌を、佐々木は容赦なく絡められとり吸い上げる。
「っんん!……ンっ、んく!」
巧みな舌使いに、オレは喉奥から甘い声が漏れた。
高校生だろ?!
なんでこんなキス知ってんだよ。
おかしいだろ!
でも、なんでも卒なくこなす佐々木のことだ。経験済みでもおかしくない。
一度唇が離れたかと思うと、また口を塞がれて口腔内を犯される。いつの間にか両耳を塞がれていて、クチュ、クチュっという音が頭の中で反芻される。
舌で口の性感帯を刺激され、頭は水音でいっぱいになり、思考を翻弄された。
チュっと音を立てて、唇が離される。吸われ過ぎて舌が痺れて痛い。
キスの余韻に浸っていると、両肩を掴まれて強引にベッドへ押し倒された。
二人分の体重にベッドがギシっと軋み、両足の間に、佐々木は身体を入れてくる。
佐々木の身体のせいで足が閉じれない。
「ちょっ……!慣れ過ぎだろ!」
佐々木のスムーズな動きに、オレは思わず悪態をつく。
「まあね。同性は初めてだけど、異性とは経験済みだし。それに……。」
すうっと目が眇められ、眼鏡の奥の瞳が冷たく光った。
「先生だって、経験豊富でしょ?」
佐々木は右手でオレの両手を一纏めにして頭上に上げさせた。
思いのほか力が強く、解けそうにない。
いつも見ている冷静な瞳が、熱を帯びて欲情を揺らめかせているのが見えて、目が離せなくなる。
しばらく両手を塞がれたままの恰好で、佐々木は俺を見下ろした。
「……ひな先生、今まで何人の男に、この身体を触らせたの?」
怒っているような佐々木の声に、びくりっと身体を震わせた。
何か佐々木が怒っている気がする…。
佐々木の怒っている理由が分からず、オレは返事ができない。
「………。」
無言のままでいると、キリリっという痛みが走った。
「っ!いたっ!!」
いきなり服の上から、きゅっと左の乳首を強く摘ままれた。親指と人差し指で摘まみ、くりくりと捏ねられる。
「あっ!……ンん、んんっ!」
カリカリと爪で先を引っ掛かれると、痛いのに燻るような快感になる。ビクンっと身体が跳ねてしまった。
恥ずかしいくらい乳首が存在を主張し始める。
服越しのせいで、乳首に布が擦れる刺激が、直接触られるときとはまた違う感覚を生み出す。
もどかしい刺激に、乳首を引っ掛かれる度に身体が跳ねた。
「……服の上からでも乳首立ってるの分かるよ。誰にこんなに、やらしい乳首にされたの?」
まるで咎めるように、佐々木はわざと露骨に卑猥な表現をしてくる。
指先は俺の乳首を引っ掻き、押しつぶされる。
身体は快感に素直に喜んでいて、下半身から熱がじんわりと広がっている。
散々、服の上から乳首を弄んだあと、佐々木の右手はシャツのボタンへと伸びていった。
シャツのボタンを上から一つ、また一つと丁寧に外されていく。
佐々木に身体を見られるのが恥ずかしくて、オレは顔を背けて視線を反らした。
オレのそんな様子はお構いなしに、ボタンは着実に外されていった。
とうとう全て外すと、佐々木はシャツの前を広げ、オレの上半身をはだけさせた。
部屋はクーラーで冷やされているため、晒された身体がひんやりとした空気を感じる。
「……はぁ…、たまんない……。」
佐々木が息を荒げて、オレの身体をじっくりと視姦してくる。
その這うような視線を感じて、ぞくぞくっと背中から頭にかけて欲情の熱が昇っていった。
佐々木の獣のようなぎらついた目は、今まで見たことがない。
瞳の奥には雄の本能が見える。本能のまま、余裕がない顔が珍しくて、ドキッとした。
お腹の辺りを触るか、触らないかの微妙な力加減で撫で上げられる。その焦らす触り方に身を捩ると、服がもっとはだけてしまう。
「乳首もピンク色……。ぷっくり勃ってる。エロすぎるでしょ、ひな先生。」
耳元で、熱い吐息と一緒に佐々木が囁いた。興奮しているのか、少し掠れた声が腰に響く。
言葉されて、耳からも精神を虐められる。
それに、『先生』と言うのはだめだ。
生徒と卑猥な行為をしていると嫌でも実感させられる。
セックスなんて何度もしたことがあるのに、教え子に身体を暴かれるのは恥ずかしい。
羞恥で耳まで真っ赤になっているだろう。
ぎゅっと目を瞑り、羞恥をやり過ごす。
「っあ!やぁん!……ンんっ!あっ、……!」
先ほど虐められた左の乳首に、ぬるりと湿った感覚を感じて目を見開いた。佐々木の頭が俺の胸元にうずまっているのが見える。
乳首を下から上へねっとりと舐め上げたかと思うと、そのままカリッっと甘噛みされた。面白いくらい、ビクっと身体は跳ねた。
「ンんんっ!!」
「……少し痛いくらいが好きだよね?ドMなの?」
舐めあげている舌を見せつけて、佐々木は見上げてきた。
「っちが……。ふぁっ!」
ちゅうっと突起を吸い上げられ、先ほどとは違った刺激に身体を撓らせた。
いつの間にか両手の拘束は解かれていた。
佐々木の左手は口で食まれているのとは反対の、右の乳首をクニクニと捏ねている。
拘束が解けても抵抗する力なんてすでに無かった。
左の突起は湿った感触で舌先でチロチロと刺激され、時にはチュパっと吸われる。
右の突起は指の腹で押しつぶされ、摘ままれる。左右の違う刺激に身体は翻弄される。
というか、佐々木の愛撫はねちっこい。
このままだと、乳首は赤く熟れてしまう。
しばらく乳首だけを嬲られて、息も絶え絶えだ。涙が瞳に滲んだ。
「……さすがに、乳首だけでイクのは無理か……。」
佐々木は残念そうな顔をしながら呟いた。
今恐ろしい言葉を聞いた気がする。
佐々木は何をしようとしていたんだ。
もう、オレはしつこい愛撫を受けて、意識もぼんやりとしている。
「んっ。」
唇を胸から離し、首筋に佐々木が顔を埋めて、チュッとキスをする。
チクリとした小さな痛みを感じ、肌に痕を付けられたのだと分かった。柔らかい唇は、鎖骨、胸元、脇腹の順に吸い上げていく。
「っ!やぁ…めっ…!」
脇腹を掠めていた唇が、下着の上から陰茎をはむっと食んできた。
いつの間にかズボンは太腿まで降ろされていて、下着が見えている。
陰茎を何度も唇で挟まれる。
「……乳首だけで、こんなに硬くしたの?先走りで下着にシミ出来てる……。」
佐々木が意地悪に聞いてくる。
「!っは……な、せ…!!」
男相手は初めてだというのに、陰茎を口で愛撫するなんて嫌悪感はないのだろうか?
何とか止めさせようと、佐々木の柔らかな髪に両手をあてがい、押し返す。
佐々木の頭を押し返そうとしたときに、腰が少し浮いた。
そのときを狙ったかのように、下着とズボンを一気に脱がさせる。窮屈だった場所から陰茎が露出して、勃ち上がっているのが丸見えになる。
外気に触れて、冷たさにぶるっと震えた。
でも、すぐに生暖かいなにかに包まれる。
「あぁぁっ!ま、っ…だっ、め……!っんあ、あっ!」
一瞬、何をされたのか分からなかった。
でも、陰茎に感じる温かさと、佐々木の顔の位置でフェラをされていることをイヤでも思い知らされた。
裏筋に舌を這わしたまま、チロチロとそこばかり上下に弄ばれる。
人にされるのって、こんなに気持ちよかったっけ……?
熱くてトロトロの口腔内は、刺激が強すぎる。
快感で硬くなってきたそこを、敏感な裏筋を下から上へゆっくり舐めた。
「…!はぁっ、……くっ!。」
「ここ、気持ちいいよね?」
「くっ!…そこ、で……しゃべ……なっ……!」
これ以上卑猥な事を言葉にするな。
もうオレの頭の中は、羞恥と居た堪れなさでパニック状態だ。そんなオレの様子をよそに、陰茎を口いっぱいに含ませ顔を上下に動かしてくる。
佐々木の右手は竿に添えられ、口の動きに合わせて優しく扱いてくる。
くちゅっ、ぐじゅっ、とワザといやらし音を立て吸い上げられた。卑猥な水音は、オレ自身から出ているのを認めたくなかった。
扱く動作が段々早くなっているのに気が付き、オレは身体の熱が高められていくことに、焦りと恐怖を感じる。
突然、舌先が、ぐりっと鈴口に入り込む。
閉じているそこをこじ開けるみたいに、
つんっ、つんっ、ぐりっと抉ら、腰がびくっと跳ね上がった。
残念そうに「仕方ないね。また今度。」と言われ、男性は店に戻っていった。急遽断ったのにも関わらず、快諾してくれたのはありがたかった。
男性と別れた後、俺はどこか落ち着いて話せる場所はないか思案する。
教え子をこんな夜の世界にいさせたくない。
教育的にも悪いし、何しろ思春期の多感な高校生だ。
佐々木も、ここで話すのは良くないと思ったのだろう。
「…ここから少し歩くと、オレの泊っているアパートがあります。とりあえず行きましょう?」
佐々木の提案に、オレは素直に従った。
アパートに招き入れられ、リビングに座らせてもらう。佐々木が、テーブルに麦茶を用意してくれた。
どう話を切り出すべきだろうか。オレが考え込んでいると、佐々木が先に口を開いた。
「俺、夏休み中に従兄の経営するカフェを手伝うって言ったでしょ?あの店は、昼間は普通のカフェで、オーナーはオレの従兄。」
佐々木はグラスを手に取って、そこで麦茶を一口飲んだ。
「…どうして、あのとき……。」
あの時間に、なぜ佐々木がお店の近くにいたのだろうか。
「従兄に頼まれて、忘れ物を届けに行ったんだ。」
そう説明した佐々木は、もう一口麦茶を飲んだ。グラスを置いて、オレをひたと見据えた。
いよいよ、本題だな。
「ひな先生って、ゲイなの?」
やはり、あの店がどういう場所なのか、佐々木は知っているのだろう。
グラスに入った氷が、カランっと乾いた音を鳴らす。
「……ああ、そうだよ。」
もう隠し立てできない。オレは白状することにした。
顔を上げて、まっすぐに視線を合わせて佐々木に告げた。ここまでくると、焦りを通り越して冷静になってしまった。自分の開き直りぶりに、自嘲気味に笑う。
ある程度、俺の返事を予想していたのだろう。
だから、賢い佐々木は俺に先手を打ってきた。
「このことは、誰にも話さないから………。ひな先生、安心して…?」
普通は、気持ち悪がったり、嫌悪で蔑まれてするのに、佐々木は一切そんなことはなかった。とりあえず、可愛い教え子に嫌われなかったことに、心の中で少し安堵した。
でも、相手はあの佐々木だ。
腹黒な教え子は、ここで終わりのはずがない。
「ただ、黙っている代わりに……。」
来たか。
やはり交換条件を出して脅すんだな。
成績も優秀な佐々木が、何を望むか想像がつかない。金銭か?物だろうか……。
両膝の上に置いた拳を握りしめ、佐々木の言葉を待ち構える。
「ひな先生のこと、抱かせてよ。」
「……えっ?」
いま、なんと言った?
「俺に抱かれて?……ひな先生?」
この教え子は何を言っているのだ。
「……な、に…言って。」
「先生は、わざわざあの店にまで行ってセフレを探してた。その相手、俺でもいいでしょ?」
男漁りをしていたのを、生徒に露骨に言われて眩暈がした。
そもそも、佐々木は異性愛者ではないのか?
女の子が好きなはずだろう?
「佐々木は、ゲイなのか?男が好きなのか?」
「ゲイかどうかは分かんないけど……。ひな先生を見ると全然イケる。」
全然イケるってなんだ。
「冗談はよせ。オレは男だ。女と違って柔らかくないし、男と女じゃ勝手が違う。」
「男とのヤリ方なら知ってるけど?」
思春期の高校男子を舐めたらいけなかった。
誰だ、佐々木に変な知恵を吹き込んだのは。
「……佐々木が、オレに挿れるのか?」
「そうだね。俺はひな先生に抱かれたいんじゃなくて、先生を抱きたい。」
教え子にこんなことをさせて、良いはずがない。
「健全な高校生がすることじゃない……。他のことじゃダメなのか?」
「…………ひな先生、バラされてもいいの?」
「っ!!」
「もしゲイだってバレたら、男子校になんて居れなくなるよ?」
そうだ。オレは佐々木に脅されているのだ。
教員ができなくなるのは耐えられない。
今後の社会的立場も危うくなるかもしれない。
それなら、オレの身体くらい……。
「…………わかった…。」
俯いたまま消え入りそうな声で答えた。
そんなオレの姿を、欲情の揺らめく瞳をして、怪しく口角を上げて佐々木が見ていたことなんて、オレは知らなかった。
佐々木に手を引かれ、リビングの隣の部屋に促される。隣の部屋は、寝室になっていた。
パイプベッドに小さな机が一つ。
必要以上のものは置かれていない。
「このアパートは、もともとバーの従業員用の寮なんだ。最近、一人従業員が辞めて、ちょうど空きがあったから、夏休みの手伝い中は好きにしていいって。」
簡単に佐々木が説明をしてくれるが、オレは佐々木の話が頭に入ってこなかった。
これから行われる行為に、緊張して余裕がない。
佐々木は俺を先に部屋へ入れると、カチャリッと後ろ手で寝室の鍵を閉めた。
鍵が閉められた音で、もう、逃げられないと悟った。居心地が悪くて寝室で突っ立っていると、佐々木にまた手を引かれてベッドに座らされた。
「とっとと始めろよ。」
「ひな先生、見た目と違って男前だよね。……なるべく優しくしたい。」
この状況で優しくしたいなんて、おかしなことを言う。オレは、さっさとヤッて、早く終わらせて欲しいのに。
「先生……。」
右隣に佐々木が座って、俺の左頬を指先で優しく撫で上げる。間近に迫った整った顔貌に、思わず魅入ってしまう。
じっと佐々木の顔を見ていたら、顎を持ち上げられた。
「……その顔、他の人にも見せてたんだと思うと……。もう狂いそう。」
冷たさを感じる眼鏡の奥に、ほんの少しの暗い感情が見えたのは勘違いではない。
声色もほの暗い色を帯びている気がする。
「っン、んん!」
佐々木はいきなり俺の唇を奪った。
優しくするという言葉はどこに行ったのか。
唇ごと食べるように何度も角度を変えて口づけられる。ほんの少し開いた隙間から、するりと舌が入り込んできた。
押し返そうとした舌を、佐々木は容赦なく絡められとり吸い上げる。
「っんん!……ンっ、んく!」
巧みな舌使いに、オレは喉奥から甘い声が漏れた。
高校生だろ?!
なんでこんなキス知ってんだよ。
おかしいだろ!
でも、なんでも卒なくこなす佐々木のことだ。経験済みでもおかしくない。
一度唇が離れたかと思うと、また口を塞がれて口腔内を犯される。いつの間にか両耳を塞がれていて、クチュ、クチュっという音が頭の中で反芻される。
舌で口の性感帯を刺激され、頭は水音でいっぱいになり、思考を翻弄された。
チュっと音を立てて、唇が離される。吸われ過ぎて舌が痺れて痛い。
キスの余韻に浸っていると、両肩を掴まれて強引にベッドへ押し倒された。
二人分の体重にベッドがギシっと軋み、両足の間に、佐々木は身体を入れてくる。
佐々木の身体のせいで足が閉じれない。
「ちょっ……!慣れ過ぎだろ!」
佐々木のスムーズな動きに、オレは思わず悪態をつく。
「まあね。同性は初めてだけど、異性とは経験済みだし。それに……。」
すうっと目が眇められ、眼鏡の奥の瞳が冷たく光った。
「先生だって、経験豊富でしょ?」
佐々木は右手でオレの両手を一纏めにして頭上に上げさせた。
思いのほか力が強く、解けそうにない。
いつも見ている冷静な瞳が、熱を帯びて欲情を揺らめかせているのが見えて、目が離せなくなる。
しばらく両手を塞がれたままの恰好で、佐々木は俺を見下ろした。
「……ひな先生、今まで何人の男に、この身体を触らせたの?」
怒っているような佐々木の声に、びくりっと身体を震わせた。
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佐々木の怒っている理由が分からず、オレは返事ができない。
「………。」
無言のままでいると、キリリっという痛みが走った。
「っ!いたっ!!」
いきなり服の上から、きゅっと左の乳首を強く摘ままれた。親指と人差し指で摘まみ、くりくりと捏ねられる。
「あっ!……ンん、んんっ!」
カリカリと爪で先を引っ掛かれると、痛いのに燻るような快感になる。ビクンっと身体が跳ねてしまった。
恥ずかしいくらい乳首が存在を主張し始める。
服越しのせいで、乳首に布が擦れる刺激が、直接触られるときとはまた違う感覚を生み出す。
もどかしい刺激に、乳首を引っ掛かれる度に身体が跳ねた。
「……服の上からでも乳首立ってるの分かるよ。誰にこんなに、やらしい乳首にされたの?」
まるで咎めるように、佐々木はわざと露骨に卑猥な表現をしてくる。
指先は俺の乳首を引っ掻き、押しつぶされる。
身体は快感に素直に喜んでいて、下半身から熱がじんわりと広がっている。
散々、服の上から乳首を弄んだあと、佐々木の右手はシャツのボタンへと伸びていった。
シャツのボタンを上から一つ、また一つと丁寧に外されていく。
佐々木に身体を見られるのが恥ずかしくて、オレは顔を背けて視線を反らした。
オレのそんな様子はお構いなしに、ボタンは着実に外されていった。
とうとう全て外すと、佐々木はシャツの前を広げ、オレの上半身をはだけさせた。
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「……はぁ…、たまんない……。」
佐々木が息を荒げて、オレの身体をじっくりと視姦してくる。
その這うような視線を感じて、ぞくぞくっと背中から頭にかけて欲情の熱が昇っていった。
佐々木の獣のようなぎらついた目は、今まで見たことがない。
瞳の奥には雄の本能が見える。本能のまま、余裕がない顔が珍しくて、ドキッとした。
お腹の辺りを触るか、触らないかの微妙な力加減で撫で上げられる。その焦らす触り方に身を捩ると、服がもっとはだけてしまう。
「乳首もピンク色……。ぷっくり勃ってる。エロすぎるでしょ、ひな先生。」
耳元で、熱い吐息と一緒に佐々木が囁いた。興奮しているのか、少し掠れた声が腰に響く。
言葉されて、耳からも精神を虐められる。
それに、『先生』と言うのはだめだ。
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「っあ!やぁん!……ンんっ!あっ、……!」
先ほど虐められた左の乳首に、ぬるりと湿った感覚を感じて目を見開いた。佐々木の頭が俺の胸元にうずまっているのが見える。
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「ンんんっ!!」
「……少し痛いくらいが好きだよね?ドMなの?」
舐めあげている舌を見せつけて、佐々木は見上げてきた。
「っちが……。ふぁっ!」
ちゅうっと突起を吸い上げられ、先ほどとは違った刺激に身体を撓らせた。
いつの間にか両手の拘束は解かれていた。
佐々木の左手は口で食まれているのとは反対の、右の乳首をクニクニと捏ねている。
拘束が解けても抵抗する力なんてすでに無かった。
左の突起は湿った感触で舌先でチロチロと刺激され、時にはチュパっと吸われる。
右の突起は指の腹で押しつぶされ、摘ままれる。左右の違う刺激に身体は翻弄される。
というか、佐々木の愛撫はねちっこい。
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しばらく乳首だけを嬲られて、息も絶え絶えだ。涙が瞳に滲んだ。
「……さすがに、乳首だけでイクのは無理か……。」
佐々木は残念そうな顔をしながら呟いた。
今恐ろしい言葉を聞いた気がする。
佐々木は何をしようとしていたんだ。
もう、オレはしつこい愛撫を受けて、意識もぼんやりとしている。
「んっ。」
唇を胸から離し、首筋に佐々木が顔を埋めて、チュッとキスをする。
チクリとした小さな痛みを感じ、肌に痕を付けられたのだと分かった。柔らかい唇は、鎖骨、胸元、脇腹の順に吸い上げていく。
「っ!やぁ…めっ…!」
脇腹を掠めていた唇が、下着の上から陰茎をはむっと食んできた。
いつの間にかズボンは太腿まで降ろされていて、下着が見えている。
陰茎を何度も唇で挟まれる。
「……乳首だけで、こんなに硬くしたの?先走りで下着にシミ出来てる……。」
佐々木が意地悪に聞いてくる。
「!っは……な、せ…!!」
男相手は初めてだというのに、陰茎を口で愛撫するなんて嫌悪感はないのだろうか?
何とか止めさせようと、佐々木の柔らかな髪に両手をあてがい、押し返す。
佐々木の頭を押し返そうとしたときに、腰が少し浮いた。
そのときを狙ったかのように、下着とズボンを一気に脱がさせる。窮屈だった場所から陰茎が露出して、勃ち上がっているのが丸見えになる。
外気に触れて、冷たさにぶるっと震えた。
でも、すぐに生暖かいなにかに包まれる。
「あぁぁっ!ま、っ…だっ、め……!っんあ、あっ!」
一瞬、何をされたのか分からなかった。
でも、陰茎に感じる温かさと、佐々木の顔の位置でフェラをされていることをイヤでも思い知らされた。
裏筋に舌を這わしたまま、チロチロとそこばかり上下に弄ばれる。
人にされるのって、こんなに気持ちよかったっけ……?
熱くてトロトロの口腔内は、刺激が強すぎる。
快感で硬くなってきたそこを、敏感な裏筋を下から上へゆっくり舐めた。
「…!はぁっ、……くっ!。」
「ここ、気持ちいいよね?」
「くっ!…そこ、で……しゃべ……なっ……!」
これ以上卑猥な事を言葉にするな。
もうオレの頭の中は、羞恥と居た堪れなさでパニック状態だ。そんなオレの様子をよそに、陰茎を口いっぱいに含ませ顔を上下に動かしてくる。
佐々木の右手は竿に添えられ、口の動きに合わせて優しく扱いてくる。
くちゅっ、ぐじゅっ、とワザといやらし音を立て吸い上げられた。卑猥な水音は、オレ自身から出ているのを認めたくなかった。
扱く動作が段々早くなっているのに気が付き、オレは身体の熱が高められていくことに、焦りと恐怖を感じる。
突然、舌先が、ぐりっと鈴口に入り込む。
閉じているそこをこじ開けるみたいに、
つんっ、つんっ、ぐりっと抉ら、腰がびくっと跳ね上がった。
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「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?



ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
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