10 / 61
『ゲイバーにいるのを生徒に見られちゃいました。』
生徒にゲイバーにいるのを見られました。
しおりを挟む
8月の殺人級の猛暑の真っただ中、オレは学園から遠く離れた、ビルが立ち並ぶ繁華街に来ていた。
学園が夏休みに入り、無事に生物部の研究合宿も終わって、今はお盆期間だ。
オレも仕事が休みになったため、予定していた一人旅に来ていた。
オレの性的対象は男性、いわゆる同性愛者である。一生結婚できるか分からないと言ったのは、これが理由だった。
大学生時代は同性の恋人がいたこともあったが、お互い就職を機に疎遠となって別れてしまった。
別に喧嘩したとか、嫌になったわけではなく、もともと関係自体も軽いものだったため自然とそうなったのだ。
近くに性的嗜好が会う人物が偶然いて、利害が一致したようなもの。オレ自身、恋愛感情が乏しいのかもしれない。
今勤務している男子高校に赴任してからは、仕事が忙しいこともあり、恋人を作っていない。
ただ、どうしても性欲が我慢できないときは、こうして学園から少し離れた場所まで来て、一夜の関係を持つ。
ひと夏の思い出だけでもいいし、相性があうなら身体だけの関係でも良い。
田舎だと出会いはほとんどないため、こうやって都会に出会いを求めてやってきている。
ちなみに、学園側にはオレの性的嗜好は内緒にしている。
というか、誰にも明かしたことはない。
高校教師という立場が危ぶまれてしまう可能性があるからだ。
オレは仕事自体が好きだし、教師という仕事に誇りを持っている。
簡単に手放したくなどなかった。
特に、今勤務しているのは母校でもある男子高校だ。同性が好きだと知られたら、即異動させられるだろう。
ちなみに、高校生には興味はない。オレの好みは、年上がタイプだから生徒に手を出すことはない。
じめじめとした身体に絡みつく暑さの中、オレはネオンが眩しい繁華街を目的地まで速足で歩いていた。
この辺りは、オレと同じような、同性を好きな者たちがひそかに集まっている場所だ。
インターネットで調べて、1か月に1回くらいの頻度で訪れている。
出会いの場とネットで検索すると、たくさんの場所が検索結果として表示されるが、あまりにもイケイケの、いかにも出会い場といったような場所は遠慮したかった。
オレは騒がしい喧噪から離れて、脇道に抜けると目的地であるビルにたどり着いた。
ここは、ほどほどに関係をわきまえた、大人な人たちが多い場所で安心する。
少し薄暗い、でも暖色系の照明が自然と落ち着いた雰囲気のバーの扉を開けた。
扉を開けるとカウンターが右側に見えて、バーテンダーの中世的な男性が客と談笑している。左側には足の長い椅子とテーブルが5席ほど設けられていて、皆がリラックスした様子で酒を嗜んでいた。
このバーは、同性愛者が集う場所。
男性が男性客を口説く。
お酒や食事も品質の良いものを提供しているため、お値段は割高だ。ただその分、格式が高いというか、騒がしくなくて、ゆったりとした時間を過ごせる。
オーナーは、カウンターで先ほどから客と話をしている男性だ。
年頃は20代後半くらい。細身ですらりとした長身、暗めな赤茶色の髪はほんの少し長い。
鼻筋の通った端正な顔立ち。色素の薄い茶色の切れ長な目は、意味深な微笑みとともにすうっと細められる。
美しいだけではない、怪しい色気が漂う。
上はワイシャツに落ち着いた色合いのベスト、下はスーツという恰好が良く似合っている。
ベストは彼の細い腰が強調され、より一層魅力を引き立てていた。
名前はユキヤさん。物腰が柔らかく、心地の良い甘い声が印象的だ。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
ユキヤさんに促され、オレはカウンターの一席に腰かけた。
ここのお店は少し変わったルールがある。
オレもそのルールに従って、ユキヤさんに注文する。
「透明でさっぱりとした味のカクテルを、おまかせでお願いします。」
「かしこまりました。」
オーナー自らがシェーカーを持ち、目の前でカクテルを用意してくれる。
底の浅い逆三角形の足の長いグラスに、シェーカーから透明な酒が少しずつ注がれた。
最後におしゃれな金色のピンに一粒のオリーブが刺され、透明な水面にピンごと静かに沈められた。
「お待たせいたしました。ドライ・マティーニです。」
微笑とともに、すっと目の前に差し出されたカクテルは、透明な水面に淡い照明の光を写し込んでいる。
「ありがとうございます。」
お礼を言って、長いグラスの足を片手に持ちそっと口に含んだ。
口に広がるほんの少し癖のあるハーブの匂い、爽やかな味わいの中にアルコール独特の苦みを感じる。
希望どおりの味とカクテルの想像以上の美味しさに、自然と微笑んで小さく吐息を漏らした。
アルコール度数はやや高めのため、ゆっくりと少しずつ味わう。
このバーの変わったルールとは、お酒の色が関係しているのだ。
自分が攻め側なのか、受け側なのかを酒の色で主張する。
赤色や暖色系のお酒を持っている人は、タチ。
透明、白色のお酒の人は、ネコ。
寒色系色のお酒の人は、どちらもいける人。
最初に知らずにお店に入ったときは、それとなくオーナーが説明してくれる。
オレは頼んだお酒の色のとおり、ネコ側である。
「いつも思うけど、奏さんは透き通った感じが似合うね。」
オレと年頃があまり変わらないし、月に1度の頻度で通っているから、ユキヤさんはオレに気安く話かけてくれる。
「そうかな?」
ユキヤさんの言葉の意味が分からず、オレは思わず聞き返した。
「透明だけど秘められた魅力がある、みたいな?」
美しい顔は、少し悪戯にゆるりと口角を上げて小首を傾げられる。その動作はとても優雅で美しい。
……秘められた魅力ってなんだ?
「……褒めすぎというか…。……なんか恥ずかしい……。」
お酒の力も相まって、恥ずかしかったオレは、ほんの少し顔を赤らめてしまったと思う。
オレがほんのりと頬を染めた様子を見て、ユキヤさんは、クスッと小さく笑った。
「自分では気が付いていないだけだよ。………ごゆっくり。」
そう言うと、ユキヤさんはそっとオレの前から離れていった。
ユキヤさんと話を終えてから、程なくして隣の席に影ができた。
「隣、いいかな?」
声がしたほうに顔を向け見上げると、スタイリッシュなスーツ姿の、30代後半くらいの男性が右隣に立っていた。
男らしい雰囲気の、でも厳つくはないすらっとした人だった。
「どうぞ。」
短くオレは返事をして、了承の意を告げた。
「ありがとう。」
男性はオレにお礼というと、スマートな動作で席に座る。
「……●●をロックで。」
「かしこまりました。」
彼が頼んだのはウィスキーだった。
背の低いロックグラスに、丸い氷が入れられる。琥珀色のアルコールが球体の表面を滑り落ちて注がれていく。
暖色系のお酒。
この人はタチだ。
男性は一口ウィスキーを飲むと、低く誘うような声でオレに話かけてきた。
「君は、待ち人がいるの?」
グラスを片手に、余裕のある声で話かけてくる。おしゃれなバーが良く似合うイケオジだ。
「……いいえ、いませんよ?」
この人が、今日の相手でもいいかもしれない。顔立ちもイケメンだし、大人の余裕が溢れ出ているのが魅力的だ。
「君みたいな子がフリーだなんて、勿体ないね。」
カウンターに置いていた右手の小指に、そっと男性の指が重ねられる。
「今夜の話し相手は、決まった?」
腰にゾクリとくるような低くて官能的な声。
ワザと囁くように言うあたり、よほど手慣れたイケオジだ。
年上に、優しく焦らされて。
甘やかされての一夜もいい……。
ピンを指でつまみ、カクテルに沈められたオリーブオイルを食べる。
唇の端についたお酒を、舌先を出してペロリと舐めとった。少し露骨だったけど、男性はオレの仕草を見て上機嫌だ。
「…優しく、…してくれますか?」
ほんの少し上目遣いで窺がうように相手を見た。
男性の瞳には欲情の色が、ほんの少し揺らめいている。
「もちろん。………仰せのままに。」
右手を掬い取られ、手の甲にチュッと口づけられる。そんなキザな行為が、この男性にはよく似合う。
「君を狙っているやつは多いから、早く攫ってもいいかい……?」
お互いに手を絡めて、お酒を飲み終わったあと、男性と一緒に店を出ることにした。
ダークブラウンのドアを開け、店を出て数歩のときだった。
唐突に後ろから、若い男の戸惑った声が聞こえた。
「っ…ひな、先生……?」
聞きなれた男の声。
でも、こんな界隈にいるはずのない人物の声がする。
うそだ。
まさか……。こんなところにいるはずがない。
オレは幻聴でも聞いたのだろうか。
そのまま素通りしようと男性と歩いていく。
後ろからは速足で近づいてくる音がする。
オレの鼓動は緊張と焦りで、警音を鳴らしていた。
服を後ろからそっと引っ張られ、今度は先ほどよりも明確にオレを呼んだ。
「ひな先生」
オレをそのあだ名で呼ぶのは、
学園の生徒だけ。
そして、この声は最近毎日聞いていた、
彼の声だ。
後ろを振り向くのが怖い。でも、こんなところで騒ぎを起こすのは御免だ。
他人の空似であってほしい、人違いであれと願う。
数秒考えた末、オレは後ろを振り返って声の主を見た。
薄暗い夜の路地裏には馴染まない、少し幼い顔。
すらりとした長身。
フチなし眼鏡の良く似合う、冷静沈着な美形。
オレの僅かばかりの希望は、無残にも散った。
「______佐々木……。」
オレの教え子である、佐々木零次が立っていた。
学園が夏休みに入り、無事に生物部の研究合宿も終わって、今はお盆期間だ。
オレも仕事が休みになったため、予定していた一人旅に来ていた。
オレの性的対象は男性、いわゆる同性愛者である。一生結婚できるか分からないと言ったのは、これが理由だった。
大学生時代は同性の恋人がいたこともあったが、お互い就職を機に疎遠となって別れてしまった。
別に喧嘩したとか、嫌になったわけではなく、もともと関係自体も軽いものだったため自然とそうなったのだ。
近くに性的嗜好が会う人物が偶然いて、利害が一致したようなもの。オレ自身、恋愛感情が乏しいのかもしれない。
今勤務している男子高校に赴任してからは、仕事が忙しいこともあり、恋人を作っていない。
ただ、どうしても性欲が我慢できないときは、こうして学園から少し離れた場所まで来て、一夜の関係を持つ。
ひと夏の思い出だけでもいいし、相性があうなら身体だけの関係でも良い。
田舎だと出会いはほとんどないため、こうやって都会に出会いを求めてやってきている。
ちなみに、学園側にはオレの性的嗜好は内緒にしている。
というか、誰にも明かしたことはない。
高校教師という立場が危ぶまれてしまう可能性があるからだ。
オレは仕事自体が好きだし、教師という仕事に誇りを持っている。
簡単に手放したくなどなかった。
特に、今勤務しているのは母校でもある男子高校だ。同性が好きだと知られたら、即異動させられるだろう。
ちなみに、高校生には興味はない。オレの好みは、年上がタイプだから生徒に手を出すことはない。
じめじめとした身体に絡みつく暑さの中、オレはネオンが眩しい繁華街を目的地まで速足で歩いていた。
この辺りは、オレと同じような、同性を好きな者たちがひそかに集まっている場所だ。
インターネットで調べて、1か月に1回くらいの頻度で訪れている。
出会いの場とネットで検索すると、たくさんの場所が検索結果として表示されるが、あまりにもイケイケの、いかにも出会い場といったような場所は遠慮したかった。
オレは騒がしい喧噪から離れて、脇道に抜けると目的地であるビルにたどり着いた。
ここは、ほどほどに関係をわきまえた、大人な人たちが多い場所で安心する。
少し薄暗い、でも暖色系の照明が自然と落ち着いた雰囲気のバーの扉を開けた。
扉を開けるとカウンターが右側に見えて、バーテンダーの中世的な男性が客と談笑している。左側には足の長い椅子とテーブルが5席ほど設けられていて、皆がリラックスした様子で酒を嗜んでいた。
このバーは、同性愛者が集う場所。
男性が男性客を口説く。
お酒や食事も品質の良いものを提供しているため、お値段は割高だ。ただその分、格式が高いというか、騒がしくなくて、ゆったりとした時間を過ごせる。
オーナーは、カウンターで先ほどから客と話をしている男性だ。
年頃は20代後半くらい。細身ですらりとした長身、暗めな赤茶色の髪はほんの少し長い。
鼻筋の通った端正な顔立ち。色素の薄い茶色の切れ長な目は、意味深な微笑みとともにすうっと細められる。
美しいだけではない、怪しい色気が漂う。
上はワイシャツに落ち着いた色合いのベスト、下はスーツという恰好が良く似合っている。
ベストは彼の細い腰が強調され、より一層魅力を引き立てていた。
名前はユキヤさん。物腰が柔らかく、心地の良い甘い声が印象的だ。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
ユキヤさんに促され、オレはカウンターの一席に腰かけた。
ここのお店は少し変わったルールがある。
オレもそのルールに従って、ユキヤさんに注文する。
「透明でさっぱりとした味のカクテルを、おまかせでお願いします。」
「かしこまりました。」
オーナー自らがシェーカーを持ち、目の前でカクテルを用意してくれる。
底の浅い逆三角形の足の長いグラスに、シェーカーから透明な酒が少しずつ注がれた。
最後におしゃれな金色のピンに一粒のオリーブが刺され、透明な水面にピンごと静かに沈められた。
「お待たせいたしました。ドライ・マティーニです。」
微笑とともに、すっと目の前に差し出されたカクテルは、透明な水面に淡い照明の光を写し込んでいる。
「ありがとうございます。」
お礼を言って、長いグラスの足を片手に持ちそっと口に含んだ。
口に広がるほんの少し癖のあるハーブの匂い、爽やかな味わいの中にアルコール独特の苦みを感じる。
希望どおりの味とカクテルの想像以上の美味しさに、自然と微笑んで小さく吐息を漏らした。
アルコール度数はやや高めのため、ゆっくりと少しずつ味わう。
このバーの変わったルールとは、お酒の色が関係しているのだ。
自分が攻め側なのか、受け側なのかを酒の色で主張する。
赤色や暖色系のお酒を持っている人は、タチ。
透明、白色のお酒の人は、ネコ。
寒色系色のお酒の人は、どちらもいける人。
最初に知らずにお店に入ったときは、それとなくオーナーが説明してくれる。
オレは頼んだお酒の色のとおり、ネコ側である。
「いつも思うけど、奏さんは透き通った感じが似合うね。」
オレと年頃があまり変わらないし、月に1度の頻度で通っているから、ユキヤさんはオレに気安く話かけてくれる。
「そうかな?」
ユキヤさんの言葉の意味が分からず、オレは思わず聞き返した。
「透明だけど秘められた魅力がある、みたいな?」
美しい顔は、少し悪戯にゆるりと口角を上げて小首を傾げられる。その動作はとても優雅で美しい。
……秘められた魅力ってなんだ?
「……褒めすぎというか…。……なんか恥ずかしい……。」
お酒の力も相まって、恥ずかしかったオレは、ほんの少し顔を赤らめてしまったと思う。
オレがほんのりと頬を染めた様子を見て、ユキヤさんは、クスッと小さく笑った。
「自分では気が付いていないだけだよ。………ごゆっくり。」
そう言うと、ユキヤさんはそっとオレの前から離れていった。
ユキヤさんと話を終えてから、程なくして隣の席に影ができた。
「隣、いいかな?」
声がしたほうに顔を向け見上げると、スタイリッシュなスーツ姿の、30代後半くらいの男性が右隣に立っていた。
男らしい雰囲気の、でも厳つくはないすらっとした人だった。
「どうぞ。」
短くオレは返事をして、了承の意を告げた。
「ありがとう。」
男性はオレにお礼というと、スマートな動作で席に座る。
「……●●をロックで。」
「かしこまりました。」
彼が頼んだのはウィスキーだった。
背の低いロックグラスに、丸い氷が入れられる。琥珀色のアルコールが球体の表面を滑り落ちて注がれていく。
暖色系のお酒。
この人はタチだ。
男性は一口ウィスキーを飲むと、低く誘うような声でオレに話かけてきた。
「君は、待ち人がいるの?」
グラスを片手に、余裕のある声で話かけてくる。おしゃれなバーが良く似合うイケオジだ。
「……いいえ、いませんよ?」
この人が、今日の相手でもいいかもしれない。顔立ちもイケメンだし、大人の余裕が溢れ出ているのが魅力的だ。
「君みたいな子がフリーだなんて、勿体ないね。」
カウンターに置いていた右手の小指に、そっと男性の指が重ねられる。
「今夜の話し相手は、決まった?」
腰にゾクリとくるような低くて官能的な声。
ワザと囁くように言うあたり、よほど手慣れたイケオジだ。
年上に、優しく焦らされて。
甘やかされての一夜もいい……。
ピンを指でつまみ、カクテルに沈められたオリーブオイルを食べる。
唇の端についたお酒を、舌先を出してペロリと舐めとった。少し露骨だったけど、男性はオレの仕草を見て上機嫌だ。
「…優しく、…してくれますか?」
ほんの少し上目遣いで窺がうように相手を見た。
男性の瞳には欲情の色が、ほんの少し揺らめいている。
「もちろん。………仰せのままに。」
右手を掬い取られ、手の甲にチュッと口づけられる。そんなキザな行為が、この男性にはよく似合う。
「君を狙っているやつは多いから、早く攫ってもいいかい……?」
お互いに手を絡めて、お酒を飲み終わったあと、男性と一緒に店を出ることにした。
ダークブラウンのドアを開け、店を出て数歩のときだった。
唐突に後ろから、若い男の戸惑った声が聞こえた。
「っ…ひな、先生……?」
聞きなれた男の声。
でも、こんな界隈にいるはずのない人物の声がする。
うそだ。
まさか……。こんなところにいるはずがない。
オレは幻聴でも聞いたのだろうか。
そのまま素通りしようと男性と歩いていく。
後ろからは速足で近づいてくる音がする。
オレの鼓動は緊張と焦りで、警音を鳴らしていた。
服を後ろからそっと引っ張られ、今度は先ほどよりも明確にオレを呼んだ。
「ひな先生」
オレをそのあだ名で呼ぶのは、
学園の生徒だけ。
そして、この声は最近毎日聞いていた、
彼の声だ。
後ろを振り向くのが怖い。でも、こんなところで騒ぎを起こすのは御免だ。
他人の空似であってほしい、人違いであれと願う。
数秒考えた末、オレは後ろを振り返って声の主を見た。
薄暗い夜の路地裏には馴染まない、少し幼い顔。
すらりとした長身。
フチなし眼鏡の良く似合う、冷静沈着な美形。
オレの僅かばかりの希望は、無残にも散った。
「______佐々木……。」
オレの教え子である、佐々木零次が立っていた。
15
お気に入りに追加
570
あなたにおすすめの小説


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。

皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?



ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる