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第11章 苦難を越えて、皆ちょっと待って

魔王討伐のあかつきには…、俺だってソルが欲しい ※

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甘いはずの蜜色の瞳が、鋭く妖艶に光った。嫉妬の淀みが消えた宝石に、今度は確かな欲情の熱が揺らめいているのが見えて、俺は囚われた獲物のごとく動けなくなる。


「とびきり甘やかして、優しくしたいのに……。そんな可愛い顔して。あんまり、オレを煽らないで?」


喉奥で唸ったような掠れた声で呟くと、ソルは荒々しく俺の唇を奪った。驚きで目を見張る俺をじっと見据えたまま、何度も角度を変え離れては重ねるを繰り返す。下唇を優しく甘噛みされると、ぞくっと甘い痺れが背中から駆け上がった。欲情が灯った身体が心もとなくて、俺はソルの胸元に縋りながらぎゅっと目を閉じる。


「んっ……!」

ソルの舌先が意味深に俺の唇をなぞった瞬間、下腹部に重く甘い痺れが走った。ソルと何度もキスをしたから、既にその行為の意味を俺は知っている。


これはソルからの合図というか、『もっと食べたい』というおねだりなのだ。俺はほんの少し逡巡し、おずおずと引き結んでいた口を開いた。ソルがくすっと喉奥で笑ったのが、重なる唇から振動として伝わって来る。


「……んンッ!」

小さく開いた口にソルの舌がするりと入り込んで、あたふた逃げる俺の舌先に触れる。ソルは俺の尻すぼみな舌を巧みに捕えると、飴玉を舐めるかのように執拗に絡めて貪った。魔力が絡み合う舌先から漏れて、甘美な味わいに脳が酔い痴れる。

ソルの魔力は、俺にとって甘く怪しい媚薬に近い。流し込まれる唾液を嚥下するようにソルに舌を動かされ、媚薬が否応なく身体に入り込んで来る。思考がふわふわして、気持ちが良いことに支配されてしまう。


「ンッ……、ふぁっ……、はぁ」

敏感な上顎を舌先で突つかれ、思わず鼻にかかった声が漏れると、逆上せるように俺の熱が上がる。優しくするって言ってたのに、こんなに激しいキスをするなんて聞いてない……。息苦しさに零した俺の吐息さえもソルは逃したくないというようで、俺自身を食べられている気さえした。

ソルの嘘つき……と、内心で毒づいた。



「ふはぁ……あっ?!」

気持ち良すぎてクラクラして、腰砕けで倒れそうになったところをソルに抱き留められた。くったりと力が入らない俺は、せめてもの抗議の意味を込めてソルを睨めつける。

息の荒いソルが俺を見下ろしながら、してやったりと意地の悪い笑みを浮かべる。その顔があまりに煽情的過ぎて、トクンっと鼓動がひと際大きく鳴ると眩暈を起こした。


「……キスだけで、こんなに蕩けてる。可愛い……」

そう掠れた声で呟いたソルは、俺の膝裏に腕を通して横抱きにすると、足早に寝室に向かった。ソルは俺を運びながら器用に洗浄魔法を自身と俺にもかけると、ベッドにゆっくりと俺を降ろした。


寝台に躊躇いがちに座る俺の正面から、ソルが片足を上げて乗り上げる。2人分の重さにベッドが軋んで、柔らかな布団が沈んだ。反射的に後ろに後退った俺の右手を、ソルが逃がさないとばかりにベッドに縫い留める。素早く俺の両足の間に身体を滑り込ませたソルは、トンっと俺の肩を後ろに押した。


「……えっ……?」

身体の力が抜けていた俺は、なされるがままに体勢を崩して、気が付くと背中が柔らかな寝台に包みこまれていた。

一瞬だけ天井を仰いだ後、薄く笑ったソルが俺に覆い被さって見降ろしているのが見えた。息の荒いソルが、鬱陶し気に襟元へ指先を引っ掛けて緩める仕草が色っぽ過ぎると、思わず見惚れてしまう。照明の薄明りに照らされた甘く端正な顔とは裏腹に、蜜色の宝石は艶めいて色欲に滾っている。


「ヒズミは本当に奥ゆかしいね……。何度もオレとキスしても慣れないし、恥ずかしがる姿も可愛くて大好きだけど……。今日は、逃がしてあげない」

顔の左右にソルの両手を置かれ、俺は低く甘い声で発せられた言葉通りにソルの腕の中に囲われた。蜜のように濃く甘い、それでいて獲物を逃さないという本能から来る欲望がソルの瞳に見えて、俺の喉が小さく鳴る。


勇ましく精悍な青年が、こんなにも欲情を露わにしてくれるのが嬉しいだなんて。俺も自分の奥底から沸き立つ愛しさと、情欲の熱に浮かされている。小さな銀色の光が、照明を反射して視界の端で瞬いた。俺は右顔近くに置かれたソルの左手を、両手でそっと包み込むと、ソルの手の平に頬づりをする。

剣ダコが幾度となく潰れた硬い手の平に、俺はそっと唇を押し当ててソルの瞳を見つめ返した。


さっきは慣れない感覚と恥ずかしさに、思わず逃げてしまったけれど。こんなにも俺を求めてくれるソルが、堪らなくなる愛しくて。
俺だって本当は……。


「……俺も、ソルが欲しい……」

羞恥で滲む視界に、ソルが目を見張った顔が映る。次の瞬間には再びソルに激しく口付けられていた。俺も精一杯ソルに応えたくて、離れないようにソルの首に両腕を回した。お互いに零す吐息が熱くて、絡めた舌が奏でる淫靡な水音が耳まで届く。

俺がキスに夢中になっている間に、ソルにワイシャツのボタンを外されて、開いた合わせ目からするりとソルの手が忍び込んで肌を撫でた。外気に肌がさらされたひんやりとした感覚と、熱のこもった指先が触れて粟立つ肌に、小さな吐息が溢れる。


銀色の糸を垂らしながらお互いの唇が離れると、ソルは糸を舐めとるように、触れるだけのキスをした。どちらのモノともつかない唾液で濡れそぼった唇の端を、ソルは親指で拭った。溢れた唾液を拭うその仕草が、なんとも色っぽい。

ソルのしなやかな指先で、露わになった俺の首筋から腹までをゆっくりと撫でられて、俺は堪らず身体が小さく跳ねた。漏れ出る甘い声が恥ずかしくて、右手の甲で口元を塞ぐ。


「……綺麗だ」

熱い吐息に浮かされて零れたようなソルの呟きに、かぁっと熱が顔に上がった。俺の顔は今、真っ赤に染まって大変なことになっているだろう。


「あんまり、見ないでくれ……。そ、の……。恥ずかしい……」

ソルの視線を肌で感じ取った俺は、思わず顔を背けて視線を外した。クスっと小さく笑ったソルの声が聞こえた後に、口元を隠していた右手をそっと剥ぎ取られて、指先を絡め握られる。左手も同じく俺の顔の近くで縫い留めたソルは、顔を背けた俺の右耳元で甘えるように囁いた。


「やだ。もっと見たい。……それに可愛い声も、我慢しないで?」

「ンァっ……!ぁ……」

右の耳を軽く食んだあと、ソルの唇は項を撫でながら下に向かい、俺の首筋をちゅっと音を立てて強く吸い上げた。皮膚の薄いそこは鋭敏で、時折りチクリと走る痛みさえも甘い快感に変わる。

喉元を甘噛みされ湿った舌先で舐め上げられれば、身体が跳ねて仰け反った。もっと食べて欲しいというように、目の前の獰猛な捕食者に、急所を自ら差し出してしまう。

鎖骨や胸板に気まぐれに口付けるソルに翻弄されて、身体の力が抜けた。ぼんやりとした頭で、ふとソルに繋がれた両手の拘束が無くなったと気が付いたときに、不意に鋭い快感が電流のように身体に走った。


「アっ!……そ、こっ……!あぁっ!」

自分のモノとは思えない甲高い嬌声が喉を突いて、身体が大きく跳ねる。突如として起こった快感に目を見開いて見下ろすと、左胸に顔を埋めていたソルの蜜色の瞳と目が合った。俺をじっと見上げながら、ソルは尖らせた舌先で、見せつけるように俺の乳首をちろりと舐め上げた。

自分では意識したことのない小さな突起は、驚くほどに鋭敏で。舌先で悪戯に先端を突かれて、湿った肉厚な舌になぶられ堪らずに嬌声が出る。左の乳首は舌で弄ばれ、右はソルの指先で捏ねて押しつぶされた。同時に違う快感を与えられて、快感を逃したいと身を捩っても、ソルの舌と手がそれを許してくれない。

俺は為す術もなく、鋭い快感に身体を跳ねさせるしか無い。


「……ヒズミの身体は、どこも敏感だよね。こんなにオレで感じてくれて、嬉しい。」

「ンンッ!……あっ?!」

散々なぶって満足そうな顔をしたソルは、乳首から唇を離すとダメ押しとばかりに乳首を指先で弾いた。乳首ばかりに気を取られていた俺は、ソルの手が怪しく下へと動いていたことに遅れて気が付いた。



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