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第1章 『新感覚☆女の子も男の子も楽しめる乙女ゲーム』ってなんだ?
お兄ちゃんにBLゲームをしてもらおう(妹side)
しおりを挟む(妹side)
私のお兄ちゃん、伊賀崎火澄はすこぶる美青年だ。格好いいのに美人という、魅力的なイケメンである。女子にモテるのは勿論だけど、男子からそれはそれはモテるのだ。
本人は全く、一ミリも気が付いていないけれど。
私たちの祖母は外国人で、金髪碧眼の綺麗な人だ。そして、私たち兄妹はクォーター。私とお兄ちゃんはその血を濃く引いたのか、目の色が日本人の一般的な黒目とは違う。
私は、祖母の瞳の色である青色に。そして、お兄ちゃんは祖母の父親に似て、夕焼けと夜の狭間に見える、怪しくも美しい不思議な紫色の瞳なのだ。
黒髪に紫の目、真珠のように艶めく白い肌。母親に似た柔らかくも端正な顔立ちは、微笑むと破壊力が凄い。紫の瞳は神秘的で、お兄ちゃんの魅力を一層惹きたてるのだ。
そんなお兄ちゃんは、妹の私にとても優しい。共働きで両親があまり家にいない分、私はお兄ちゃんにたくさん甘えた。私のオタク的な趣味の話にも耳を傾けてくれる、優しい自慢の兄である。
自慢の兄を持つ妹は、知っている。
兄は大学でいくつもの人物に狙われていることを。
しかも、性的な意味で男に狙われていることを……。
一度、お兄ちゃんが大学の友達を家に招いたことがある。その人は、確実にお兄ちゃんを狙っていた。だって、お兄ちゃんを見る目が恋人に向けるように甘ったるかった。
お花が飛んでいたというか、ラブ光線が凄いのだ。お兄ちゃんが部屋に案内しようと言ったときの、彼のぎらついた目を私は見逃さなかった。
それに、お兄ちゃんは私に大学生活についても話をしている。
古典文学の教授と親しくなって、放課後にかなりの頻度で呼び出されているらしいのだ。しかも、今度の休日には一緒に古書巡りをしようと誘われたと言っていた。
いつも教授は『可愛い、可愛い。』とお兄ちゃんに言うらしく、お兄ちゃんは『生徒として可愛がってくれている』と勘違いしていたけど……。
一介の教授が、一人の生徒にそんなに関わるもとだろうか?
……休日返上で一緒に出歩く?
お兄ちゃん、それは間違いなくデートです。
夏休みに実家に帰省したお兄ちゃんの友達は、『帰ってきたら、お前に大事な話がある。待っていて。』と言い残していったとか……。
もうそれ、愛の告白やないかい。
とにかく、お兄ちゃんは大学で男にモテまくっているのだ。だけど、本人が全く人の好意に気が付いていない。恋愛事が全然分からない鈍ちんなのだ。
お兄ちゃんは、ハーフの母の美貌を日頃から見ていたせいか、自分の容姿の良さが全然分かっていない。
優しく微笑みかけるだけで、だれでもお兄ちゃんの虜になってしまうのに……。
だから、ここは妹が一肌脱ぐことにしたのだ。今、私が嵌まっている乙女ゲーム、『聖女と紋章の騎士』。このボーナスステージを、お兄ちゃんには攻略してもらう。
乙女ゲームバージョンは全て攻略済み。だけど、このゲームにはさらなるステージが用意されている。その名も、BLステージ。
乙女ゲームステージを全て攻略すると、楽しめるようになるBLゲームステージ。これが中々に難しい。主人公が男と言うだけあって、戦闘が攻略に大きな役割を担っているのだ。
戦闘パートをしっかりとこなさないと、主人公が死んでしまったり、バッドエンドへと直行するのである。
これは、一度ゲームを攻略した者へのハードモードという課題だ。でも、あまりの本格的な戦闘パートに、ネット上でも『攻略できない!』と悲鳴が上がっている。
妙に凝った武器のカスタマイズに、コツコツとダンジョン攻略したり、ギルドの依頼を達成したりして行うレベリング。乙女ゲームステージの時も、モンスターと対戦はしたけど、さすがにこんなに戦闘はしなかった。
乙女ゲームなのに、全然甘くない!こんなに戦闘必要ある??私も例にもれず、攻略に苦戦していた。そこでふと、あることを思いついたのだ。
……そう言えば、お兄ちゃんはRPGとか好きだったよね?いつも、モンスターとの戦闘とかすごく楽しそうにしていたし……。
それにBLゲームをすれば、鈍いお兄ちゃんも少しは周りの好意に気が付くのでは?
男が男を愛すると言う、BがLする素晴らしき新世界を本格的に知れば、現実でもそういった恋愛があるのだと意識するかもしれない……。
見たい。リアルなBL。
お兄ちゃんがイケメンに迫られて、頬を紅く染めるとかどんなご褒美ですか……。それか逆でもいいなー……。優しいお兄ちゃんが甘えながら迫るとかも、絵になりそうだ。
じゅるりっ。
失礼、想像しただけで涎が出てきた。
私としては男子でも女子でも、お兄ちゃんが幸せになれるのならそれでいいのだけれど……。
腐女子の勘なのか、お兄ちゃんは男の人と幸せになる気がしてならないのよね……。
お兄ちゃんには嫌がられない様に、最初はただの乙女ゲームだと言おう。このゲームは、主人公のシルエットが全く出てこないから、最初のうちはBLゲームだとも気づかないと思うし……。
攻略本は乙女ゲームステージだけしか買えなかった。
追加で発売されたBLゲームステージの攻略本は、金銭的に厳しくて買えなかったよ……。悪どい商売だ。
でも、きっと大丈夫。
敵である魔物の生態とか、魔法のことは細かく書かれているから戦闘には困らないと思う。ストーリーも大筋な流れは乙女ゲームステージと一緒だしね。
それに、お兄ちゃんの天然無自覚タラシなその性格で、攻略本が無くても全ての攻略対象者をトゥルーエンドへと導くと信じている。
ついでに、お兄ちゃんも一緒に、腐男子になってくれないかな……。
そんな期待を膨らませつつ、私は大好きなお兄ちゃんの帰宅を待ちわびていた。
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