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第四章 火精霊の棲み処へ

嫉妬 (スフェンside) ※

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「……ミカゲ。」

隣に座って、すっかり寛いでいるミカゲの名前を呼ぶ。ゆったりとこちらを振り向いた瞬間、後頭部に左手を差し入れて、その柔らかな唇を塞いだ。

突然のことに驚いて、ミカゲは大きな瞳を零れそうなほど見開いている。


驚きで力が入らないのを狙って、するりと舌をミカゲの小さな口に差し入れた。すぐに歯列を割って口腔内へと押し入る。
 
ミカゲはそこでやっと、はっと我に返ったのだろう。

すでに口腔内に入っている私の舌を、必死に押し返そうと自分の舌で足掻いている。その舌の動きは、逆に私を誘い込んでいるとも知らないで……。


押し返してきたミカゲの舌を、私は絡めとって甘く吸ってやった。

「んぁっ。」

ミカゲの喉奥から甘い声が漏れた。
吸っていたミカゲの舌を、そのまま、くちゅりと舐めて、舌裏も刺激してやると、びくっとミカゲの身体が跳ねる。
甘い声に、私自身もぞくっとし熱が上がってくる。


私は、自分の魔力をいつもより濃く乗せて、ミカゲに唾液を流し込んだ。

ミカゲと私の魔力は、相性がとても良いらしい。相性の良い魔力は、甘くて体に馴染みやすいのだ。そして、熱を感じるとも言われている。

ミカゲの舌を絡めとって、私の唾液を押し流す。
淫靡な水温が部屋に響いた。

 
「……ンっ、……あつ…い…。」

ミカゲがくったりと逆上せそうになっているのを見て、私はミカゲの身体を持ち上げて湯舟の縁に座らせた。身体に上手く力が入らないようで、ミカゲは後ろに両手を着いて身体を支えている。


その手に私の両手を重ね合わせる。近い距離でミカゲを見つめていると、私に唇を奪われまいとミカゲが顔を右に背けた。

ほっそりとした首筋が目の前に差し出され、私は遠慮なくその首筋に舌を這わせる。


他人にこの身体を見せたくないのなら、
人には見せられないような情事の痕を、
ミカゲに残してしまえばいい。

これは、私の獲物だという所有痕を。
この美しく清らかな柔肌に、紅く熟れた花を。


柔らかなミカゲの肌に唇を寄せ、そのきめ細やかな肌に吸い付いた。

異国情緒漂う、滑らかな肌色に紅い痕が付く。それだけで、私自身の独占欲が満たされるのと同時に、もっと痕を残したいという支配欲に駆られた。
私はミカゲの肌の所々に紅い花を付けていく。

ミカゲの小さな胸の果実に、そっと唇を寄せて食んだ。
 

「っア!……ふっ…、んぁ……っ。」

我慢していた声が刺激で漏れ出てしまったのだろう。その堪えきれずに出たくぐもった嬌声がなんとも良い。
以前にもミカゲの身体を触って思ったのは、ミカゲの身体は刺激に敏感だということ。


私は執拗にミカゲの胸の果実をしゃぶって舐めた。
舌で押しつぶすと、ミカゲが背中を反らして反応する。
逃がさないとばかりに背中に手を回して固定した。

私の舌により一層乳首を潰されて、ミカゲの身体がビクビクと跳ねる。

 
左右の胸の尖りを舌と指で刺激していると、ミカゲが困惑気味に俺に問いかけた。

 
「……ぁンっ、……急に……、どう、…ぁっ、して?」

 
魔力譲渡以外で、ミカゲにキスや身体に触れることもなかったからか、だいぶ動揺しているようだ。
無防備すぎるからだと指摘してやり、一人で公衆浴場に行こうとしていたことも言い当ててやる。

 
案の定、ミカゲはギクリっと、僅かに身体を軋ませた。やはり、そうだったか。

雄たちの群れにミカゲがいるとどうなるのか、説得した。快楽に弱い身体であることも告げて、それを思い知らせるように、私はミカゲの足の間に顔を埋めた。

 
ミカゲのそこはもう、しとどに濡れて硬くなり、透明な蜜を零していた。私の愛撫でこんなにも反応してくれているのが、愛しくて仕方ない。


「乳首だけで、こんなに蜜を零して……。やらしいな。」

ピンと張りつめているミカゲの可愛らしいそこを、指で弾いてやる。

とたんに、ミカゲからは悲鳴に似た嬌声が聞こえた。見上げたミカゲの顔は、耳まで真っ赤にして恥ずかしそうにしている。


「……み、ない、…ンっ!…で……。」

ミカゲの初心な反応が可愛くて、つい虐めたくなってしまう。こんなにも、自分に加虐心があったのだろうか。

際どい内腿にばかり唇を這わせて、肝心の熱を持った中心には触れずに、焦らしてやる。
もどかしそうに震える身体にニヤリと笑い、私はミカゲに意地悪く聞いた。

 
「……ミカゲ、どうされたい……?」

熱を帯びた思考ならば、私に甘えてお願いしてくれるかもしれない。そんな、意地悪な考えが頭に浮かんでいた時だ。


ミカゲが目を潤ませながら、俯いて黙り込んでしまった。

嫉妬心と欲望に流され、私はミカゲになんてことをしているのだ。

 
私はミカゲの身体を包み込むようにぎゅっと腕の中に閉じ込めた。あまりにも虐め過ぎてしまったようだ。


「………すまない、少し度が過ぎた。」

 
私は自分の醜い心の淀みをミカゲに吐露した。
異世界の誰とも知らない男に、嫉妬したのだと。


もう、自分自身でも、自分のことが止められないほど恋情は膨れ上がっている。恋情に翻弄されている私は、なんて情けないのだろう。
本当はゆっくりと、ミカゲの気持ちに歩調を合わせて愛を教え込むつもりだったのに……。


「……好きだ、ミカゲ。」


驚きで目を見開くミカゲに、もう一度言葉を紡ぐ。


「自分ではどうしようもないくらい、ミカゲが好きだ。」


友愛のことかとミカゲに聞かれるだろうと予想し、私は恋情であると明確に告げる。
左手から伝わるミカゲの体温が、少し熱くなったのを感じた。

ミカゲはしばらく考え込んだあとに、慎重に言葉を発した。

 
「………すまない。スフェン……。俺は、恋情の『好き』という気持ちが、良く分からないんだ……。俺は、恋愛をしたことがないから……。スフェンのことは、好ましく思う。俺にくれた気持ちも、嬉しいよ。」

 
私の告白をまっすぐに受け止めて、偽りのない心のうちを教えてくれたミカゲ。
その素直な言葉は、私の淀んだ心を満たしてくれる。

 
嫌いでないのなら、これから、思う存分ミカゲに想いを伝えよう。
甘い蜜のように蕩けさせて。

この強くも美しい、全てを一人で抱え込んでしまおうとする健気な愛おしい人を、手放したくない。


ミカゲの悲しみも、罪も一緒に背負うから、
どうか、異世界には帰らないで。

帰りたいと思わせないほど、甘やかして、包み込んで、慈しみたい。

もしも、異世界と私自身を天秤にかける、そのときが来たら。

どうか、どうか、私を選んでくれ。


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