38 / 136
第四章 火精霊の棲み処へ
嫉妬 (スフェンside) ※
しおりを挟む「……ミカゲ。」
隣に座って、すっかり寛いでいるミカゲの名前を呼ぶ。ゆったりとこちらを振り向いた瞬間、後頭部に左手を差し入れて、その柔らかな唇を塞いだ。
突然のことに驚いて、ミカゲは大きな瞳を零れそうなほど見開いている。
驚きで力が入らないのを狙って、するりと舌をミカゲの小さな口に差し入れた。すぐに歯列を割って口腔内へと押し入る。
ミカゲはそこでやっと、はっと我に返ったのだろう。
すでに口腔内に入っている私の舌を、必死に押し返そうと自分の舌で足掻いている。その舌の動きは、逆に私を誘い込んでいるとも知らないで……。
押し返してきたミカゲの舌を、私は絡めとって甘く吸ってやった。
「んぁっ。」
ミカゲの喉奥から甘い声が漏れた。
吸っていたミカゲの舌を、そのまま、くちゅりと舐めて、舌裏も刺激してやると、びくっとミカゲの身体が跳ねる。
甘い声に、私自身もぞくっとし熱が上がってくる。
私は、自分の魔力をいつもより濃く乗せて、ミカゲに唾液を流し込んだ。
ミカゲと私の魔力は、相性がとても良いらしい。相性の良い魔力は、甘くて体に馴染みやすいのだ。そして、熱を感じるとも言われている。
ミカゲの舌を絡めとって、私の唾液を押し流す。
淫靡な水温が部屋に響いた。
「……ンっ、……あつ…い…。」
ミカゲがくったりと逆上せそうになっているのを見て、私はミカゲの身体を持ち上げて湯舟の縁に座らせた。身体に上手く力が入らないようで、ミカゲは後ろに両手を着いて身体を支えている。
その手に私の両手を重ね合わせる。近い距離でミカゲを見つめていると、私に唇を奪われまいとミカゲが顔を右に背けた。
ほっそりとした首筋が目の前に差し出され、私は遠慮なくその首筋に舌を這わせる。
他人にこの身体を見せたくないのなら、
人には見せられないような情事の痕を、
ミカゲに残してしまえばいい。
これは、私の獲物だという所有痕を。
この美しく清らかな柔肌に、紅く熟れた花を。
柔らかなミカゲの肌に唇を寄せ、そのきめ細やかな肌に吸い付いた。
異国情緒漂う、滑らかな肌色に紅い痕が付く。それだけで、私自身の独占欲が満たされるのと同時に、もっと痕を残したいという支配欲に駆られた。
私はミカゲの肌の所々に紅い花を付けていく。
ミカゲの小さな胸の果実に、そっと唇を寄せて食んだ。
「っア!……ふっ…、んぁ……っ。」
我慢していた声が刺激で漏れ出てしまったのだろう。その堪えきれずに出たくぐもった嬌声がなんとも良い。
以前にもミカゲの身体を触って思ったのは、ミカゲの身体は刺激に敏感だということ。
私は執拗にミカゲの胸の果実をしゃぶって舐めた。
舌で押しつぶすと、ミカゲが背中を反らして反応する。
逃がさないとばかりに背中に手を回して固定した。
私の舌により一層乳首を潰されて、ミカゲの身体がビクビクと跳ねる。
左右の胸の尖りを舌と指で刺激していると、ミカゲが困惑気味に俺に問いかけた。
「……ぁンっ、……急に……、どう、…ぁっ、して?」
魔力譲渡以外で、ミカゲにキスや身体に触れることもなかったからか、だいぶ動揺しているようだ。
無防備すぎるからだと指摘してやり、一人で公衆浴場に行こうとしていたことも言い当ててやる。
案の定、ミカゲはギクリっと、僅かに身体を軋ませた。やはり、そうだったか。
雄たちの群れにミカゲがいるとどうなるのか、説得した。快楽に弱い身体であることも告げて、それを思い知らせるように、私はミカゲの足の間に顔を埋めた。
ミカゲのそこはもう、しとどに濡れて硬くなり、透明な蜜を零していた。私の愛撫でこんなにも反応してくれているのが、愛しくて仕方ない。
「乳首だけで、こんなに蜜を零して……。やらしいな。」
ピンと張りつめているミカゲの可愛らしいそこを、指で弾いてやる。
とたんに、ミカゲからは悲鳴に似た嬌声が聞こえた。見上げたミカゲの顔は、耳まで真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
「……み、ない、…ンっ!…で……。」
ミカゲの初心な反応が可愛くて、つい虐めたくなってしまう。こんなにも、自分に加虐心があったのだろうか。
際どい内腿にばかり唇を這わせて、肝心の熱を持った中心には触れずに、焦らしてやる。
もどかしそうに震える身体にニヤリと笑い、私はミカゲに意地悪く聞いた。
「……ミカゲ、どうされたい……?」
熱を帯びた思考ならば、私に甘えてお願いしてくれるかもしれない。そんな、意地悪な考えが頭に浮かんでいた時だ。
ミカゲが目を潤ませながら、俯いて黙り込んでしまった。
嫉妬心と欲望に流され、私はミカゲになんてことをしているのだ。
私はミカゲの身体を包み込むようにぎゅっと腕の中に閉じ込めた。あまりにも虐め過ぎてしまったようだ。
「………すまない、少し度が過ぎた。」
私は自分の醜い心の淀みをミカゲに吐露した。
異世界の誰とも知らない男に、嫉妬したのだと。
もう、自分自身でも、自分のことが止められないほど恋情は膨れ上がっている。恋情に翻弄されている私は、なんて情けないのだろう。
本当はゆっくりと、ミカゲの気持ちに歩調を合わせて愛を教え込むつもりだったのに……。
「……好きだ、ミカゲ。」
驚きで目を見開くミカゲに、もう一度言葉を紡ぐ。
「自分ではどうしようもないくらい、ミカゲが好きだ。」
友愛のことかとミカゲに聞かれるだろうと予想し、私は恋情であると明確に告げる。
左手から伝わるミカゲの体温が、少し熱くなったのを感じた。
ミカゲはしばらく考え込んだあとに、慎重に言葉を発した。
「………すまない。スフェン……。俺は、恋情の『好き』という気持ちが、良く分からないんだ……。俺は、恋愛をしたことがないから……。スフェンのことは、好ましく思う。俺にくれた気持ちも、嬉しいよ。」
私の告白をまっすぐに受け止めて、偽りのない心のうちを教えてくれたミカゲ。
その素直な言葉は、私の淀んだ心を満たしてくれる。
嫌いでないのなら、これから、思う存分ミカゲに想いを伝えよう。
甘い蜜のように蕩けさせて。
この強くも美しい、全てを一人で抱え込んでしまおうとする健気な愛おしい人を、手放したくない。
ミカゲの悲しみも、罪も一緒に背負うから、
どうか、異世界には帰らないで。
帰りたいと思わせないほど、甘やかして、包み込んで、慈しみたい。
もしも、異世界と私自身を天秤にかける、そのときが来たら。
どうか、どうか、私を選んでくれ。
57
お気に入りに追加
2,702
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
【完結】かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
倉橋 玲
BL
**完結!**
スパダリ国王陛下×訳あり不幸体質少年。剣と魔法の世界で繰り広げられる、一風変わった厨二全開王道ファンタジーBL。
金の国の若き刺青師、天ヶ谷鏡哉は、ある事件をきっかけに、グランデル王国の国王陛下に見初められてしまう。愛情に臆病な少年が国王陛下に溺愛される様子と、様々な国家を巻き込んだ世界の存亡に関わる陰謀とをミックスした、本格ファンタジー×BL。
従来のBL小説の枠を越え、ストーリーに重きを置いた新しいBLです。がっつりとしたBLが読みたい方には不向きですが、緻密に練られた(※当社比)ストーリーの中に垣間見えるBL要素がお好きな方には、自信を持ってオススメできます。
宣伝動画を制作いたしました。なかなかの出来ですので、よろしければご覧ください!
https://www.youtube.com/watch?v=IYNZQmQJ0bE&feature=youtu.be
※この作品は他サイトでも公開されています。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる