24 / 136
第三章 風精霊の棲み処へ
美貌の騎士団長と ※
しおりを挟む「……男の前で、そんな顔をするとどうなるか、よく学ぶんだな。」
いつも優し気に微笑む王子然としたスフェンが、今は獲物を見つけたと、舌舐めづりをして目をぎらつかせているように見えた。
「……スフェン…?…」
なんだか、危険な雰囲気を感じ取った俺は、再びスフェンの胸を押し返して距離を取ろうとした。しかし、俺の手は、スフェンに簡単に振り払われてしまう。
元々、魔力枯渇状態で思うように力が入らず、そのままソファに俺の両手は投げ出された。
スフェンの顔が再び近づいてきたのが見えて、俺は咄嗟に顔を左に背けた。
これ以上キスをされたら、なんだか頭がふわふわして、ぼんやりしてしまうのだ。
スフェンは俺が顔を背けた様子に、クスっと小さく笑った。そのまま、顔を近づけてきたかと思うと、首に柔らかな感触が触れる。
「んあっ…!」
予想していなかった刺激に、思わず高い声が出て、身体がビクっと跳ねた。
皮膚の薄い首筋部分に、チュッ、チュッと何度も柔らかな唇が当てられて、そのたびに身体が跳ねて反応してしまう。
スフェンの唇が当たった部分から、じんわりと熱が発せられる。まるで、熱を首筋から植え付けられて、そこから身体に染み込んでいくような感覚だ。
……熱い。それに……。
身悶えてしまうのが恥ずかしい。
必死に耐えようと、ふるふると身体を震わせていると右の耳元にふうっと息を吹きかけられた。
「……自分から首筋を差し出すなんて……。喰われたいのか?」
いつもよりも低くて掠れた声で耳元で囁かれた。
どこか、その声音は俺を揶揄っていて、俺を虐めてくるのが分かる。
「っふぁ!……ち、が…。んっ!」
食べてほしいとか、なんのことか分からないけれど、とにかく俺は否定しようとした。でも、否定の言葉は、耳を甘噛みされたことで胡散する。
ぴちゃっ、くちゅっ、ちゅうっ。
耳の中にスフェンの舌がぬるりと入ってきて、執拗に舐められる。
耳元で卑猥な水音をわざと聞かされて、俺はさらに顔を真っ赤にした。鼓膜を湿った音が震わせて、お腹の熱を強制的に全身に巡らせようとしてくる。
頭の中に響くイヤラシイ音を意識しすぎた俺は、俺の身体を這う手の怪しい動きに気付くのが遅くなる。
黒色のTシャツの裾から、スフェンの手が入って着て脇腹をするりと撫で上げた。
スフェンが触った肌から、じんわりとした熱が伝わってくる。体温よりも少し高くて、意図的に温められているのが分かる。
この、温かいのがスフェンの魔力なのだろう。
唾液とは違って、スフェンの魔力が身体に少しづつ、ゆっくりと中に入り込んでくる。
そのゆっくりとした熱が、なんだかもどかしく感じてしまった。
自分の吐く息が、はぁ、はぁと少しずつ熱を帯びていくのを感じる。
右手はスフェンに絡めとられて、ぎゅっと握られた。その絡まった手からも温かい魔力が流れ込んでくる。もう、どこもかしこも、熱を感じておかしくなりそうだ。
「……ミカゲ、こっちを見ろ。」
どこか甘い響きのあるスフェンの声に命令されて、誘われるように俺は正面からスフェンの顔を見上げた。
金糸の髪は相変わらず綺麗だけど、その彫刻のような美貌は熱を帯びて、妖艶な大人の色気を惜しげもなく晒していた。
スフェンの色気に当てられた俺は、ぞくりとまた身体が熱で粟立つ。
エメラルドの瞳の奥に、欲情の熱が揺らめいているのが見えた気がして、その欲に濡れた瞳から逃れられない。
「ふっ、ン……。」
再び口を塞がれて、スフェンの舌が口を割り開く。
もう、俺の口腔内を散々暴いたのに、スフェンは足りないというように貪った。
舌を絡めて、擦って、時々唇で甘噛みされて、吸い上げられる。
湿った音がさらに俺の熱を昂らせた。
スフェンの唾液が甘い蜜のように、俺の身体に流れ込んでくる。体液による魔力譲渡はくらくらするように熱い。
そして、魔力が溜まる場所の腹部はスフェンの手でじんわりと熱を与えられる。そのもどかしい熱と手つきに身を捩って、ビクンっと勝手に身体が跳ねた。
絡めとられた右手からは、安心するような温かな魔力が流れて、熱で変になる身体の心細さから守ってくれる。
スフェンに翻弄された俺の身体は、素直に快感に流されようと反応してしまっていた。下半身に熱が集まって、自分自身でも兆しているのに気が付く。
俺は元々、性欲が薄いほうだったと思う。
生活することで精一杯で、あんまり自分自身でもする暇がなかったし。
この世界に来てからもそれは一緒で、ここのところは全くそういったことをしていなかった。
つまり、俺は溜まっているのだ。
こればっかりはしょうがないけど……。
恋人もいなかった俺は、友達とさえもこんな卑猥な行為をしたことはない。
人にこんなことをされている……。
それだけでも、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
自分でするのと、人にされるのとでは刺激が違い過ぎる。
そして、いつも騎士団長として勇ましく、威厳ある美貌のスフェンが、こんなはしたない行為を俺にしているのかと思うと、ほんの少し興奮してしまった。
……でも、人の前で、ましてや、
スフェンの前で醜態を晒したくない。
だめだ。このままじゃ……。
スフェンの唇が離れて隙を見て、俺は必死にスフェンに訴える。
「……スフェ…、ン…っ!…もっ!……は、なっ!……んンっ!」
切羽詰まっているはずなのに、俺の口からは自分でも驚くほど鼻にかかったような声しか出なかった。
心とは反対に、身体は快感の予感に素直に従おうとしている。
太ももが小刻みに震えて、快感の予感に抗えない。
俺を見下ろしたスフェンが、片方だけ口角を上げてニヤリと笑った。
するりと腹部を撫でていたスフェンの右手が、俺の兆していたモノを服の上からぎゅっと軽く握りこむ。
「っあ!…やぁっ……は、なっ…して…!」
エメラルドの瞳は、快感に身もだえる俺の様子をじっと見ていた。獲物をいたぶって追い詰めてくる。
大きな手に包まれた俺のモノは、ほんの少し擦られるただけで、もう限界だった。
「…ぁっ、あっ、……っンんん!!」
瞼の奥にチカっと火花が一瞬飛ぶ。身体を一度ぶるりっと震わせながら、俺は軽く達してしまった。
久々の欲情の快感に素直に身体は喜んで、ふるふると快感の震えが止まらない。
スフェンにも、達した姿を見られて恥かしくて、羞恥で居たたまれない。顔を見るのだ怖くて、思わずプイっと顔を正面から背ける。
荒い呼吸を繰り返していたが、やがて疲れて急激な眠気に襲われ始めた。
「……ミカゲ、可愛い……。ゆっくり、おやすみ。」
そう言うと、スフェンは俺の目元を手の平で覆った。爽やかな匂いを感じながら、俺はどっと疲れて眠りについた。
95
お気に入りに追加
2,726
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない
春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。
路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。
「――僕を見てほしいんです」
奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。
愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。
金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
わからないから、教えて ―恋知らずの天才魔術師は秀才教師に執着中
月灯
BL
【本編完結済・番外編更新中】魔術学院の真面目な新米教師・アーサーには秘密がある。かつての同級生、いまは天才魔術師として名を馳せるジルベルトに抱かれていることだ。
……なぜジルベルトは僕なんかを相手に?
疑問は募るが、ジルベルトに想いを寄せるアーサーは、いまの関係を失いたくないあまり踏み込めずにいた。
しかしこの頃、ジルベルトの様子がどうもおかしいようで……。
気持ちに無自覚な執着攻め×真面目片想い受け
イラストはキューさん(@kyu_manase3)に描いていただきました!

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます
野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。
得た職は冒険者ギルドの職員だった。
金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。
マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。
夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。
以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!

天涯孤独な天才科学者、憧れの異世界ゲートを開発して騎士団長に溺愛される。
竜鳴躍
BL
年下イケメン騎士団長×自力で異世界に行く系天然不遇美人天才科学者のはわはわラブ。
天涯孤独な天才科学者・須藤嵐は子どもの頃から憧れた異世界に行くため、別次元を開くゲートを開発した。
チートなし、チート級の頭脳はあり!?実は美人らしい主人公は保護した騎士団長に溺愛される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる